“おひとりさま”と“おふたりさま”の最大の共通点とは? 【おこなしさまという生き方 Vol.4】
“おこなしさま”とは、独身・既婚を問わず「生涯子どもがいない大人の総称」です。
Vol.2 でも書きましたが、「結婚の有無」で線引きするより「子どもの有無」で分けた方が共通点は多い。特に女性は、母であるか否かによってライフスタイルが異なるため、“おこなしさま”は結婚については不問です。とはいえ、独身女性と既婚女性では、立場でまた違いがあることも事実。それぞれが抱えている不安や悩みは異なる部分があります。
自分しかいない“おひとりさま”
「この先、ずっと一人で生きていくのかな」
独身の“おひとりさま”の場合、「私は一人で平気!」と自らの強い意志でシングルライフを選択した女性を除けば、一人で生きていくことに対して不安と共存しながら暮らしている。このまま定年までこの会社で働けるのだろうか。でも自分で稼がないと生きていけないし……。
自分しかいないという「一人のリスク」は、精神的にも負担は大きい。パートナーがいれば、自分が何かあった時に手を差し伸べてくれたり、仮に働けなくなった時には支えてくれる。そんなセーフティーネットがない不安定な場所に立っていると、下に安全ネットがないまま綱渡りをしているような怖さを感じる時がある。
1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進んだといっても、女が一人で生きていくにはまだ厳しい局面はある。「結婚できないのは、女としての魅力に欠けているから?」と自問自答してみたり、猛烈に仕事を頑張っても後輩からは「ああはなりたくない」と陰で言われることもある。
時には男性よりも男前に組織の底力となって会社を支え、フルパワーで働いているのだから、もっと敬意を表されてもいいと思うのです。
おひとりさま同士の“おふたりさま”
次に、結婚している“おふたりさま”の場合。
「夫が稼ぎ、女は家庭を守る」という固定的な性別役割分業型だった時代は、女性は「永久就職終身タイプ」の結婚生活でした。80年代後半には、子どもがいない共働き夫婦「DINKS(ディンクス)」が、優雅に二人の時間を楽しむ都会派のライフスタイルとして脚光を浴びました。
それが現代では、生活費と将来不安のために二人で働かざる負えない時代へと変貌。「DINKS」は憧れの対象ではなくなり、二人で家計を支えていくようになると、夫婦は対等で「個」と「個」という意識が強まる傾向になってきました。
そのため、生活費以外は財布が別々、配偶者が休日でも友人と遊びや旅行に出かけるなど、“おひとりさま”同士が一緒に暮らしているような結婚生活をおくる「新DINKS」が台頭し始めました。
結婚して“おふたりさま”になるとパートナーは得られますが、それによって「子ども」のことに対しての風当たりは一層強くなります。
日本では、結婚してから子どもを持つのが王道なので、独身者にはまず「結婚は?」と問われる。「結婚よりも子どもがほしい」と願っている独身女性でさえ、いきなりシングルマザーになるにはハードルが高いので、まずは相手探しから始まるのが一般的な発想でしょう。
「まだ◯◯しないの?」という悪気のない質問ボール
独身には「結婚はどうするのボール」が飛んでくるように、結婚すると「子どもはまだなのボール」が容赦なく飛んできます。「結婚したら子どもができて当然」との意識がまだ根強く残っているので、周りからの期待は大きい。
うまくかわしながらも、当たりどころが悪いと痛みを伴ったり、人によっては危険球でダメージを受けてしまうことがある。悪気がなく「質問ボール」を投げているのは分かっているけど、むやみやたらに投げると傷つく方もいるので慎重にお願いします。まあそれも、ある年齢が過ぎるとピタッと飛んでこなくはなりますけどね。
「可哀想」と思われがち、親戚の集まりは少し苦手
独身で「未婚」、既婚で「未産」。「未」は、まだその時がこないことを意味します。
だからでしょうか、結婚できなくて可哀相。結婚しても子宝に恵まれず可哀相と、当事者の気持ちとは別のところで哀れみを受けがちという共通項があります。そのせいか、どちらの立場でも親戚の集まりは、ちょっと苦手……と思っている女性が多いようです。“おひとりさま”からすると、パートナーがいるだけ恵まれていると思われるかもしれません。ことさら家族と過ごすお盆やお正月の時期などは、既婚者との差を感じることもあるでしょう。
但し、結婚すると「嫁」という立場を背負います。大なり小なり相手側の親族とのお付き合いがあり、嫁として子どもを産まなかった“おこなし妻”は、後ろめたさを感じてしまう。子どもを作らなかった、出来なかった理由は夫婦間の問題だけど、女性の方が重荷を背負いがちなのです。
「おこなしさま」だから楽しめる女の道
独身・既婚、各々で悩みや心配事は異なる部分があるけど、両者の最大の共通点は「親にならないこと」。いくら仕事の経験を積み上げ、社会的地位が高くなったとしても、子どもがいなければ親にはなれない。
結婚をしているか、していないかは一切関係ない。離婚して未産のまま独身に戻った方も同じ。例えこのまま還暦を迎えようとも、我々は「親の肩書きをもたない大人」。子どもとしての経験は出来たけど、母親の経験をしない生涯を送るのです。
女性として母親の経験ができないことは少し寂しいことかもしれないけど、だからといって不幸でも可哀相な人生でもない。反対に母親業を免除された人生には、多くの利点があることに気づき、楽しんだもの勝ちだと思います。
母になることで見える景色があるように、“おこなしさま”だからこそ楽しめる女の道はきっとある。まだ舗装されていない砂利道かもしれないけど、女らしく軽やかに歩んでいきましょう!
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