矢野未希子、「VERY」新カバーガールは時代を変えるのか?
条件より、幸福感の時代?
カバーガール級のモデルは離婚すると、そっと「STORY」(光文社)に“転校”しますが、多くのモデルは「離婚したなら、即出て行ってもらいますから」という退学処分にはなっていない。
それは、離婚件数が増えて「離婚が悪」というイメージが薄れてきたことに加え、読者もうすうす気づいてきていると思うのです、条件が完璧な幸福をもたらすわけではないことを。
もちろん条件は大事ですが、加えて幸福感がほしいと思っているのではないでしょうか。
アラフォーが20代だった頃は、バブルの名残もあって、「幸福イコール条件」と考える人も多かったと思います。どこそこのバッグを持っているから幸せとか、彼氏がどこそこに勤めているから、私のほうが上とか。
「幸福イコール条件」という考え方は、幸福かどうか他人に証明できなければいけませんでした。
超のつく努力家で運にも恵まれた人は、どんどん幸福と呼ばれる条件を手に入れることができるでしょう。しかし、そこで気づくと思うのです、人より多く持っている人ほど、たやすく口にできないことに。
自分より“下”の人に言えば、そんなつもりがなくても自慢だと思われて反感を買うかもしれませんし、自分と同じくらいの人に言うことは、「自分の手の内を明かす」ことと一緒ですから、何かの折に出し抜かれるかもしれません。自分より“上”の人に言えば、鼻で笑われるでしょう。
しかし、幸福感に証明書はいりません。自分さえ「幸せだ、楽しい」と思ってしまえば、それでOK。むしろ「昨日、夫とお茶漬け食べた」程度の、特にオチのないことのほうが好ましいのです。なぜなら、相手の嫉妬心をあおることがないので、相手も気楽に「いいね」と言えるから。その分、多くの人の支持を集めることができるでしょう。
SNSの出現で、私たちは多弁になり、自分のことを話したい欲求に一日中さいなまれています。語れない条件的な幸福よりも、語れる幸福感を選ぶ人のほうが多いのではないでしょうか。
往年の「VERY」ファンには、もしかして今のところ子どものいない女性がカバーガールというのは、納得いかないかもしれません。しかし、手のかかる子どもがいないからこそ、夫婦として慈しみあう日常を見せられる、つまり「VERY」初の幸福感を醸し出すカバーガールになるかもしれません。
女性誌は、独身VS既婚というふうに、対立をあおることがありました。そちらのほうが雑誌が作りやすかったことは確かでしょう。しかし、今はそういう四角四面なくくり方や分断をよしとしない時代です。女性誌が女性のメンタリティーに与える影響はすごいと思う私にとって、今回の決断は時代を変えるやもしれぬと思うのでした。
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