日本ワインの誕生から140年。日本固有種「甲州」の奥深き世界
日本の白ワインは「甲州」と名のつくものが多いのですね。これ、山梨県甲州地方で作られたワインの総称ではなく、日本固有のブドウの品種名で、日本を代表する白ワイン用の品種なのです。でも、じゃあどんなブドウ?と訊かれると、多くの人が詳しく知らないでしょう。実はこの甲州に日本ワイン誕生のルーツがあるのです。
「そこに甲州があったから」日本の白ワインは産声を上げられた
栽培の歴史は古く、平安時代に今の甲州市勝沼地区の岩﨑という村で発見されたという説があるほど。寒暖の気温差が激しい勝沼地区の土壌が栽培に適していたこともあり、ブドウは甲州地方の名産品として全国に知られていました。明治に入った1877年、日本最初の民間ワイン会社が甲州市に創立されたのもこの土壌があってのこと。甲州はずっと食用でしたが、このときからワインの醸造用としても使われることになったのです。
甲州の味は当初から評判が高く、ヨーロッパの有名銘柄に匹敵する上品で繊細な味わいをもっているとされました。が、一方、「おとなしく個性が凡庸」と比喩されることも。そこでワインの開発者たちは、甲州の味をもっとランクアップさせるため、努力に努力を重ねたいのです。
欧州伝来の「シュール・リー」製法が甲州を変えた。さらに多種多様な味わいへ
転機は1980年代でした。メルシャンでは、ヨーロッパでは古くからある「シュール・リー」という、「オリ」とともに長期貯蔵させる製法を甲州に使えないかと試行錯誤を繰り返し、ついに1983年に成功。フレッシュな風味はそのままで、深いうまみが加わり、味が飛躍的にアップしたのです。1985年には、メルシャンが勝沼のワイナリーにその製法を公開し、今や「甲州のシュール・リー」と言えば、甲州の辛口ワインを示す代名詞になり、上質な辛口ワインへと成長しました。
さらに現在では、味わいが異なる甲州ワインが多く生まれています。代表的なワインを紹介しましょう。「シャトー・メルシャン 甲州グリ・ド・グリ」(灰色の中の灰色という意味)は、深い色あいと味わい、「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香」は甲州の中に潜在的に存在した柑橘の香りを最大限に引き出した国際的にも有名なワインです。「シャトー・メルシャン 勝沼甲州」はバランスがよく親しみやすい甲州ワインの代表選手です。
そして今年、日本ワイン誕生140年を記念し、「甲州」の故郷として知られる岩﨑地区から、「シャトー・メルシャン 岩﨑甲州2016」が産まれました。
岩﨑は、ワイン用ブドウの栽培地としては140年ですが、甲州の歴史をひもとくと平安時代から数百年の歴史を持つ名産地です。そこから産まれたワインには、雅やかな香りと奥深い味わい。歴史に思いをはせながら、ひと口ごとじっくりと味わいたいものです。
甲州ワインを気軽に飲み比べするなら直営のバルがおすすめ!
甲州ワインの歴史と魅力がわかったところで、いざワインショップへ! でもまずは様々な甲州ワインを1杯ずつ飲んで比べてみたい、という方には、六本木一丁目にあるワインバル「シャトー・メルシャン トーキョー・ゲスト・バル」がおすすめです。
甲州の4つのワインを飲み比べられるセットがあります。シャトー・メルシャンの直営店ならではのお楽しみ。5月23日からは「初夏のFresh&Shinyフェア」が開催され、発売されたばかりの新ヴィンテージの甲州ワインと旬食材を使ったオリジナルメニューとともに幸せなマリアージュが楽しめます。陽射しが強くなる季節、キリッと冷やした白ワインで女子会もいいですね。
シャトー・メルシャン トーキョー・ゲスト・バル
http://www.chateaumercian.com/places/tgb/
(取材・文/森信千夏)
スポンサーリンク