秋のご自愛には「辛み」がいい。いま秋分の頃に「少し辛いもの」を食べておきたい納得の理由とは
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
2026年は10月7日までが秋分です。秋分の時季は、暦の上では「秋のピーク・秋の真っ只中」となります。
中医学では秋の状態に合わせて、暑さがまだ残りながら空気の乾燥が始まる「温燥(おんそう)」と、空気の乾燥に寒さが加わり始める「涼燥(りょうそう)」の2つに分けて呼ぶことがあります。
その切り替えの目安が「秋のピーク:秋分」となるとわかりやすいのですが、毎年その切り替わりが早まったり遅くなったり。自然気候のことなので年によって前後のズレは生じますし、お住いの地域によっても温燥・涼燥の切り替わりの時は様々となります。「今年の切り替わりはどうかな」と秋を占う気持ちで季節の移り変わりに目を向けていただければと思います。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
秋の味は「辛み」。でも、控えめにしたほうがいいのです、その理由は
中医学では「秋は辛みがおススメの季節」と言われます。辛い味がいいですよ、そう言われると、不思議と「ラーメンに唐辛子を真っ赤になるまで入れている人」を想像したりします。それは…中医学の解釈からは少し外れて西洋医学的な説明で恐縮ですが、脳内β-エンドルフィンというホルモンを分泌させて気分を高めたい人のサインかもしれません。
ストレスなどで気が固まってしまった場合の「辛みで気の固まりを通す」働きとして解釈することもできますが、今回は「秋の季節の辛み」ですので、その意味ではこの働きは中医学が伝えたいこととは少し異なります。中医学が秋に「辛み」で伝えたい機能は、毛穴を開閉する働きです。
唐辛子で真っ赤になったラーメンを食べている時のことを想像いただくと「頭皮の毛穴が開いて大量の汗をかく」ことが思い浮かぶのではないでしょうか。そうなんです。辛みは「発散」する働きがあるのですが、これが毛穴に作用すると「毛穴を開く」ということになります。
暑かったり湿度が高いと毛穴が開いて汗をかきます。いっぽう、乾燥を感じたり体表温が下がったりすると毛穴を閉じて体温の流出を防ぎます。毛穴は体温の調節を行う働きをしています。毛穴のもうひとつの役割として「汗で体表を潤す」という働きがあります。寒くて乾燥していると毛穴は閉じたままになるので、皮膚の乾燥はますます進んでしまいます。皮膚と肺はどちらも「大気中の空気と触れている」という共通点があります。そのため、「潤っていると心地良い」という似た性質もあります。皮膚には毛穴がありますので、皮毛(ひもう:皮膚と髪の毛以外の体毛)という表現もされますが、肺と皮膚と毛穴は密接な関係にあるということになります。
その延長で、「肺の変調は“毛穴”にあらわれる」とも中医学は捉えています。空気が乾燥し始める秋は、潤っていることが心地よい肺の機能にとっては嫌な季節です。また、空気の冷え・乾燥は肌にとっても嫌なことで、毛穴を閉じて体温が逃げないようにしますが、その分体表は乾燥が進みます。毛穴を適度に閉じて適度に開く、それを伝えたい言葉が「秋の味は辛み。でも、控えめに。」になります。皮膚呼吸という言葉がありますが、もしかすると皮膚、毛、毛穴は肺の機能とつながっていると考える中医学がベースとなっているのかもしれませんね。
秋に摂りたい「肺に優しい」食材。「にんじん・梨・高菜のメープルからしみそ和え」
秋に摂りたい“肺の機能にうれしい食材”でおススメなのは、にんじん、梨、からし、高菜、メープルシロップ、蓮根、ちんげんさいなどが挙がります。
これらの“肺の機能にうれしい食材”を使ったおススメレシピの1つ目は「にんじん・梨・高菜のメープルからしみそ和え」です。秋におススメの味である“辛み”は控えめにと記載しましたが、からしはおでんを食べる時ぐらいしか登場シーンがない…とも思い、からしを使ったレシピを考案してみました。
作り方は、まず“高菜炒め”を作ります。お漬物として販売されている高菜漬けを水で洗い、しっかり水気をとり約1cm幅に切ります。生姜(1片)はみじん切りにします。フライパンにごま油をひいて高菜を炒め、生姜のみじん切り、酒(大さじ1)、みりん(大さじ1)、きび砂糖(大さじ1)、鶏ガラ粉末(大さじ1)、しょうゆ(小さじ1)で味付けをします。
次に“辛子和え調味料”を作ります。ボウルにからし(大さじ1)を入れて、メープルシロップ(大さじ1)で溶きます。これに、みりん(小さじ2)、しょうゆ(小さじ2)、酒(大さじ1)、鶏ガラ粉末(小さじ1)を加えて混ぜ合わせます。
にんじん(1本)は皮をむいて細切りに、梨(1/2個)は皮をむいて長さ4cm程度×5mm角の細切りにします。フライパンにごま油をひき、にんじんを炒めます。にんじんがしんなりしたら、高菜炒め(大さじ2)、梨を入れ、辛子和え調味料を加えて全体になじませたら、器に盛りつけて上から白ごまをかけたら出来上がりです。
からしは「肺を温めて、辛みで詰まりを通す」働きが期待できます。このからしを「肺と大腸に潤いを補い、双方の作用を助ける」働きが期待できるメープルシロップで溶きましたが、辛みと甘味を合わせることで苦味が感じられるようになったので、みりん・鶏ガラ粉末で味を調えました。和えたにんじんには「身体に潤いを補い、上がった気を降ろして肺の呼吸(粛降:身体の下に向けて散布する作用)を助ける」働きが期待でき、梨は「身体に水分を補い、乾燥と咳を鎮める」働き、高菜には「体表の毛穴を開き、肺の呼吸(宣発:身体の上や外に向いた作用)を助ける」働きが期待できます。高菜と人参を合せることで、肺の働き(宣発と粛降)をセットで助けることが出来ると思い組み合わせてみました。
からし蓮根に見えますが、ちょっと違うのです。「梨みその蒸しからし蓮根」
2つ目も肺の機能に嬉しいレシピとして「梨みその蒸しからし蓮根」を紹介します。熊本には郷土料理“からし蓮根”があります。蓮根の穴にからし味噌を詰めて、卵黄やウコンなどを混ぜた衣をつけて油で揚げたものです。揚げ物は胃に負担をかけてしまうことが危惧されるので、今回は“蒸し料理”で作ってみました。
作り方は、まず“梨からしみそ”を作ります。蓮根(小1個)と梨(1個)の皮をむいてすりおろし、水分を軽く絞って合せます。からし(小さじ4)に梨果汁(大さじ1)を入れて混ぜ合わせて辛みを出します。ここに鶏ガラ粉末(小さじ1.5)、きび砂糖(小さじ1)、みりん(小さじ2)、白みそ(大さじ4)、小麦粉(大さじ3)を加えてよく練ります。
次に蓮根を準備します。すりおろしたものとは別に、蓮根(小2個)の皮をむき、鍋に蓮根が浸るくらいの水とりんご酢(大さじ1)を入れて4~5分茹でます。この蓮根に“梨からしみそ”を詰めます。(梨を入れているためか少し緩いので、スプーンですくい取って蓮根の穴に少しずつ押し込んでいく感じです。)詰め終えたら、蓮根の側面に梨果汁をつけて片栗粉をまぶし、梨からしみそで蓮根のまわりも覆ってラップで包みます。(ラップに梨からしみそを蓮根の幅で塗り、蓮根を置いて海苔巻きのように巻くと上手にできます。)ラップの両端を輪ゴムでしっかりとめて約20分蒸します。輪切りにして、茹でたちんげんさいの上に並べたら出来上がりです。
蓮根は生と加熱状態では働きに変化が生じると言われますが、今回は加熱しているので「食欲を促して、肺と関係する腸のコンディションを整える」働きが期待できます。これに「肺を温めて、辛みで詰まりを通す」働きが期待できるからしと、「身体に水分を補って、乾燥と咳を鎮める」働きが期待できる梨を合せてみました。熊本の郷土料理をヒントに、“蒸し料理”としてからしと蓮根が痞えたことと、秋が旬を迎える梨を使った“梨からしみそ”で「肺・皮膚・毛・毛穴のコンディション」に働きかけられる点がポイントのおススメレシピです。
“梨”というと、料理にはせずに皮をむいてそのまま食べるという食べ方が主流ではあると思いますが、今回はあえて「食事としての料理食材」として梨を使うレシピを紹介させていただきました。
冒頭で紹介したように、中医学は秋を「温燥と涼燥」の2つに分けて特徴を把握します。温燥は夏の暑さが残っているものの空気の乾燥が始まる頃、涼燥は空気の乾燥と共に冬の寒さが近づいてくる頃。その切り替わりは「秋のピーク:秋分」と決まっているとわかりやすいのですが、その年により、またはお住いの地域により、温燥から涼燥への移行開始が前後しやすくなります。
一方、梨は水分を豊富に含む果実で、その特徴をあらわす性味(せいみ:性質と味)は「涼性(りょうせい)」で身体の余分な熱を取り去る働きを示しています。“温燥”であれば梨をそのまま食べていただくことをおススメしますが、身体から熱を取り去る涼性の摂り方は“涼燥”になる頃にはちょっと気をつけたいですね。
今回の紹介させていただいた2つのおススメレシピには、共通して「梨とからし」が登場しました。梨の涼性に対してからしは温性で、辛味もあるので“発散”する性質も優れています。梨とからしを合わせることで、「身体をあまり冷ますことなく水分を補うことができる」。そんな想いで梨とからしを組み合わせてみました。
温燥から涼燥へ移り変わるタイミングはお住いの地域によって異なります。「ちょっと涼しくなってきたな」と感じられましたら、美味しい秋の味覚である“梨”の扱い方にも変化を加えていただけると身体に嬉しい秋を維持できると思います。
熊本はさまざまな食の力を感じとる文化をはぐくみ続けたのだな、と思います
熊本にいると、食材のほかにもいくつかの食文化にめぐり合うことが出来ます。日本酒に欠かせない酵母で、酸が穏やかで華やかな香りを作ることができる酵母「きょうかい9号」は熊本県が発祥の地です。また、熊本には北部と南部で異なる食文化をたどってきた名残があります。熊本県北部地域は細川藩の影響で日本酒の蔵元が多く、南部地域は海外交易を盛んに行っていた相良一族に伴う影響で焼酎文化が根付いています。それと、熊本には味噌天神という愛称で呼ばれる、日本で唯一の味噌の神の神社があります。このように、食と密接に神の力を感じ取る文化だったのだと思います。
写真は真西の方角に沈む太陽です。秋分は太陽が真西に落ちていきます。再春館ヒルトップではちょうど大木の向こう側に夕陽が見える頃で、業務終了後の帰宅の途につく18時過ぎにこのような夕陽に出会うことが出来ます。秋分の夕陽を見るのは今年で20回目になります。来年も健やかに21回目を見たいと思います。
じわじわと人気…「田野岡メソッド」は書籍でもご覧いただけます!

「身近にある旬の食べ物が、いちばんのご自愛です!」 田野岡メソッド連載で繰り返し語られるこのメッセージが、1冊の書籍にまとまりました。近所のスーパーで手に入る身近な食材を使い、更年期をはじめとする女性の不調を軽減する「薬膳」を日常化しませんか?
日本の漢方では「その症状に処方する漢方薬」が機械的に決められていますが、本来の中医学では症状と原因は人それぞれと捉えます。それに合わせた効果的な食事を「薬膳」とし、食で養生するのが基本なのです。
田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!
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