「私が不倫を楽しむ間」夫がこっそり自宅でしていたことは…

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

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【不倫の精算#22後編】

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不倫の彼とは「とにかく身体の相性が最高なの」

「もうこの人しか見えなくなった」

とIさんから彼と肉体関係を持ったことを告げられたとき、真っ先に出たのは

「ねえ、旦那さんは大丈夫なの?」

という言葉だった。

 

そんなしらける言葉をもらったら、たいていの女性は高揚感に水をさされた不快感をあらわにするものだ。でも、Iさんは

「あ、うちの人?

平気よ、今は仕事が忙しいって、私とはろくに会話もしないもの」

と、気にもしない調子で返してきた。

 

続けて彼との情事を話してくれた。

とにかく体の相性がいいこと、自分がまだ“反応できる体”であった喜び、離れているときもLINEで愛の言葉がたくさん届くことなど、彼にのめり込んでいるのはよくわかった。

 

スマートフォンから流れる彼女の声には、以前のような明るさと力強さがあった。

それを承知の上で

「気をつけないとね。

周りが見えなくなると旦那さんの行動に気づけなくてバレる女性が多いから」

と、どこまでも“余計な一言”を止められなかった。

 

それでも、Iさんは

「ありがとう。

でも大丈夫よ、うまくやるから」

と、どこまでも前向きに夫の存在を見ているようだった。

 

不倫で私が不在の間、夫が自宅でしていたことは…

それからしばらくIさんから音沙汰はなかったが、久しぶりに着信があって出てみると、いきなり

「ねえ、夫のことなんだけど……」

と押し殺した声が出てきて驚いた。

 

まさか不倫がバレたのかと慌てたが、Iさんは意外な言葉を続けた。

 

「あのね、あの人、スマホでAVを観てたの。

この間家族で○○に行ったとき、夫が運転していて

『昨日調べたときにサイトを開いているから』

って言われて、スマホを渡されたのよ。

それで見たんだけど、AV専用みたいなアプリが開きっぱなしになっていて……」

 

それは夫についての“発見”だった。

タスクを終了するときに並ぶアプリの中にそれを見つけたIさんは、衝撃を受けたものの何も言わずに夫に返し、それから自分で調べたそうだ。

 

「……」

何も言えずにいると、

「若い女性の○○動画とか○○についての情報とか、何かもう、普通よりひどいっていうか……」

Iさんは苦しそうに続けた。

 

自分とはレスでありながら、そんな動画を漁っている夫。

セミダブルのベッドで毎晩横になる夫がいつそれを楽しんでいるのか想像もつかない、とIさんは話す。

 

「……不倫の彼と夜に会ってた? 今日は夜、何時まで帰らないってご主人に言って出かけることもあった?」

と尋ねると、I さんはあっと小さな声を漏らして、少し黙った。

「そうね、確かに最近は夜に、研修って嘘をついて家を空けるときもあったけど……」

動揺したままの声で、自分がいない空間で過ごす夫への想像を巡らせた。

「……」

この沈黙が、夫の“裏の顔”が、自分の不倫によって生まれたものかもしれない、という確信を物語っていた。

 

夫は、私がいないほうがいいんだ。でも、私は……

それからIさんと何を話したか、

「自分に手を出さないくせにAVは見る夫への嫌悪感」

「開いていることを忘れてスマホを渡すほど警戒心を持たれない自分」

「そんなものを見ながら平気で家族と過ごせる夫への気持ち悪さ」

などだった。

 

苦しいのは

「不倫をしている側がそれを責めるのはおかしい」

という変えようがない事実だった。何を口にしても、それ以上に“悪いこと”をしているIさんは夫への言葉がすべて自分に返ってくるのをわかっていた。

 

もっと言えば、

「私が家を空ける時間が増えたから、こんなものを見る余裕ができたってことよね?」

“自分の不在が夫にとっては歓迎されているかもしれない現実”を目の当たりにしていた。

 

不倫の彼と関係がはじまったばかりのころは、時間の捻出に必死だった。彼の勤務が終わった夕方に会ったり、彼が昼から出勤の日は彼女がシフトをずらして午前中にホテルに行ったりしていた。

 

やがて、彼との逢瀬が待ちきれないIさんは、夜の時間でも研修や仲間との食事などと偽って家を出るようになっていた。

 

そうやって意識の隅に追いやっていた夫が、実はこんなものを楽しんでいたという事実は、Iさんにとって耐え難かった。

「愛されていない証」

とも感じられるものであり、それが一番の衝撃と混乱になっていた。

 

目をそらす自分の本心と、ままならない現実への葛藤

Iさんが体の不調を訴えはじめたのはそれからだった。

「あれから不眠が続いていて」

「食欲がなくて、子どもたちのご飯を作るのがやっと」

など、Iさんからメッセージが送られてくる。

 

不倫の彼との情事から一転して調子の悪さを伝えるものになり、

「彼とは職場で会うだけにしてる」

「誘われても家を出るのが怖くなって」

と、不倫の彼との関係もおぼつかない流れに変わっていた。

 

「AVを見る夫」より「不倫相手がいる自分」のほうが、言い方は悪いが“上”。

一瞬はそんな考え方もしていたはずのIさんだが、そんな気持ちがどれほど不毛か、かえって自分の価値を貶めることになるか。時間が経つほどに彼女の心を追い詰める。

 

彼女は気づいていない。

本当に夫への愛情をなくしているのなら、AVを漁っていることがわかっても嫌悪感だけで終わるのだ。

そこにショックを感じ、動揺し、自分を振り返ってやっていることの重さに打ちひしがれるなら、「女である努力」を認めてほしい相手は本当は誰であったのか。

 

だが、認めてほしい相手はまったく意図しない方向で性を楽しんでいた。

不倫の彼と楽しめなくなったのは、そのつながりの空虚さを誰よりも実感したからだ。

 

「……」

今日、目の前に座るIさんは不倫の彼への情熱こそを失い、「夫から振り返ってもらえない自分の痛み」をまとっていた。

不眠の解消も、心臓の動悸を改善するのも、自分にしかできない。

彼女の苦しみをただ耳にしながら、葛藤の先で彼女が今度こそ自分を救う判断ができることを、願うばかりだった。

 

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