母を介護ホームに送った友人の「申し訳なさ」の正体とは

【神殿】そこにいるだけで

「大好きな母のために

私は何をしてあげられるんだろうと考えるんだけど

介護ホームはとても丁寧なお世話をしてくれるところだから

私は通ってあげて話し相手になるくらいしかできないのよね。」

とNさんが言った。

 

行き届いたケアをしてもらえるように取り計らって

始終通って話し相手になれば十分親孝行じゃないか と

私などは思うのだが

Nさんは、それでは気が済まないらしい。

 

「ほんとはホームに入れたりしないで

私がきちんと面倒を見たかったの。

でも仕事を持ってるから無理。

それが母に申し訳なくて。」

 

真面目で責任感の強いNさんのような人が

自分を追い詰めてしまうのだろう。

 

「自分が不甲斐なくて」と言いつつ

Nさんが引いたカードは「神殿」だった。

 

<あなたのいる場所は

気持ちの持ちかた次第で

その質が決まります。

いつでもどこでも

安らかな神殿を現出できる自分を

信じてください>

 

そんなメッセージを

何度もかみしめるように読みかえしていたNさんは

最後に涙ぐんでこう言った。

 

「申し訳ないって思ってたら

その気持ちの方が伝わっちゃうよね。

大好きっていうあったかい気持ちで

お母さんと一緒にいればいいんだよね。」

 

Nさんがそばにゆったりといることで

お母さんが静かに幸福でありますように。

 

お母さんに残された日々が

とびきりの聖なる時間でありますように。

 

 

覚 和歌子

©FUKAHORI mizuho

詩人・作詞家

山梨県生れ/千葉県育ち。早大一文卒。平原綾香、smap、新垣勉、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズなどの作詞で、多くの作品をCD化。NHK全国学校音楽コンクール課題曲、校歌、合唱組曲等の作詞なども多く手がける。01年『千と千尋の神隠し』主題歌『いつも何度でも(曲・歌唱/木村弓)』の作詞でレコード大賞金賞。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『はじまりはひとつのことば』(港の人)、『2馬力』(ナナロク社)など。エッセイ、絵本、翻訳など著作多数。映画監督、脚本、舞台演出、朗読、自らのバンドを率いてのソロライブ、米国ミドルベリー大学日本語学特別講師など。詩作を軸足にマルチな活動を展開。

 

***

 

ポエタロ」とは?

「ポエムタロットカード」を縮めた名前、『ポエタロ』。

47枚のカードにはそれぞれ、美しくやわらかい日本語の詩と、

かわいらしくも不思議な魅力のあるイラストが描かれています。

使い方はいたって簡単。シャッフルしたカードの中から、

その時の直感で1枚、あなた自身のためにカードを引いてみてください。

1日のはじまりにその日の指針を得てもいいし、なにか大きなチャレンジの前、

なかなか超えられない壁に直面しているときに。

そのときの気持ちや環境にリンクした、やさしい詩とメッセージが、

次の1歩を踏み出す勇気や確信を与えてくれる不思議なカードです。

あなたの心強い味方になってくれるはず

『ポエタロ いのちの車輪をまわす言葉』

覚 和歌子・著 石川 勇一(相模女子大教授)・監修 大野 舞(Denali)・画 カード47枚 ガイドブック付き 3,780円(税込)/地湧社

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