セカンドキャリアは「何をやっていいかわからない」人が多い【キャリアの棚卸#3】
40代に入り、会社員生活の残りが20年を切りました。ちょっとだけ生活が落ち着いてきた人が次に考えるのが「この先どういうキャリアをどう積んでいくか」。この仕事をこのまま続けていくのか? 他の道を歩んでいくのか?
女性のセカンドキャリア研修を手掛ける株式会社Next Storyの代表、西村美奈子さんにお話しを伺いました。
【何から始めればいい?40歳を過ぎたら考える「キャリアの棚卸」のこと】
セカンドキャリアは「何をやっていいかわからない」人が多い
セカンドキャリア研修生はおよそ3つのタイプに別れます。「やりたいことが決まっている」「やりたい分野がきまっている」「何をやっていいかわからない」。あなたはどのタイプでしょうか。
案外多いのが「何をやっていいかわからない」人です。自分も当てはまるなと感じる人はまず、手あたり次第なんでもやってみるといいんです。ひとまずやってみると好きか嫌いかがわかります。人に話を聞く機会も増えて、やっぱり違うかな?なんて具体的に思い始めたりするんです。
この分野がいいかな?と思って資格の勉強を始めたけれど、やってるうちにこれは違うなと感じたなら、躊躇せずにやめればいいんです。ただ、このとき「この分野ではグロースしないな」という理由だけでやめるのはもったいないなと思います。
というのも、自分の武器って一つじゃ足りないんですね。特定の分野の専門家ってすごくいっぱいいるから、その専門家を目指すのはとても大変なんです。
ですが、できることが複数あるなら、掛け合わせでユニークな存在になっていきます。1つの要素でグロースしなくても、他の要素と組み合わせたときに他の人にできないオリジナルの強みが生まれるんです。
例を挙げましょう。「人の話を聞くのがすごく好きだ」というだけならば、それは単にあなたの特徴です。でも、ここに心理カウンセラー、アロマセラピスト、会計などの分野を掛け合わせることができれば、可能性がぐんと広がります。
ここで登場するのが「キャリア資本」という概念です。ちょっと専門的になりますが、「キャリア資本」はこれまでの経験やスキルなどの「ビジネス資本」、友人や同僚などの人的ネットワークを指す「社会関係資本」、そして貯金などの「経済資本」の3つから構成されています。
特に「ビジネス資本」については、今までの経験が必ず蓄積されています。その資本をどう活かすのか、さらに目標に向けてお金(経済資本)をもう100万円かけるのか? それとも違う分野にかけるか? キャリア資本を配分し、戦略的に費用対効果を考えるんです。
そしてもうひとつ重要なことは、「捨てる」見極めも必要になってくるという点です。この分野には進まないと捨てる基準はシンプル、「本当に嫌なこと」。
意外でしょうか? でも、セカンドキャリアは嫌なことはやらなくていいんです。ただひたらすら、武器の種類を増やしていけばいいんです。
一つの武器で戦いたい場合、たとえば経理一筋30年という経歴ならば戦えますが、そうではない場合、動画に強い経理、教員資格を持つ経理、手話ができる経理と、ユニークなものを追求していく必要があるんです。
自分の武器を増やすと同時に、仲間を増やすこともとても大切
私の周囲には「生涯働き続けたい」という人が大勢います。言われた作業をその通りにこなす仕事ならばさっさとやめたい、でも自分でやりたい仕事をやりたいようにやれるなら楽しいと考えています。やりたい仕事なら、どんどんアイディアが湧いてくるはずです。
自己決定力の高さを重視しているんですね。これでいい。40代前半までならば、まだこれから社内のポジションを築く必要があります。でも、セカンドキャリアはそうではないんです。
実は、会社の悩みのほとんどは人間関係です。一緒に働く仲間たちとの相性さえよければ、大抵の困難は乗り越えられます。
先ほどキャリアを戦略的に考えると言いました。「キャリア資本」の中の「社会関係資本」である人的ネットワークもとても大事です。「自分のやりたいビジネスの専門家を仲間にするのも大切なのですが、いっぽうで、心の安定のために仲間を作ることも同じくらい重要です。いっしょに起業するのではなくても、他のフィールドで頑張る、励ましあえる仲間です。
私もそうして仲間に支えてもらいました。だから、私は自身のキャリア研修の卒業生のコミュニティを運営し、とても大事にしています。そこでは定期的に集える報告会も実施しています。みんなが頑張っているのを聞くと、自分も頑張ろうと思えるから。
たとえば、キャリアコンサルタントになりたいと考えているなら、仲間とグループを作ったり、いろいろな会合に顔を出したりしているうちに、自分の居心地のよい場が見つかります。
逆に、いつも同じ人たちに囲まれ続けていると変化は起き得ません。まったく違う文化のある場所に出入りすることはとても重要です。
もう一つ、自分を顧客に設定して、自分が嫌だったことをなくしていくのも大切です。不便だと感じたことを改善するのも大切です。
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お話/西村美奈子さん
株式会社 Next Story 代表取締役 富士通グループ在職中から「マチュア世代の働く女性のセカンドキャリア」をテーマ に研究に従事。早期退職後、自身の経験と研究をベースに会社設立。昭和女子大現代ビジネス研究所研究員、2級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)
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