周りに無視されても「石けん屋になりたい」と発信し続けた。それが勝因

2022.02.19 WORK

前編『「最初は家で作ってました」札幌の石けん専門店が成功をつかむまでの大苦労』では北海道札幌市にある手作り石鹸の工房SAVON de SIESTA(サボンデシエスタ)の開業までの話を聞きました。

今年で17年目を迎えた同ブランド創業者の附柴彩子さんに、16年間の歴史とECの変化を振り返っていただきます。後編です。

【私たちの新しい働き方、暮らし方#1 後編】

なりたかったのは石けん屋ではなく「楽しい暮らしを届ける仕事」

 

―もともと附柴さんは製薬会社に勤めていたそうですが、趣味の石けん作りのブランド化・起業を決意されたのはなぜですか?

 

学生時代、自宅で石けんを作りながら「こんなにいいものがあるんだから、いろんな人に届けたい」と思ったのが起業の最初の一歩でした。自分で会社をおこしたい!というよりは、作ったものを広く届ける手段を考えたかったんですよね。

 

―起業にあたってはどのような準備を?

 

石けんをはじめとした化粧品の製造・販売には「薬機法(※)」という法律が関わってくるのですが、当時はどうすればいいのか全然わからなくて。なので大学院を出たら化粧品メーカーか製薬会社に就職したいと思ったんですよね。

 

その後、製薬会社でいろんな法律の勉強をしていくうちに、起業にあたりクリアすべきポイントが見えてきました。結婚をきっかけに会社をやめた頃には主人が起業していたので、私も会社を作ってみようかな? とりあえずやってみよう!という感じで始めました。

※「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。

 

―「とりあえず」で始めた事業を成長させ、ここまで続けられた要因や秘訣は何でしょうか。

 

続けられる理由か……。ずっと一人で続けていたら途中で疲れちゃってたかもしれませんね。お客さまがいて、一緒にお仕事をしているスタッフがいて、皆さんに支えられてこそ今まで続けてこれたのかなと。

 

それから、やりたいことを言葉にするのはすごく大事にしています。

 

ただやりたいなぁと思っているだけでは人にはあまり伝わらなくて。学生時代も就職後も「石けん屋さんになりたい」と口に出してはきたけれど、周りの人の反応は「どうしちゃったの?」って感じだった(笑)。でも言い続けてるうちに応援してくれる人が増えてきて、自分の考えもだんだん整理されていきました。結果として私がなりたかったのは石けん屋じゃなくて、誰かの暮らしが楽しくなる時間を届ける仕事だったんですけど……そんなふうに、やりたいことを言語化し続けてこれたことは一つの秘訣だと思います。

 

―言葉にするって大事ですよね。

 

笑われちゃうかな?って思うことでも案外みんな聞いてくれたりするんですよね。

 

昔やっていたホームページは写真日記のようなものだったんですが、そこで「起業しようと思う」とか、やりたいことや思ったことを書いていたら、BBS(掲示板)にコメントを入れてくれる方が増えてきて。ネットショップを始めたときも最初に注文してくださったのはその方たちなんです。それがなかったら最初の集客にはすごく苦労していたかもしれません。

 

―当時のホームページはご自身でHTMLを書いて作っていたんですか?

 

書いてました。全然知識もなかったけど一生懸命タグを組んで、配置がズレちゃって「あれ?」みたいな(笑)。そういう経験があるので、私たぶんインターネットが楽しいんでしょうね。ネットでのコミュニケーションは昔からやってきていたから、ここまで長く続けてこれたんだと思います。

 

「やりたいことをやっていいんだ」と伝えられるブランドへ

 

―現在では石けんやスキンケアアイテムのほか、アパレルや雑貨も取り扱っていますね。

 

そうなんです。石けんを使って肌がきれいになると生活がすごく楽しいじゃないですか。私自身もそうですが、ちょっとおしゃれも楽しみたくなってくる。そんなとき、私たちがいいなと思うものづくりをされている方々をご紹介したい気持ちがあったんですよね。今は1カ月に1回、作家さんやブランドを決めて、そのブランドの背景やコンセプトをしっかり伝えてお客さまにご提案する取り組みをしています。

 

お洋服や靴のときもありますし、他にもうつわや食品のイベントもやったり……石けんがきっかけではありますが、それを中心に暮らしが楽しくなるようなご提案をできたらと思っています。

 

―サボンデシエスタというブランドを今後どのようにしていきたいですか。

 

目標は2つあって、1つは今使ってくださってる方たちの暮らしがより楽しくなるものづくりを今後も続けていくこと。もう1つは、次の世代に何ができるかを考えることですね。たとえば、私が見てきたインターネットの歴史を振り返るだけでも、ここ十数年でかなり変化してきたじゃないですか。これからの時代、暮らしかたも物の考えかたもまた大きく変わっていくはずなんですよね。そんなときに自分で考える力を身につけるお手伝いができればと思ってるんです。

 

―ふむふむ。

 

私自身もやりたいことが見つからなくて、大学院を休学してカフェやギャラリーでアルバイトした経験があって。そこでものづくりをする方たちとのたくさんの出会いがあり、世の中にはいろんな仕事のやり方があるんだと知れました。そんなふうに「やりたいことをやっていいんだよ」と言ってあげられるブランドになりたいなと。たとえば子どもたちが石けん作りの工程を見学に来たり、将来的には畑とかもやりたいねって話もしてるのですが、何か“ものづくり”と“学び”が一緒になった場を作れたらと考えています。またそれをインターネットで発信していけたら、きっとおもしろいことになるんじゃないかなって。

 

―すごく楽しみです……! では最後に、次の世代の子どもたちを含め、これから何かにチャレンジしようとしている人にアドバイスをお願いします。

 

やりたいことがあったら、口に出してどんどんチャレンジするのがいいと思います。結局「失敗」なんてないんですよね。「この方法だとうまくいかないから、別の方法を考えよう」って切り替えればいいだけだと思うので、どんどんチャレンジをしてみてほしいです。今はネットショップにも挑戦しやすい時代ですからね。

 

―今日はすてきなお話をありがとうございました!

 

前編>>>「最初は家で作ってました」札幌の石けん専門店が成功をつかむまでの大苦労

SAVON de SIESTA(サボンデシエスタ)

※この記事は「カラーミーショップ by GMOペパボ株式会社」が運営する「よむよむカラーミー」からの転載記事です。

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