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治療と介護「お金」の問題に直面したら死ぬしかないのか?【大穂その井#8】
52歳で突如としてがんが見つかり、同時に親の介護も担うこととなった大穂その井さん。ご自身の体験を話してくれました。好評の内容を再配信します。
*このシリーズの全話リスト
はじめて「助けて!」と声を挙げた。回目で冷静になる
がんの治療をしながら家族の面倒を見るという点では、子育ても大変です。しかし子育ての場合は、子供の成長とともに出口が見えてきます。
介護は出口が見えない。事態がどんどん深刻になっていく。
出口は親の死、です。がんになった自分の死を考えながら、親の死にも直面する。大変ヘビーな心理状態に追い込まれます。
正直、がんで死ぬのではなく、心労で死ぬと思ったほど追い詰められました。
「このままだと破滅する……」そう思って、通院していた病院の「がん相談支援センター」に助けを求めました。これが「助けて!」の1回目です。
心の専門家は私に、「いいですか? まず問題を整理して、今やるべきことを明らかにしましょう」と言い、「最優先するのはあなたのがん治療ですよ。両親の介護は専門家にまかせなさい」「とにかく冷静になりなさい」と繰り返しました。いや、ほんとうにそのとおり。おかげで徐々に冷静になれました。
在宅介護を選んだ最大の理由は「お金がない」でした
そもそも なぜ私が、がんが再発しても親の在宅介護を選んだのか。
理由は2つあります。
ひとつ目は、脳梗塞で入院していた父が「家に帰りたい」と訴えて病院のベッドから落ちたから。そのあと、体をベッドにくくり付けられて「拘束」されました。落ちたら危険だし、病院側の責任問題にもなるからという理由です。
じっと天井を見て黙ったままの父を見て、涙が出ました。
かわいそうで仕方がなかった。
そしてもう1つの理由は、お金の問題です。施設に入ると、毎月多額の支払いが生じます。「だいたい月に25~30万円。施設によっては40万円近い出費になるかもしれません」と、病院のソーシャルワーカーがさらっと言いました。
父の8万円の年金では支払える額じゃないし、いつまで支払い続けるのかもわかりません。
私はといえば、仕事はほぼできない状態で、会社の売上は激減していました。
大金は支払えない、父を家で看取ろう、と考えたわけです。
しかし、父が入院していたリハビリ病院では、医師もスタッフも大反対で、口をそろえて
「娘さんががんの治療中、奥さんも高齢で弱っているのに、在宅介護なんて到底無理。3か月、いや3週間ももちませんよ」「悪いことは言わないから施設に入れなさい」と、強く言われました。
恥ずかしくて、お金を支払えない、なんて言えなかった。
つづき>>>もう無理か。ここまで考えた彼女が起こす奇跡の逆転
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