山内惠介、初めて聞いて「思わず涙がこみ上げた」話とは

山内惠介さんが歌手を目指すきっかけとなった美空ひばりさん。そのひばりさんの大親友が女優の中村メイコさん。芸歴84年を誇る大女優と天才歌手の友情とはどのようなものだったのか。初めて聞く逸話に山内さん、思わず涙がこみ上げました。

私、ひばりさんの
「自由の女神」だったの（中村）

山内：僕は美空ひばりさんに憧れて演歌歌手になったのですが、そのひばりさんの大親友でいらしたのが中村メイコさんですよね。ひばりさんの足跡をたどるドキュメンタリー番組などでは、メイコさんがいつもその思い出を話してくださって……。お二人の「天才」のお話は本当に興味深くて、いつかメイコさんにお会いできる機会があったらいいなとずっと願っていたんです。

中村：光栄でございます。ひばりさんがね、今ここにいたら、「それじゃあさぁ、３人で飲みに行こうよ」って言ったはずよ。

山内：うわぁ、いいですね。僕、ひばりさんに気に入っていただけたでしょうかね（笑）。

中村：うん、きっと。そういう人なの、あの人は。最初に会ったのが、私が17ぐらいだったかな、彼女が２歳半下で、出演中の舞台の楽屋で対談したのね。タイトルが「本音でトーク」だったから、私が「ね、ひばりちゃん、私たちだって遊びたい盛りだから、普通の女の子みたいに自由に銀座ぐらい歩きたいわね」って言ったの。そうしたら「私はそうは思わないわ。ママに聞いたんだけど、私たちは夢を売る商売だから、普通の方から見て『あんなことしてほしくない』と思うことは我慢しなくちゃね」って。私びっくりしちゃって（笑）。だから「あなた本当にそう思って、それで納得できるの？」って言ったら「ここは活字にしないで。できないこともあるけどね」って。だから二人でできないことをしようと、随分、お忍びをしましたよ。飲みに行ったりね（笑）。

山内：ひばりさんの映画にもお酒をたしなまれる場面がありましたね。メイコさんが帰られるときは、ひばりさん寂しそうな表情をされて。

撮影／園田昭彦

自分はつくづく凡人。
でも歌が好きな気持ちだけは
誰にも負けないです（山内）

中村：いつまでも一緒にいたかったからね。新婚時代にうちに「泊まっていく」って寄ったことがあったの。「ソファに寝るところを作ろうか」って言うと、「いや、私はあんたたちと寝る」って言うじゃない（笑）。神津さん、びっくりしちゃって。だからダブルベッドに夫が寝て隣に私が寝て、その隣に「あなたここよ」って言ったら、「美空ひばりはセンターです」って言って真ん中に寝たのよ！（笑）

山内：それ、本気でおっしゃっているんですよね。ウケを狙っているとかじゃなくて。だとしたら止められないですよね（笑）。

中村：そうなの。神津さんなんて「あんなに緊張して肩が凝った睡眠はない」って（笑）。とにかく「メイコのところへ行く」と言うと、ひばりさんのママも彼女を出してくれたから、私、ひばりさんに「自由の女神」って呼ばれてたの（笑）。

山内：ご自分の性格を一言でどう表されますか。

中村：よく言えば潔い。絶対にないものねだりをしない。後追いしない。このまんまでいい、周りにあるもので事足りて幸せになろうっていう性格ですね。

山内：誰かのものを羨ましがってということではなく、自分の周りにあるものでということですね。この仕事が長くなるほど、周りの才能に圧倒されて、今度生まれ変わるときは天才に生まれたいなって思うんですよ。自分はつくづく凡人だなと。ただ、歌が好きな気持ちだけは人には負けない。歌手になれて、チャンスにも恵まれている。そう考えると、もう少し歌っていけるのかなと思うんです。

中村：歌っててくださいよ、ずっとずっと、ひばりさんの分まで。

気になる「山内惠介の会いたい人」対談の全編は発売中の『ゆうゆう』2021年1月号（こちら）に掲載されております。「山内惠介の会いたい人」は、2020年9月号より連載中です。是非チェックしてみて下さい！

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【プロフィール】

なかむら・めいこ●1934年東京生まれ。父は作家・中村正常、母は元女優の中村チエコ。２歳８カ月で映画『江戸ッ子健ちゃん』のフクちゃん役でデビュー。以後、女優として映画、テレビ、舞台などで
幅広く活躍する。57年、作曲家・神津善行と結婚。カンナ、はづき、善之介の１男２女に恵まれる。
著書は『人生の終いじたく まさかの、延長戦⁉』（青春出版社）、『もう言っとかないと』（聞き手・古舘伊知郎／集英社インターナショナル）、『87歳と85歳の夫婦 甘やかさない、ボケさせない』（共著・神津善行／幻冬舎）など多数。

やまうち・けいすけ●1983年福岡県生まれ。2001年「霧情」で歌手デビュー。09年「風蓮湖」がオリコンで50週ランクイン、14年「恋の手本」で初のオリコンTOP10入りを果たす。15年、日本レコード大賞で日本作曲家協会選奨を受賞。15年より5年連続「NHK紅白歌合戦」出場。現在、最新シングル「残照」の他、14枚組BOX『20th Anniversary Complete Box』が好評発売中。12月３日（木）ホテルオークラ福岡、７日（月）名古屋東急ホテル、13日（日）ロイトン札幌、22日（火）ザ・プリンスパークタワー東京と、全国４カ所でクリスマスディナーショー2020を開催予定。

撮影／園田昭彦　スタイリング／高山良昭（山内さん）　ヘア＆メイク／小林葉子（山内さん）　取材・文／北 菜穂子