#12大人だから、欲求に素直に従いたい【40代、50代の性のリアル】
コロナ禍で、人とのつき合い方や距離感を見直した人は少なくないだろう。気軽に会えなくなったからこそ存在の大きさに気づいた、もしくは、そんなに好きでもない人と無理して会わなくていいので楽になった……。夫や恋人、セックスパートナーとの関係も、例外ではない。
本連載でお話を聞いた女性たちは、その後をどう過ごしているだろうか。コロナ禍で変わったこと、変わらないことはあっただろうか。
多忙で会えなくなった
結婚、二度の出産、別居、離婚を経験し、シングルマザーとなってからマッチングアプリで知り合った男性との交際について語ってくれたチヒロさん(45歳)。
チヒロさんの過去の記事はこちら>>40代で絶頂を知り、性行為観が変わった
「その後」のお話を聞かせてもらった。はじめてのオーガズムをもたらしてくれた男性、シンゴさんとの関係は、どうなっているのだろう?
「実は、いまは別の方とおつき合いしているんです。年上の彼にも離婚経験があって、独身同士。以前、短い期間ですがおつき合いしていたので、ヨリを戻した形になります」
黒く豊かな髪を揺らしながら、おっとりと話す。この日はリモートでお話をうかがったが、自然光がたっぷり入るカフェでお茶をしながらおしゃべりをしている気分になった。そんな親しみやすさが、チヒロさんにはある。
性への探究心が旺盛なシンゴさんとは、どのような別れを迎えたのだろうか?
「それが、はっきりとお別れしたわけではなくて。彼のお仕事がとても忙しくなり、それでも無理をすれば時間を合わせられなくもなかったのですが、私はせわしなく会うのはあまり好きではなく、だったら会わなくてもいい、と思ってしまうんです」
ゆとりがあるとき愉しむもの
会うなら余裕をもって、ふたりでゆっくりしたい。抱き合う時間も、たっぷりほしい。40代も半ばになったからこそう思えるようになった、とチヒロさんは思っている。
「若ければ、1時間でもいいから顔を見たい! という切羽詰まったような気持ちになるでしょうし、忙しくても疲れていてもなんとか時間を作るエネルギーがあると思うんです。『なんで連絡くれないの?』『もっと逢いたい』と、やきもきしたり。それはそれで恋愛の醍醐味のひとつだと思うのですが、私の場合、いまは恋愛がそんなふうに人生の中心にはならないんです。仕事があって子どももいて、日常が回っている。そのうえで、ゆとりができたときに愉しむもの、という感じです」
シンゴさんは、チヒロさんのスタンスを支持してくれた。
「彼はいずれ早期リタイアしたいと思っているそうで、『僕が悠々自適になって、チヒロの子どもが独立したら、ふたりで一緒に暮らそう』と言われているんです。それまでは、私がほかの人と交際しようと何しようと構わない、と。私も現時点ではそんな気持ちになれないけど、先のことはわからない。彼にもそう伝えています。うちの子はいちばん下がまだ小学生なので、10年以上先の話ですしね」
きっぱり別れたわけではない、相手に期待をもたせるわけでもない。これが20代、30代だったら「自分たちはつき合っているのか、いないのか」「将来的に結婚するのか、しないのか」「子どもがほしいから、はっきりさせて」と、白黒つけたかったかもしれない。チヒロさんには今後再婚したいという意思がなく、だから曖昧なままでいい。
イクけど、気持ちよくない
「月に一度はLINEをして、近況を報告し合っています。会わないけど、途切れもしない。元気なのがわかれば、それはそれでうれしい。そんな感じです」
こうしてシンゴさんとは距離ができたが、チヒロさんはその後、自身のセックスライフにおいて彼との出会いがいかに大きなターニングポイントだったかを思い知る。シングルに戻ったのを機に何人かの男性とデートし、セックスをしてみたとこと、決まってオーガズムに達したのだ。
ここで、2年前の記事から一部を引用する。
--イクとは“反射”だと言われている。鼻の穴に細いものを差し込んでくすぐればクシャミが出るように、適切な刺激を与えればほとんどの女性はイケるということで、一度オーガズムを身体が覚えればその後は比較的、絶頂感を体験しやすくなる。
「デートした男性たちとのセックスでも、その“反射”が起きたんです。出会ったばかりで彼らのことがそこまで好きなわけではないのに、身体にクセのようなものがついていて、イッてしまう。初めての相手とのセックスだと女性はだいたい緊張すると思うのですが、私もそうでした。だから、オーガズムはあるのに気持ちよさとリンクしないという、不思議な現象が起きたんです。点数をつけるなら、60点ぐらいかな。なのに相手の男性は、私の反応を見て盛り上がっちゃって」
まさかの「変化」に、チヒロさんは>>>