その医師をとことん信じた私の「奇跡の軌道」【大穂その井#6】
52歳で突如としてがんが見つかり、同時に親の介護も担うこととなった大穂その井さん。ご自身の体験を話してくれました。好評の内容を再配信します。
*このシリーズの全話リストまさかの取り残し? 再発が判明し、主治医が落ち込む
さてここで、私と主治医とのエピソードをお話しします。
初発のがん治療がひととおり終わり、経過観察になってすぐに、切り取ったはずの左胸の奥に違和感がありました。そう、再発に自分で気づいたのですが、その検査の時、主治医の部下が「あっ! これ、取り残しだ!」と言ったのです。
オペで主治医ががんを取り残した、という意味ですね。これには、まだ元気だった父も仕事仲間もひどく怒りました。
「その医者のミスだ!」「すぐに病院を変えたほうがいい!」と。
その気持ちはよくわかりましたが、私は主治医を変えませんでした。彼のひどく落ち込んだ姿を見たからです。
彼は、医者がかかりたい名医に選ばれるほどの、名医中の名医ですが、その彼が、私の再発検査の結果を見て、みるみる目を真っ赤にして険しい顔になり「オオホさん、すみません」と謝った。
私はそんな主治医の姿を見て「先生を救わなきゃ。私しか救えない!」と瞬間的に決意したのです(笑)
今まで見たこともない、打ちひしがれた姿。
「私は先生を見捨てない」「先生に対する信頼はこうなっても揺るがない」そんな決心を見せるために、その週に開催された主治医の乳がんセミナーに出席して最前列に座り、「先生、がんばって下さい!」と声をかけ、誰よりも大きな拍手をしました。
でも先生が私を見る表情は硬く 「オオホさん、これから最善の治療を皆で考えます」と何度も言われました。
もう以前のように笑いながら話すことは無理なのかもしれない、と思うほど険しかった。
再発がんを取り除くオペが終わった時、付き添ってくれた友人に切除したがんを見せて「今度は確実に取りました」と報告したそうです。
セカンドオピニオンは敢えて「一通り終わってから」とった
退院してからまた化学療法が始まり、その間ずっとニコニコ対応している私を見て、主治医がようやく笑ってくれるようになりました。
正直、時間がかかった。
そこまできて私は初めて、別の病院の医師に第2の意見(セカンドオピニオン)を求めました。その医師の見立ては、「主治医の治療方針がベストだ」ということ。そう告げられた時、なぜか泣けて泣けて仕方がありませんでした。
この一連の出来事は、看護師や薬剤師など、他のチームメンバーにも伝えました。皆さんあの名医が患者に頭を下げたことに感動していましたし、セカンドオピニオンの結果にも満足してくれました。
結果的に、チームの結束力が高まったわけですね(笑)
これは私のケースですが、どうしても主治医との関係がうまくいかない、とことん相性が悪いということもあります。これもまず他のメンバーに相談してみること。
場合によってはメンバーを入れ替える勇気も必要です。あくまでも自分が主体者ですから。
また主治医の診断や治療に不安がある時には、遠慮せずにセカンドオピニオンを利用して下さい。私は自分の治療に確信を持つために行きました(笑)
セカンドオピニオン(がん情報サービス)https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/second_opinion.html
オトナサローネの読者の皆さん、もしもの時のために、
私のがんを治すプロジェクトでは「医師はチームメンバー、プロジェクトリーダーは私」
このことばを覚えておいて下さい。
つづき#7>>>大穂さんをさらに襲った「想定外の困難」とは?
スポンサーリンク