自粛中のマスク生活で「やってはいけない」口のケアって?【歯科医師解説】

常時マスクの生活が始まって、はや1年。このコロナ禍で私たちのスキンケアやメイク、ヘアなど「気にかけるべきポイント」は激変しました。

ところでみなさん、マスクの下に隠れている「口の中」のケアは変わりましたか?

かしの木歯科医院の山嵜智浩先生によると、「やってはいけない」コロナ禍のデンタルケア新常識が…?

 

コロナで日本人の口の中に起きた変化と、その原因は?

かしの木歯科医院は、郊外の住宅街にあるごくごく普通の歯医者さんです。日頃から予約は急患以外はちょっと待つ人気の歯科ですが、コロナ禍で患者にはどんな変化が?

 

 

「ぼくが普段の診療で接する限り、郊外暮らしの日本人の口の中の状態は軒並み悪化しました。これまではきちんと磨けていたのに、急に口の中が汚くなった、あれっと思う人も珍しくなかった

 

 

おうち時間が伸びることで、ケアが丁寧になっているのかと思っていました。

 

 

「95%の患者さんは、マスクのせいで口の中のケアが雑になっています。マスクで隠れるので歯の汚れが気にならなくなりました。また、口臭も気にしなくなり、歯磨きそのものがいい加減になったようです

 

 

確かに、マスクで口臭を気にしなくなったという話は耳にします。ちなみに、緊急事態宣言で患者さんの数は減りましたか?

 

「いえ、ぼくたちのような郊外の歯科ではむしろ増えました。周囲の歯科仲間に聞いても同じです。いっぽう、ビジネス街では患者さんが減ったケースが多いようです」
他の診療科でも、都心はガラガラという話を聞きました。患者さんが増えるとなると、治療内容も変わったのでしょうか?
「ほぼ変わらないのですが、自費の高額治療は減りました。たとえばインプラントのような、今すぐやらなくても持ちこたえられる高額な治療は、先行きの収入に不安があるせいでしょうか、控えられているようです」

口の中の「悪化」はここに現れた!日本人の口腔ケアは

私個人はむしろ歯を磨くようになったので、ちょっと驚いています。先生が日々口の中を診察していて、明らかに変わったなと感じることは?
「歯の汚れの質が変わりました。ステイホームの影響で茶やコーヒーの摂取量が増えたのでしょうね、歯の黄ばみや茶ばみなどの着色が一様に強くなりました」
確かに、最近は歯が茶色くなりやすい気がします。虫歯や歯周病の原因になるのでしょうか?
「茶渋やステインは歯の健康に影響がないので、歯科医の立場からは気になりません。江戸時代のお歯黒も同じ働きでしたが、お歯黒は虫歯を抑えたといいますので、むしろそのまま渋をつけていてほしいくらいです」

気になる「歯の着色」、ケアするときにやめてほしいこととは?

とはいえ患者としては歯の黄ばみは気になります。落とすときに気をつけるべきことは何なのでしょう。
「日常の歯磨き、歯垢(プラーク)を落とす歯磨きの方法と、歯の着色汚れを落とす歯磨きの方法は別に考えてもらいたいんです。歯磨き粉は着色汚れを落とすためのものと考えて、歯垢を落としたいときはむしろ歯磨き粉を使わないくらいでいいです。なぜかというと、歯磨き粉の味と泡で磨けた気になってしまい、結局汚れが落ちていない人が多いのです」
具体的にはどうすればいいですか?
「歯の健康を保つための日常の歯垢落としには、歯磨き粉はなくてもいいです。少なくとも研磨剤は不要です。いっぽう、着色汚れを落とすときには、研磨剤が配合された歯磨き粉を使います。多少は力をかけて磨く必要があります。週に1回でいいでしょう」
歯磨き粉を変えるとなると、目的ごとに歯ブラシも変えたほうがいいのでしょうか。
「歯ブラシは同じいいですが、持ち方に気をつけてください。歯の健康を保つための歯磨きでは、歯ブラシの毛先を動かして汚れを掻き出す必要があります。毛先がしなって曲がるような圧をかけるのはNGです」
電動歯ブラシを使う場合はどうでしょう?
「手磨きが苦手なら電動ブラシをぜひ使ってほしいのですが、この場合も圧をかける持ち方はNGです。指3本でリコーダーのようにごく軽く持って磨いてください。無意識に力が入りがちなので、電動歯ブラシの動きを邪魔しないようになるべく軽く持つことが大事です」

敢えてこのコロナを「逆手にとる」ため、今できることは

最後に、ここまで聞いた話とは反対に、コロナ禍で日本人の口の中と歯にとってよかったことを教えてください。
「マスクをつける生活は口腔の環境維持に何一つよい寄与をしていないんです。でも、敢えてただ一つ挙げるならば、歯が外から見えないことです。たとえば前歯の治療やブリッジなど、外見が気になる部分を治すには今が絶好のチャンスです。歯は放っておいて勝手に治ったり、よくなったりすることはありません。時間がたてばどんどん悪くなりますから、この機会に敢えて治療してください」

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