いつか来る「終わり」に向けて…【11月後半のタロット】より
【棺】蓋をあけたら歌が聞こえる
最近目に見えて衰えてきている母である。
若い頃から負けず嫌いで我が強かったが、情も深かった。
こうじて一人っ子の私に対して
”娘のためを思うあまり”の干渉があまりに過ぎたものだから
私がいい大人になっても軋轢は飽かず続いていた。
母と戦いながら学んだのは
誰にも『業』はあるが、本人と『業』とを分けてしまえば
それを客観視できるということだった。
「いま母は私にひどいことを言っているが
それは母自身が言っているのではなく
母の『業』が言わせているのだ」
というふうに。
そして、ひとはみな死を免れない。
『業』と『本人』の区別がつかないならつかないままの肉体も
死んで棺に横たわれば、さっぱり焼かれて骨になる。
葛藤も悶着も思う存分に味わい切って全うできたなら
それはそれで充ち足りて生きた一生と言えるではないか。
友人は、焼かれて出てきた祖父の棺の蓋を開けたら
どこからともなくベートーベンの「歓喜の歌」が
聞こえてきた、と言う。
母が寿命を全うしたそのとき
母の骨からも生命賛歌が聴こえてくるような
そんな余生であってほしいと願わずにはいられない。
覚 和歌子
詩人・作詞家
山梨県生れ/千葉県育ち。早大一文卒。平原綾香、smap、新垣勉、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズなどの作詞で、多くの作品をCD化。NHK全国学校音楽コンクール課題曲、校歌、合唱組曲等の作詞なども多く手がける。01年『千と千尋の神隠し』主題歌『いつも何度でも(曲・歌唱/木村弓)』の作詞でレコード大賞金賞。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『はじまりはひとつのことば』(港の人)、『2馬力』(ナナロク社)など。エッセイ、絵本、翻訳など著作多数。映画監督、脚本、舞台演出、朗読、自らのバンドを率いてのソロライブ、米国ミドルベリー大学日本語学特別講師など。詩作を軸足にマルチな活動を展開。
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「ポエタロ」とは?
「ポエムタロットカード」を縮めた名前、『ポエタロ』。
47枚のカードにはそれぞれ、美しくやわらかい日本語の詩と、
かわいらしくも不思議な魅力のあるイラストが描かれています。
使い方はいたって簡単。シャッフルしたカードの中から、
その時の直感で1枚、あなた自身のためにカードを引いてみてください。
1日のはじまりにその日の指針を得てもいいし、なにか大きなチャレンジの前、
なかなか超えられない壁に直面しているときに。
そのときの気持ちや環境にリンクした、やさしい詩とメッセージが、
次の1歩を踏み出す勇気や確信を与えてくれる不思議なカードです。
あなたの心強い味方になってくれるはず。
『ポエタロ いのちの車輪をまわす言葉』
覚 和歌子・著 石川 勇一(相模女子大教授)・監修 大野 舞(Denali)・画 カード47枚 ガイドブック付き 3,780円(税込)/地湧社
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