「コロナ金欠」での保険解約は大損!知っておきたい3つの仕組み
自粛の緩和で少しずつ日常を取り戻していけそうですが、フリーランスや派遣など仕事自体が大幅に減っている人にとっては、収入はすぐには戻りません。
すると、支出を減らすためにまず削りがちなのが生命保険です。
しかし保険は、一度解約すると健康状態によっては新たに加入できなくなることも。今回はコロナ金欠で襲った幸子さんのWの悲劇の事例から「保険を失効させない方法」を紹介していきます。
■金欠で保険不払い失効のまま、新型コロナに感染した幸子さん
幸子さんはインバウンド向け旅行会社勤務の42歳独身。新型コロナの影響が強い業界なので覚悟はしていたもの、職場が倒産し、2月末に職を失いました。
この職場は新しくできた会社で、昨年ヘッドハンティングされたため、勤務歴は1年未満。会社都合でしたが失業保険は90日分しか出ませんでした。手続きはしたものの、もらえるのは約45万円。
大学卒業して以来ずっと旅行業界勤務だった幸子さん。別の分野も視野に求職活動をしていましたが、なかなかすぐに仕事は見つかりまりません。
貯金は100万円弱でこころもとなく、まずは支出を見直すことにしました。
2月3月2カ月残高不足で口座引き落としができず、日額5000円の医療保険は3月末に失効したまま。500万円の終身保険も失効しましたが、こちらは解約すると120万円の解約金がでるとのことで解約しました。
不安なまま自粛生活で外出せず、ネットで仕事を探す日々。そんななか、4月中旬幸子さんは熱を出してしまいました。
ストレスや疲れのせいと思っていましたが、数日後念のため病院に行くと新型コロナの陽性結果。すでに症状は収まっていたため、ホテルに2週間待機することになってしまいました。
病院費用・ホテル滞在費用はほとんどかからなかったものの、医療保険なし状態の幸子さん。どうすればよかったのでしょうか?
(※プライバシーを守るため、実例をもとに細部を変更しています)
■ホテル滞在でも医療保険はもらえた!?
今回の新型コロナは、今までに経験したことのない状況。保険会社も顧客を守るため様々な対応をしています。
医療保険は、病院に入院した日数分または手術した場合などに給付される保険です。
今回、新型コロナの特別対応では、病院のベッド数が不足している等の事情により、指示されたホテルや自宅で待機をせざるを得ない場合も、入院したとみなして保険金が出る対応になっています。
ただし、自己判断では対象にならず、医師の診断書が必要です。保険会社により取り扱いには異なることがあるため、ご自身のケースは各保険会社にお問い合わせください。
幸子さんの場合、生活費の不安から保険を失効させたままにしましたが、2月・3月と2カ月続けて銀行引き落としができなくても、まとめて3月末までに2カ月分の保険料を支払えば保険は継続することができました。
4月以降でも2月からの保険料をまとめて支払いし、あらためて現在の健康状態を申告する復活手続きをすれば(健康状態により復活不可の場合もアリ)、保険を継続できたのです。
2週間ホテルで待機だったので、保険が効いていれば日額5000円×14日分=7万円保険金を受け取ることができました。
また、保険料の支払いがどうしても厳しい場合、コロナウイルスの特別な措置として、払い込み猶予期間を最長6カ月間、2020年9月末まで延長している保険会社も多いようです。ほったらかしにせず、支払いが難しければ保険会社に相談しておけば何らかの対応をしてもらえた可能性があります。
■終身保険は保険料の支払いをやめても続けられる!?
幸子さんは、貯金が少しあったので当面のお金が必要なわけではありませんでしたが、保険料を支払えないなら解約するしかないかなと判断し終身保険を解約しました。しかし、解約金のある保険の場合、保険を解約せずに保険を残す方法が他にもいくつかあったのです。
①払済保険
保険料の払い込みは今後しない。今ある解約金を使い一生涯の死亡保障に変更するのが「払済」です。保険会社の基準によりますが、幸子さんのケースでは、解約すると120万円手元に戻ってきました。これを払済保険にすると、150万円の一生涯の死亡保障保険にすることができました。こうすれば、今後の保険料の支払いはしなくても、死亡保障をキープできたのです。
②延長保険
保険料の払い込みは今後しない。今ある解約金を使い、保障額は今と同じ額を確保して、用意できる期間分まで保険を続けるのが「延長」です。保険会社の基準によりますが、幸子さんのケースの場合、死亡保障500万円を15年間確保することができたのです。(解約金はなくなります)
③保険料自動振替貸付制度
解約金のある保険であれば、自分の保険の解約金を引き落としできなかった保険料として自動的に振替貸付して保険が失効にならないようにする仕組みもあります。契約時にこの制度を適用するかどうか選択するケースや自動付帯されているケースもあるため、自分の保険が解約金のある保険の場合再確認しておくとよいでしょう。
このように、保険料の支払いをストップしても保障を残す方法がいくつかあるのです。
■自分だけで抱え込まないで、まずは保険会社に相談してみて
幸子さんは、保険は保険料が支払えなければ解約するしかないと思っていたばかりに、もらえるはずの医療保険7万円をもらいそびれ、やめなくてもよかった終身保険も失うというWの悲劇に見舞われました。
金欠になってまず削りたくなる保険は、自分を守るための大切なものです。保険で困ったことがあれば自分だけで悩まず、解約したり失効してしまう前にまずは保険会社や代理店に相談してみましょう。
稲村優貴子
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)、心理カウンセラー、ジュニア野菜ソムリエ
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆活動を行っている。日経ウーマン、北海道新聞などへの記事提供、テレビへの取材協力など各メディアでも活躍中。著書『年収の2割が勝手に貯まる家計整え術』河出書房新社。趣味は、旅行・ホットヨガ・食べ歩き・お得情報収集。FP Cafe登録パートナー。
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