51歳、SNSで再会した元カレ。20年ぶりに打ち明けた私のトラウマ【40代、50代の性のリアル#21前編】

2021.12.11 LOVE

*連載一覧へ

SNSの「知り合いかも?」に、なつかしい顔を見つける。どうやって関係を割り出しているのか、そのアルゴリズムは知る由もない。

名前や顔を見て、ありし日にともに経験した出来事や気持ちがよみがえる人もいれば、同級生だとはわかるけれどそれ以上は思い出せない人もいる。当時の関係の濃淡によって、いま、どれだけ感情が揺さぶられるかも違ってくる。

大阪在住のハルネさん(51歳)はFacebookで、かつての交際相手の顔を見つけた。高校で1学年上の先輩だったリュウジさんは、いまも地元の四国にいると知った。

 

朝晩の電話だけでは物足りなくて、再会の約束をした

「彼も私のことを覚えていてくれて、毎日のように電話するようになりました。朝も夜も話していた時期もあります」

 

昔を知っているという気安さから、自分を飾ることなく何でも話せる。お互いに「会いたい」と思うようになるまでに時間はかからなかった。いまから8年ほど前のことである。

 

「彼が出張で大阪に来るタイミングで、飲みにいこうという話しになりました。ウチは子どもがふたりいるのですがもう大きくなっていて、私が夜出かけても大丈夫だろうと思えたので、会うことにしました。20年以上ぶりの再会でしたが、ずっと電話で話していたせいか、この人変わってないなぁと感じたし、当時の気持ちも思い出しました。お互いに気持ちを残したまま、別れたんですよ」

 

青春時代のほろ苦い別れの後に、起こったこと

高校時代、約1年ほど交際した。別れたきっかけは、彼の進学。関西の大学に合格したため地元を出て、物理的にも心理的にも距離ができた。

 

「彼が通っている地域に私も進学するという選択肢もあったんですが……実は彼がほかの女性とつき合っているという噂を耳にしたんです。それがすごく悔しくて、私は東京の短大に行くことにしました。ちょっとした意地ですよね」

 

そこで、ふと言葉を切るハルネさん。言ってしまえば、若いカップルにはよくある展開だ。別れたことすら、少し苦さがありつつも思い出になっていてもおかしくない。しかし、

 

「実は私、上京してすぐ、レイプされたんです。だからもし、彼のいる関西に進学していればそんな目に遭わなかったのではないかという想いが、ずっと胸にあって……。素直になって、彼を追いかけていけばよかったなぁって」

 

年下の彼氏の無理解、自分を責める日々がはじまる

その後、ハルネさんの人生は常に混乱をともなうものになる。それは現在も変わらない。被害に遭ったときと似た状況になると、フラッシュバックが起きる。身体が絡まり、何も考えられなくなって過呼吸を起こす。

 

「パンドラの箱じゃないけど、固く封印して絶対に触れちゃダメなんだと自分に強く言い聞かせてました。時間とともに記憶が薄れた部分もあるにはありますが、消えることはないんですよね。感覚が覚えている。私が被害に遭ったときの年齢に娘が近づくにつれ、思い出すことが増えて大変でした。被害の後しばらくして、年下の男の子と付き合ってみた時期があります。そのときにこんなことがあったと話したら、『汚されたんだ』というような言葉とともに軽蔑の目を向けられてしまったんです。もう誰にも言わないでおこうと決めました」

 

典型的なセカンドレイプ(二次加害)である。

 

男性なんて怖くない、セックスもできると虚勢を張った20代

「でもそんなふうに言われて、自分で納得する部分もあったんです。なんであの時間に私はこの道を通っちゃったんだろう、なんであのとき声をかけられて応えてしまったんだろうって」

 

セカンドレイプはこうして被害者の自責の念を強め、口をふさいで助けを求められなくしてしまうから危険だ。彼はまだそのとき高校生で未熟だったから、とハルネさんは言うが、そんな若者までが目の前にいる被害当事者を思いやるのではなく責めてしまう社会は、やはりおかしい。

 

「20代は、虚勢を張って生きてきました。自分は大丈夫、と言い聞かせて、周りにもそう思われるよう振る舞って。ものすごく遊んでやれって思った時期もあったんです。自分は男性が怖くなんてなっていない、セックスだって平気だって思いたかったんでしょうね。でもそれが落ち着くと、セックスが怖くてしょうがなくなりました。男性を好きになることはあるんですが、セックスはしたくないんです。暗いところで体をさわられるだけでも、拒否反応が出てしまっていました」

 

セックスは、子作り目的のみ。夫から迫られたときの逃げ場

夫となる人と出会い、結婚した。新婚の時期に被害に遭ったことを打ち明けたが、彼は聞き流した。どう反応していいのかわからなかったのかもしれない。けれどハルネさんからすれば受け入れられなかったも同然で、悲しくなった。それからは、セックス=子どもを作る行為でしかなくなった。

 

「子どもが小さいうちは、私がいないとまるで寝なかったんです。何年も朝から晩まで抱っこしたりおんぶしたり。そんなところに夫から迫ってこられるのが本当に苦痛で、拷問のようでした。でもそのころは、子どもの面倒をみなきゃといって逃げられていたから、まだよかったかな。子どもが大きくなって学校だバイトだで家をあけるようになり、夫婦ふたりで過ごす時間が増えた今のほうが、求められたとき逃げ場がなくてし困っています」

 

セックスが気持ちいい現在、女性はいくつになっても変われる

夫は家族としては申し分なく、何も不満はない。でもセックスはもう二度としなくていい。結婚前も「また会いたい」「またしたい」と思う人はいなかった。

 

リュウジさんだけが違っていた。

 

「いままでとは、ぜんぜん違うんです。これが”相性がいい”ってことなんでしょうか。いま彼とのセックスが本当に楽しくて、気持ちよくて、女性はこの年になってもこんなに変われるんだ、と自分でも驚いています」

 

>>>リュウジの何がそんなに、ハルネさんに響いたのか?後編につづく。

続きを読む

スポンサーリンク

スポンサーリンク