私が見た「食品添加物」の裏側、驚くべき製造現場の事実
「添加物は、コストをかけずに目指す味に近づけるため、おいしそうな見た目にするため、賞味期限をのばすためなどに使われます。決して体が必要としているから使うのではなく、企業が利益を出すために使われているのです」、そう述べるのは美食のセレクトショップ「グランドフードホール(通称グラホ)」を立ち上げた岩城紀子さん(48歳)。2回目では、その影響を解説します。
ヘルスコンシャスな人が実践する賢い買い方#2
『裏を見て「おいしい」を買う習慣』岩城紀子・著 1,500円+税/主婦の友社
原因不明の体調不良、まず食べ物を変えてみて
ポテチやコーラやハンバーガーの魅力に抗えるわけはなく、中学時代は公園で友達と隠れて食べていた、と書きましたが、さらに高校・大学はアメリカに留学したのでファストフード三昧でした。帰国してからも仕事が忙しく、コンビニ弁当も日常茶飯事で、気がつくと体調は常にすぐれず、肌荒れ、便秘、頭痛、肩こりは慢性的なお友達になっていました。
もし、あなたが年中、原因不明の体調不良に悩んでいたら、食べ物を変えてみてほしいのです。というのは、私は仕事柄、毎日のようにたくさんの食品を試食しますが、それは、ていねいに作られたものばかりではありません。例えば、駅弁のように流通の関係からどうしても添加物を使わざるを得ないものを一日に何十種類も試食することもあります。そんなときは、必ずあとで頭痛や肩こり、口の中のねばつきや乾き、腹痛、肌荒れ、体のだるさなどの不調となって現れます。
私はその因果関係がわかっていますが、体調不良が食べ物のせいと気づかなければ、体がだるいから料理するのが面倒で、つい出来合いのものやインスタント食品を買って食べ、さらに体調が悪くなるという悪循環を繰り返している人もいると思います。
新入社員で体臭のキツい人がいました。本人も気にしていたので、「食べ物を変えてみたら?」とアドバイスをしました。添加物の多い食品を控え、ちゃんと発酵した調味料を使い、納豆や漬物など日本人がずっと食べてきた伝統の食事を毎日続けてもらったところ、1週間も経たないうちに体臭が消えました。代謝がよくなったんだと思います。
でも、彼は体の変化もさることながら精神面での変化のほうが大きかったというのです。気持ちが落ち込んだりハイになったり、メンタルが安定しなかったのに、それがなくなって前向きになったというのです。私は「そうだろうな」と思いました。
機能性食品開発のバイオベンチャー企業にいたとき、マウスに添加物を与える実験をしている研究所に行ったことがあります。そこで教えてもらったのですが、添加物を与えられたマウスは皮膚が乾燥し、毛が抜けます。徐々にキレやすくなり、自虐行為に出ることもあるそうです。でも、添加物をやめると、また穏やかになるのだとか。心が不安定な時こそ「いいもの」「おいしいもの」を食べたほうがいいということです。
メーカーの人も添加物の弊害は知っている
前職ではこんな衝撃体験もありました。食肉加工メーカーの工場長さんから打ち明けられたのですが、「ここだけの話、妻にはうちの商品は絶対に買うなと言っているんです」。「えっ?」と一瞬、意味がわかりませんでした。「買え」ではなくて「買うな」? しかも「絶対に」?
理由を聞くと、腐敗を防ぐための保存料をはじめ、恐ろしいほどの食品添加物を使っているからだというのです。原材料を知れば知るほど、「こんなものを子どもには絶対に食べさせたくない」と思うというのです。それはこのメーカーに限ったことではありませんでした。お菓子やパンのメーカー、いろんな会社の社員の方に「ふだん、自社のものを食べますか?」と聞くと「いやいや、ふだんは絶対に食べませんよ、こんなものは」と言うのです。もちろん全部が全部ではありませんが、「自社製品を食べたくない」という人が意外なほど多かったのにはショックを受けました。メーカー側も知っているのです、添加物が体に良くないことを。
一方で、その頃、仕事でご一緒した料理研究家の白井操先生の料理はシンプルで体と心にしみるようなおいしさでした。おばあちゃんの味と重なりました。白井先生の料理を食べさせていただく日が続くと体が軽くなり、頭がすっきりしてきます。そして味覚が鋭敏になるのです。そのとき、自分がやりたいのは、安心して食べられて、食べれば食べるほど体が元気になって、作っている人も売る人も食べる人も誰もが幸せになれるものを売ることだと確信したのです。私は機能性食品開発のバイオベンチャー企業をやめ、食品のバイヤー代行の会社を立ち上げることにしたのです。
いい調味料を使えば料理は確実においしくなる
私は、料理が苦手と言う人がいると「調味料を変えてみて」とアドバイスします。いい調味料を使えば、料理は確実においしくなります。家族から「料理上手くなったんじゃない?」と言われること請け合いです。
味噌の主な原料は「大豆」と誰もが知っています。本来は「大豆、米または麦、食塩」だけで造られるものです。ですが、だし入り味噌などには化学調味料が添加されています。見た目を鮮やかにするためにビタミンB₂が添加されたり、容器の膨張を防ぐために酒精やアルコールが添加されているものもあります。添加物で麹菌を不活性化し、容器の膨張や色の変化を防ぐのです。消費者が、それらの変化は麹菌が生きている証拠だと知っていればクレームも発生せず、メーカーも添加物を入れずにすむのですが、メーカーはお客様からのクレームが怖いのです。私たちが正しい知識を持つことが必要ですね。
流通の問題もあります。大量に工場で作って全国に配送する食品は、ある程度の保存期間が必要です。品質が変わらず、腐らないようにするには食品添加物は必須です。多く入れればその分、長く保存できるし、価格も低く抑えられます。
値段の高いものや日持ちのしないもの、色の悪いものを消費者が買わなければ、メーカーは添加物を使ってでも買ってもらえるものを作ります。スーパーが賞味期間の短いものを置いてくれなければ、メーカーは保存料を使います。
消費者が買いたいもの、流通が求めるものをメーカーは作る。当たり前のことですね。
でも、そうやって添加物だらけで不思議な味になってしまった調味料は料理をおいしくはしてくれません。一方、本物の調味料は素材のおいしさをより引き立ててくれます。
天然醸造のしょうゆや味噌、天日干しの塩はちょっと使うだけで料理の味がグレードアップします。古式製法の本みりんはそれ自体がおいしいリキュールのよう。原材料が米だけの長時間かけて発酵した純米酢はまろやかで深みのある味わいで健康にもいいはずです。
原材料は裏のラベルに書かれています。どんな添加物が入っているかも裏のラベルに書いてあります。食品を選ぶときは、必ず裏を見るようにしてほしいのです。
料理上手だった私のおばあちゃんも当然、調味料にはこだわっていました。テレビや雑誌などで情報を収集して、おいしいと言われる味噌やしょうゆ、みりん、酒などをよく全国から取り寄せていました。今のように個人がお取り寄せする時代ではないので、届くときはしょうゆ1ダース、味噌10キロなどと大量に届き、親戚や友人にも配っていたのを覚えています。たまにハズレがあると「これは味噌汁には使えん。味噌漬け用や」などと味のレベルに合わせて使い分けることも教わりました。
バイヤー代行業を始めるとき、おばあちゃんが使っていた調味料を扱いたいと思って調べましたが、半数も残っていませんでした。残っていても添加物を使ったまるで違う味のものになっていたり。メーカーそのものが廃業してしまったところもひとつやふたつではありませんでした。
※商品はグランドフードホール芦屋店・六本木店で扱っています。
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