「もう一度いいですか?そんな化粧品、聞いたことがないですが?」開発者がオーダーを聞き直したジェルとは?【開発秘話#3】
こ開発や企画、設計やデザインなど「ものを作った側」の人々に、「なんでコレ作ったの?」と感涙しながらお聞きするシリーズ、今回はナリス化粧品の「メガビューティ エステティック」です。
最近露出が増えている「ナリスの美顔器で使う専用の化粧品」。美顔器側は既存品で、今回出たのは「3ステップの化粧品」なのですが、使うとわかります、「たった7日でこの結果…?」とびっくりの内容なのです。私はこれまで美顔器を買っても買ってもお蔵入りにしていましたが、あまりに手応えがあるのではじめて「続けられている」のです。
その登場背景を聞いてみたら、これが驚きのスピード開発でした。
【開発秘話聞いちゃお!#3】
ナリス化粧品 マーケティング部 訪販グループ 課長 吉住優子さん
同 研究開発部 研究開発課 処方技術開発グループ リーダー 浅井健史さん
「美顔器まで全部出している化粧品メーカー」って、実はそれほどありません
--今回はマーケティングの吉住さんと、研究開発の浅井さんのお二人にお話を伺います。お仕事の役割はどう違うのでしょうか?
吉住(マーケティング)・私は市場のニーズを探り、商品の方向性を決めて、こういうものを作りましょうという企画の旗振りをする責任者です。
浅井(研究開発)・私は研究開発部門で化粧品の処方を作る仕事です。わかりやすく言うと、ラボでビーカーをかき混ぜて、化粧品の中身を作っています。
--今回の「メガビューティ エステティック」という商品の発売経緯ですが、家庭用美顔器「メガビューティ」は既存品ですね。
吉住(マーケティング)・初代は2001年に発売された家庭用美顔器のパイオニアで、2018年に4代めが登場しました。ナリス化粧品の特徴である「角質ケア」の理論を反映して、イオン、HOT、COOL、LED光エステと微弱電流を組み合わせた4つのモードを搭載、自宅でのお手入れに必要な要素はこれ1台でほとんどまかなえます。
--その「メガビューティ」で使える化粧品として、2021年6月に3アイテムがセットとなった「メガビューティ エステティック」が登場しました。今回お話を伺う商品です。
吉住・毛穴クレンジング、ビタミンC、引き締めパックの3点が1つの箱に入った1週間集中ケア用のアイテムです。コロナ禍でみるみる変わる美容の常識にいちはやく対応できたと自負しています。
--そもそも、化粧品メーカーさんが美顔器を出しているのがかなり珍しいですよね。社内では訪問販売という部門だと聞きました。
吉住(マーケティング)・昔のなごりで訪問販売という呼び方をしていますが、現在はナリス化粧品が用意している「デ・アイム」というビューティスタジオを個人の販売員に使用していただき、販売しているのが主流です。
--シェアオフィスのエステ版のような方法の事業ですね。サイトを見るとエステなのにプライスがお手頃なのも魅力です。
吉住・ナリス化粧品の販売をしたい方に、エステ技術や商品知識を身に付けて販売員になっていただき、ナリスの化粧品を使って施術してもらう仕組みです。エステを開業するとき、個人でベッドやマシン、刷毛などの消耗品まで、必要なものを全部用意するのは大変な負担ですが、「デ・アイム」では使用料を払えばそれらを借りられるので、事業のスタートがぐんと容易です。
--なるほど、お仕事を始めたい女性が働きやすいスタイルができていたんですね。
吉住・販売員は先月末の時点で全国に21万人いるのですが、昨年4月の緊急事態宣言でスタジオは急に閉鎖されました。フェイシャルエステそのものも避けられる傾向になってしまい、急に「販売員の生活はどうなるんだ」という話になったんです。
おうち時間なら「これまでならめんどうだったスキンケア」をやってもらえる。即、開発へ
--コロナ禍はどの業態もみんな大変ですが、美容は特に大変な分野でした。
吉住・そんな中、エステを受けられなくなったお客様がご自宅で従来なら「めんどくさいこと」でやらなかったことををやってくれるようになった、という声が挙がりました。お客様向けの会報に号外を作ったのですが、ここに掲載した「マッサージングパック」という商品が大人気という声が戻ってきて。
--マッサージしたあと放置して拭き取ってと、とにかく手間がかかるけれど、その分だけ効果も実感できるアイテムですね。
吉住・なので、従来のエステティシャンのハンド技術をどれだけお客様に切り分けられるかを考えました。ここで見直されたのが今回の「メガビューティ」でした。一部の販売員から、ZOOMを使って「メガビューティ」のセルフエステをオンライン実演すると大好評という声が戻ってきたんです。
--まさかのオンラインエステですね。先に現場でのヒットの声がなければ思いつかない方法です。
吉住・ならばそのつながりを生かして、オンラインで実演しやすいよう「メガビューティ」専用の化粧品を開発、ワンセットの箱でぽんとお渡しできるようにすればいいんじゃないの?と結論が出たのが2020年の6月でした。
ところが「引き締まった肌」には定義がなかった。どういう肌に仕上がれば魅力的…?
--これは専用に開発したのですよね。すでにある製品を小さくして入れるという方法はなかったのですか?
吉住・あくまでもエステティシャンの技術を自宅でというのがスタート地点なので、従来とは発想が逆なんです。この3段構成のうち、いちばん苦労したのが最後の引き締め、アストリンゼントジェルクリームです。「引き締まった肌」という状態の定義があいまいで。
--肌の定義?
吉住・これまで、「どのように引き締まればきれいと感じるか」を考えたことがなかったんです。リフトアップなのか? 白くなるのか? ザラザラ感が消えればいいのか? ……試し尽くした結果、「最後につるつる感が出れば引き締まっていると感じる」と結論づけました。ところが、化粧品の効果って、最後がつるつるですと言われてもあんまり魅力的ではないんですよ。
--確かに、つるつるという言葉からはテカりを感じてしまうかもしれません。
吉住・そうですよね。そこで、今回は改めて、引き締まることの重要性をイメージしてもらうために、「セットの中のビタミンCなどをすべて閉じ込めると、肌が引き締まり、きゅっと整うことで肌がつるつるになりますよ」と説明しました。こうして「引き締まった肌」を再定義しましたが、このあとがまた大変でした。
開発の視点では「わけのわからない」依頼が「信じがたい締め切りで」届いた
--ここからは研究開発の浅井さんのお話です。バトンが開発現場に渡りました。
浅井(研究開発)・私は開発の中でも処方の担当です。この化粧品ならどの成分を何%まぜるという計算をして、ビーカーで混ぜて品質の確認をする役割です。普段、私たちの開発は製品発売の14ケ月前からスタートします。ところが、今回はいきなりびっくりするスケジュールで、意味のわからない開発企画が回ってきて……。
--相当なイレギュラーだったのですね。
浅井・すべてがイレギュラーでした。まず、企画書を見ても意味が理解できません。オーダー上は1つの製品なのに、4つもアイテムが入っていて、メガビューティを併用する……? そんな化粧品は今までない。なので、ひとまず発売日に目が行きますが、そこにはとんでもない日にちが書いてある。通常の6割程度の期間、8ヶ月で開発と……?
--ちょっと意外なのですが、開発って最初は打ち合わせから始めるわけではないのですね?
浅井・はい、ナリス化粧品はちょっと特殊で、原料の研究開発から小売までを一気通貫で手掛けているほか、OEMも並行で進めます。年間3000品以上を開発するため、それぞれのプロジェクトはシステマチックに、たとえば箱のデザインやラベル印刷というところまできちんと整備分業されているんです。
--3000品? 1日あたり10品開発ということですか?
浅井・口紅を10色展開する場合、10色を10アイテムと数えての数字ですが、それでもじゅうぶんに大量です。なので、それさえあればすべてわかるとても詳しいオーダーシートで現場が回っています。オーダー管理専門の部署もあるくらいです。
--なるほど……その量だとその都度打ち合わせはできませんね。
浅井・というわけで、とても困惑する開発スタートでした。それを察知したマーケの吉住がすかさず開発の主要メンバーを集めて、異例の打ち合わせをセットしてくれました。そうして開発側の意図を聞いてみると、なるほどなと理解できる内容でした。また、開発メンバーもこのコロナの状況下に使命感を持っていました。
最初の試作に「想定外」の声。開発ベテランでも見抜けなかったワナとは
--作るものが理解できたところで、ここから具体的な開発の右往左往が始まるのですね。
浅井・私は3ステップの最初、クレンジングジェルの処方を担当しました。もともとエステで使っているクレンジング剤があり、あれをアレンジすればいいのかな?と安直に考えていました。ところが、第一号を作って吉住に渡したところ、すぐに内線がかかってきて、開口一番「たれる」と。
--たれる。
浅井・マッサージしている間にたれると言われたんです。言われてみれば、エステでは寝そべって横の状態で施術します。でも、同じ剤を座りながら使うとユルすぎてあごからたれてしまいます。すでに開発歴20年近く、ベテランと呼ばれる域の私なのですが、この発想はなかった。改めて、これはゼロから専門処方を作らないとならないな……と思い直しました。
--ゼロからの専門処方というのはよくあることなのでしょうか?
浅井・それなりに。処方の加減は経験によるところが大きくて、我々も普段手がけているアイテムならこのくらいの割合で混ぜればOKという幅を感覚として持っています。それでも、今回のように「メガビューティ」のHOTの温度で溶けてというのは経験例がなさすぎました。
軽くオーダーされたことだが…そんなこと「常識」の範疇にない!
--くるくるやっていると溶けるクレンジングは市販品にもありますよね、あれとは違うんですか?
浅井・ぜんぜん違います。吉住からも「HOT機能を使ったら溶けるのにして」とごく軽ーく言われたんですが、開発からすれば、ええっ?と聞き返す話です。化粧品は環境によって変性しないよう、常に一定であることを前提に作るので、温度が変わってもきちんと元の状態を保たねばなりません。それを変えるだなんて、そんな得体の知れない開発……。
--得体の知れない開発。
吉住(マーケティング)・こうしてできあがった後だから言えますが、企画した私たちから見ても、なんでHOTにすると溶けるのにこんな安定した剤形で供給できてるのかが謎なんです。どうやったら作れるのかな?と。
--HOT機能のときのヘッドは45度くらいでしょうか。夏場の気温35度の差は10度しかないですよね。
吉住・そうなんです。実際、最初のプロトタイプはパウチではなくジャーに入っていたのですが、しばらく机に置いておいたら溶けてしまって。浅井さんに内線して「溶けてるんですけど????」って
浅井・責められました。
吉住・いや、責めてないですよ?
--責めてますね。
浅井(研究開発)・最終的に、ディープクレンジングジェルは決まっていた仕様が包材、小さいパウチであることに救われました。ジャーだと状態変化を起こしてしまうのですが、パウチなら大丈夫、これは開発者としては完全にラッキーでした。
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--そうした「偶然に助けられる」ことは、開発の中ではよくあることなのですか? それとも運のよさ?
浅井(研究開発)・長く担当していると、実はたまにあることです。
吉住(マーケティング)・正直すぎます(笑)。浅井さんの経験に裏打ちされた実力だと書いておいてください。
--この経験値こそナリスの開発力だ、ということですね。こうして6月に発売に至りました。さっそく販売員さんからの反響があったそうですね。
吉住(マーケティング)・ありがたいことに、想像以上の評判です。販売員さんから「あなたがメガビューティ エステティックの人ね」と言われたり、直接メールをいただいたりしますし、社内の評判もすごくいいんです。
--私も使ってみました。2日目で「あれ、肌の吸い付き感が全然違う…?」と驚愕。化粧品メーカーさんがお道具もコスメも両方作るとこうなるんだ!と。
吉住・今回は発売前に社内で入念な効果テストをしましたが、「吉住さんの使っている会議室から出てくる人がみんな顔がつやつやで白くてキレイになっているけれど、いったい何をしてるんですか?」と社内でウワサになりました。
--コットンを2回交換して、正直手間も時間もかかるのですが、あまりに結果が明らかに出るのですっかりハマりました。寝る前に使わないとスッキリ眠れません。
吉住・まさに、社内テストがきっかけでお手入れをがんばることにしました!という人がぐんと増えました。これまでのお手入れにプラスアルファして美白をがんばろうとか、マッサージをがんばろう、パックをやってみようと。しんどくないのに結果も出るのでどんどんハマっていくのが見て取れました。
--結果が出るから楽しいという、スキンケアの好循環が起きているのですね。
吉住・私たち化粧品会社にとって、スキンケアの楽しさのきっかけを提供できるのは最上の喜びです。ぜひ、一人でも多くの方にお手入れの楽しさをもう一度再確認していただいて、スキンケアにハマる人を増やしたいと思っています。
家庭用美顔器「メガビューティ」で使える1週間集中ケア用3品セット。メガビューティ エステティック ディープクレンジング ジェル、ダーマCローション(ローション×パウダー)、アストリンゼント ジェルクリーム 3,850円(10%税込)/ナリス化粧品
現在4代目の家庭用美顔器のパイオニア。メガビューティ(家庭用美顔器) 3万6,300円(10%税込)/ナリス化粧品
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