どんより、停滞気味の人、その理由は…【7月のタロット】のメッセージ

【さなぎ】熟成の必要

 

小学校のころ蚕(かいこ)を飼育したことがある。

 

乳白色をしたすべすべのイモムシは

見た目がおぞましい毛虫と違って

言いようのない愛情が湧いた。

 

お菓子の空箱に桑の葉と一緒に10匹ほど入れて持ち歩き

おかいこさん、と呼びかけ

たびたび取り出しては

代わる代わるに頬ずりした。

 

それが何のために育てられて

どう変容していくのかもよく知らないままに。

 

おかいこさんとの蜜月が終わる日は突然やってきた。

箱のふたを開けたら

10匹全部が繭になりかけていたのだった。

 

完成した繭は美しかったが

頬にすべすべと心地よかったあれとは別の代物で

もう私の手のひらの上を動きもしない。

 

さらに絹糸を取るためにその繭を「煮る」

そう聞いて卒倒しそうになった。

 

”人間の都合”ということを考えたあれが最初で

「さなぎ」と聞くとよみがえる記憶だ。

 

女性ボーカリストKちゃん(25歳)は

焦ってネガティブ思考に引っぱられてしまうときに

なぜか『さなぎ』のカードを引くという。

 

< 一見静かな硬い繭の中 必要な変化が

相応のスピードで進んでいることを想像する(本編解説文) >

と落ち着きを取り戻すそうだ。

 

私たちは人間だから

“人間の都合”で夢を見るのはしかたがないとしても

じっくり志を練り技術を磨く時間を持つことで

夢の本体は深く確かに熟成していくことだろう。

 

その先は必ず

相互理解や地球への愛と

地続きである。

 

 

覚 和歌子

©FUKAHORI mizuho

詩人・作詞家

山梨県生れ/千葉県育ち。早大一文卒。平原綾香、smap、新垣勉、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズなどの作詞で、多くの作品をCD化。NHK全国学校音楽コンクール課題曲、校歌、合唱組曲等の作詞なども多く手がける。01年『千と千尋の神隠し』主題歌『いつも何度でも(曲・歌唱/木村弓)』の作詞でレコード大賞金賞。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『はじまりはひとつのことば』(港の人)、『2馬力』(ナナロク社)など。エッセイ、絵本、翻訳など著作多数。映画監督、脚本、舞台演出、朗読、自らのバンドを率いてのソロライブ、米国ミドルベリー大学日本語学特別講師など。詩作を軸足にマルチな活動を展開。

 

***

 

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