派遣シングルマザー「コロナであっという間に路頭に迷いかけ」その顛末とは
新型コロナは収束する気配がなく、私たちが日常を取り戻す日はまだまだ先になりそうです。
コロナの影響を受けない業種の正社員、あるいは公務員であれば、収入に変化はありません。
しかし、仕事の有無がダイレクトに収入に反映されてしまうのが派遣社員です。
「ハケンの品格」大前春子のようなスーパー派遣は現実にはいませんので、派遣で働く人はコロナの影響が大きかったようです。
4月にご相談があったシングルマザーのマキさんもその一人。今後の生活不安でFP相談に来られました。
※個人を特定できないよう内容は少しアレンジしています。
出勤日が半分になり、収入が9万円減。夫は養育費未払い
マキさんは42歳のシングルマザー。中学1年生の娘、カナさんと、地方の県庁所在地で二人暮らしです。
短大を卒業後、大手企業に勤務し、同期で2歳年上の彼と26歳で結婚しました。
当時は、社内恋愛なら女性が家庭に入るという雰囲気。働き続けたかったけれど、退職して専業主婦になりました。
29歳で出産したものの、娘のカナさんが幼稚園年長のとき、36歳で、夫の浮気を原因に離婚。
以来、派遣社員として働きながら子育てをしています。
なお、私の記事『ZOZO前澤の新会社に見る「養育費未払い」のあまりに過酷な現実とは』(リンク)でも未払い問題に触れましたが、この夫もまた養育費未払いです。
マキさんの相談内容は以下の通り。
「コロナで3月以降派遣先の仕事が減ってしまい、コロナ対策として出勤日が半分に。
収入が9万円も減ってしまった。
貯金を取り崩してなんとか過ごしているが、これからどうなるのかとにかく不安。
養育費は1年くらいしか払ってもらっていない。どうしたらよいか?」(20年4月下旬)
月収:手取り23.3万円
派遣給料18万円 + 児童扶養手当4.3万円 + 児童手当1万円
・コロナで出勤日が半減し、3月から14.3万円に。
・養育費 なし。離婚時、月3万円カナさんが20歳までと公正証書作成済み。
現場のFPの実感、「離婚した女性はイキイキしている」
(離婚のことなので神妙な面持ちで)
FP:「娘さんが小学校1年生になるころからおひとりで育ててこられたんですね」
マキさん:「あー、もっと早く離婚すればよかったなって思ってます」
FP:「そうだったんですね」(え?あっけらかんとしてるなぁ)
マキさん:「妊娠したころから何かおかしいなって。会社の元同僚にそれとなく聞いたら後輩の女のコとデキてるって。一度は別れるって言ってくれたのに、ずっと続いてて。問い詰めたら逆ギレですよ。東出のニュース見た時私と同じだって思いましたもん。ハハハっ」
17年FP相談を受けて感じるのは、離婚する前に女性はかなり悩み苦しむけれど、離婚してからイキイキしている人が多いということです。
マキさんもそうでした。
子どものために離婚はしないほうがいい、自分が選んだ相手なのだからと我慢していたとのこと。
いろんな女とのただの遊びだったら目をつぶれたけど、何年も別れないのは本気だと悟ったそうです。
離婚して1年後、後輩と結婚したらしく、そのあたりから養育費の振込はなくなったそうです。
お金がすべてじゃないけれど…「お金がないと笑顔でいられない」
マキさん:「正社員じゃないとこういうときに違うんですね」
会社の業績が悪くなると人件費節約ならまず派遣から切られます。マキさんの派遣先はまだ勤務日数を減らすだけでしたが、仕事自体打ち切りになるケースも多いのです。
マキさん:「娘と二人慎ましく笑い合ってこられたけど、収入が減ると不安で不機嫌になってしまって。娘も学校に行けずイライラして、私はご飯支度ばかりで疲れるし。母娘喧嘩ばかりでした」
ただでさえ、コロナの不安から精神的に参ってしまうのに、収入が減ると不安で仕方がなかったことでしょう。離婚したことで親に心配をかけているため、今回はプロのFPに相談してみようと思ったそうです。
FPとして伝えた「マキさんの素晴らしいところ」とは
FP:「マキさんは、将来設計をしっかりされていますね。しっかり目的別に貯金しているところから伝わってきました」
①子ども用貯金
「生まれてからずっと児童手当はすべて貯金。親からもらったおこづかいも貯めている。毎月4000円ずつの貯金は、免除してもらっている給食費を払っているつもりで貯めている」とのこと。
お金の仕分けができています。免除してもらっている事柄をただのラッキーではなく、支払っている「つもり貯金」をしっかりしています。
②食費3万5000円
これは努力の賜物。女性二人とはいえ、1ヶ月この金額でやりくりするのは相当難しい。食材を効率よく使い自炊でお弁当持参などがんばっていることの証です。
(支出内訳)
支出:23.3万円
家賃 6.5万円(自宅ネットWi-Fi込み)
食費:3.5万円
水道光熱費:1.7万円
スマホ代:1.6万円(2台分)
雑費:1万円
外食・レジャー・理美容費:2万円
交通費:1万円
生命保険:2万円(学資保険1万円、医療保険60歳払6500円、収入保障保険3500円)
教育費:1万円(塾代。給食費は就学援助制度により免除)
交際費:1万円
貯金:2万円(子ども用4000円、自分用16000円)
貯金残高 320万円(子ども用200万円、自分用120万円)
さらに、ここが工夫できる。FPからのアドバイスは
ずっと安定して派遣のお仕事があったのは、マキさんが優秀な人材だからですね。
今回のコロナの影響は、思いがけない出来事です。この機会に今の生活を少し見直してみましょう。
①スマホ代…格安スマホにする。(△1万円) 1.6万円→0.6万円
②生命保険…医療保険を終身払いに。(△3700円)6500円→2800円
③生命保険…収入保障保険を新しいものに。(△500円) 3500円→3000円
④外食・レジャー・理美容費…控える。(△1万2000円) 2万円→8000円)
この4つの見直しで支出を2万6200円カットできそうです。
貯金の取り崩し額が減ると気持ちも楽になると思います。
子どもの権利「養育費の請求」はプロに任せる手もある
支出の見直しとはまた別に、元夫の養育費不払いはそれそのものが大きな問題です。
新しい家庭を築いているからといって養育費を払わなくていいわけではありません。元夫に養育費を払ってもらうよう一度連絡をとってみましょう。養育費は子どもの権利。カナちゃんの大切な権利です。
離婚して6年で、養育費をもらったのが1年ほどだと、
もらっていない期間5年(60ヶ月)× 毎月の養育費3万円 = 180万円
このように、払ってもらっていない養育費は長期にわたると大きな金額になるのです。
もし、自分で連絡をとるのがどうしてもイヤということでしたら、ZOZO前澤さんが立ち上げた「小さな一歩」という、養育費を払う手続きを代行してくれる会社に連絡してはどうでしょう。その方法を私の過去記事に書きましたので、ご覧くださいね。
>>>ZOZO前澤の新会社に見る「養育費未払い」のあまりに過酷な現実とは (リンク)
無事、6月以降は給与も戻った。このチャンスに生活を見直して
5月に入ってから徐々に仕事が増え、6月にはもとの収入に戻ったマキさん。コロナをきっかけに支出を毎月2万円カットできたので、毎月貯金だけでなくつみたてNISAで投資も始めました。現在は派遣として働きながら正社員としての道を模索中です。
お金が幸せのすべてではありませんが、生活をしていくうえで必ず必要なものです。
コロナによって、ライフスタイルも変わりつつあります。この機会に生き方・働き方をあらためて考えてみませんか?
稲村優貴子
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)、心理カウンセラー、ジュニア野菜ソムリエ
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆活動を行っている。日経ウーマン、北海道新聞などへの記事提供、テレビへの取材協力など各メディアでも活躍中。著書『年収の2割が勝手に貯まる家計整え術』河出書房新社。趣味は、旅行・ホットヨガ・食べ歩き・お得情報収集。FP Cafe登録パートナー。
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