石橋貴明「とんねるずは死にました」戦力外通告からの背景
少し前に「石橋貴明のたいむとんねる」(フジテレビ系)を見ていた時に、後頭部付近の頭頂部が白いことに気づいたのです。光の加減かと思ったのですが、よく見てみると白髪です。もみあげが白い時もあります。
石橋は現在59歳。そりゃ、白髪があってもおかしくはありませんが、私がなぜ驚いたのかというと、ずーっと売れてテレビに出ている人というのは、イメージが若い時のまま固定化されてしまうからだと思うのです。
時代の波に抗えない?かつての絶頂タレントたち
しかし、人がずっと若くいられないように、芸能人がずっと頂点に君臨することもできないもの。長寿番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)も視聴率が低迷し、2018年に打ち切りが決まりました。
最終回で、とんねるずの二人は「バラエティーをほろぼすなよ」と歌っていました。コンプライアンスが強化されたことで「やってはいけないこと」が増えたことに対する批判なのかもしれません。
その昔、「オールナイトフジ」で暴れて、カメラを壊したことすら“武勇伝”とされ、評価されてきた石橋だけに、最近のテレビ界が窮屈でたまらないのかもしれませんが、数字が取れなくなってきたのは、それだけが原因ではないような気がします。
なぜ、とんねるずは”高卒”であることを強調したのか?
売り出し中のとんねるずがよく使った言葉の一つが、“高卒”でした。
日本は学歴社会ですから、学歴は高いほうがいい。けれど、芸能界は学歴があるから売れるというほど甘い世界ではなく、売れている芸能人は大学に行っていない人のほうが多いのではないでしょうか。
にもかかわらず、とんねるずが“高卒”を強調したのは、日本人には判官びいき的な心情があることと、成り上がりを体現していくという意図があったのではないかと私は思っています。時代もバブル前で日本に勢いがありましたし。
小説でもドラマでも、主人公を正反対の人物を出すと、人々は感情移入しやすくなります。たとえば、主人公ががんばりやで真面目だったら、もう一人は協調性がなくて雰囲気を壊すようなキャラを登場させると、主人公の良さが引き立つ。
とんねるずは、その二極化を利用したのではないかと思うのです。
バブル期には「わかりやすい構図」こそがウケまくった
石橋は「うたばん」(TBS系)に女性グループが出演すると、「お気に入り」を上げ、「ブス役」に「てめぇは黙ってろ」と下げる手法を使っていましたが、男VS女、強い子VSいじめられっ子、美人VSブス、若いVS年寄、金持ちVS貧乏という対比は、笑いをうみだしやすかったのだと思います。
石橋の妻は女優・鈴木保奈美ですが、結婚会見をしたとき、レポーターが「とんねるずはお二人とも、女優を妻にしてうらやましい」というような趣旨の質問をしたことがあります。当時は「これがあれば成功、幸せ」という基準がはっきり決まっていて、それを満たすことで幸せになれると信じられていた時代だったのでしょう。
とんねるずがそれほど売れず、強い者にルサンチマンを募らせているのなら、この構図は安心して見ていられたことでしょう。しかし、あまりに売れてしまったとんねるずがそれをやると、単なるいじめみたいになってしまう。
「みなさんのおかげでした」に全落オープンというものがありました。ウソをついてタレントを呼び出し、タレントが落とし穴に落ちるのを楽しむという企画ですが、落とされた側は決して怒らないのです。
それはおそらく「あのとんねるずさんに、いじっていただいてる」からだと思います。
ですが、上下関係が希薄な昨今、若い世代には「いじめだ」と思えるかもしれませんし、私のようなオバサンからすると「いくら気を付けているといっても、骨でも折ったらどうするんだ」とヒヤヒヤする。
恐竜は大きくなりすぎて滅びたと言われますが、とんねるずも同じような部分があるのではないでしょうか。
娘という存在から、石橋の新キャラが生まれる?
しかし、石橋は恐竜ではないから、滅びることはないでしょう。
石橋はYouTubeに進出を決め、登録者数は瞬く間に100万人を超えました。石橋はテレビよりYouTubeのほうが向いているのではないかと思います。
YouTubeは「自分が主役」ですから、テレビのように多くのタレントが一斉に出るということはない。故に、石橋のパワハラ臭が消えて「頼もしい人」「本当は優しい人」だと印象づけられているように思います。
先日、「情熱大陸」(TBS系)に出演していた石橋。「東京カレンダー」で「美女と過ごすホテルライフ」をテーマに、モデルさんと体を密着させていました。
その時に「娘に見られたら、どうしよう。パパ何をやってるの?」と笑っていました。本心かもしれませんし、テレビカメラが入っているので、いいお父さんを演じてリップサービス的に発した一言かもしれません。いずれにせよ、石橋の新たな“引き出し”を感じたのです。
石橋にはお嬢さんが三人います。文句なく愛しい存在でしょう。彼女たちは、石橋がこれまで使ってきた「若いVS年寄」「美人VSブス」という二極化した基準では測れないはず。
また、いくらYouTubeでヒットしていると言っても、テレビの申し子ですから、その世界に帰りたいと思ったりもするのではないでしょうか。
そういう割り切れない気持ち、黒でも白でもないグレーな部分を、石橋がうまく見せることができたら、同世代の女性ファンも増えていくのではないでしょうか。
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