会うなりホテルに直行するカレ。私、コーヒーを奢る価値もないのかな【不倫の精算#53】前編

2022.06.03 LOVE

このシリーズの一覧

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

夫の不倫が原因で離婚した私。いま不倫していることを誰にも言えない

Jさんは41歳、数年前に離婚してから今の既婚男性と知り合い、不倫関係にあると聞いていた。

 

こちらが開設しているブログから連絡をくださったJさんは、「同じ市内に住んでいる人だから、会って話ができるかも」と思ったそうで、不倫について今まで誰にも相談したことがないそうだった。

 

どうしてか。

離婚の原因が夫の不倫だったからだ。

 

「夫に不倫されて慰謝料を払わせて離婚した自分が、いま不倫しているなんて絶対知られたくない」

 

Jさんは暗い声でつぶやいていたが、その客観視があるとしても不倫をやめることはできないのだな、と白い筋の入るむき出しの爪を見つめながら考えた。

 

Jさんにはじめて会った日、印象は「疲れているな」だった。

 

メイクはきちんとしているし、着ている服も古びたものではない。が、白髪が飛び出しツヤを失った髪はどうしても目を引き、何ヶ月も美容室に行っていない状態が意思の沈殿を思わせた。

 

メールでは丁寧な言葉遣いでスムーズに会話ができ、正確な氏名や住所など個人情報はいっさい不要、ただ身元がわからないように改変して記事にしますといういつもの承諾を得て、会う約束をした。

 

そして待ち合わせた当日、時間通りにカフェに来てくれたJさんだったが、この「疲れている」の印象は数時間でどんどん変化していくことになる。

 

相手が既婚男性とわかっていても、その関係を始めてしまった

Jさんによると、今の不倫相手とはマッチングアプリで知り合ったそうだ。

 

「独身になってからまったく出会いがなくて、出会い系でもいいかと思って」

 

と軽い気持ちで始めたアプリでは、自分と同じようにバツイチで恋人募集中の男性が多く、「絶対に独身の人とだけやり取りをする」、と決めていたそうだった。

 

容易に嘘がつけるマッチングアプリは、既婚男性が不倫相手を探す場にしていることはインターネットの記事を読んで知っていて、プロフィールに「既婚者お断り」としっかり書いた、とJさんは言う。

 

それでも付き合うのが既婚男性になったことについて、

 

「仕方なかったんですよ、最初に『結婚しているけど、やり取りだけいいかな』って礼儀正しくメッセージをくれて、話すだけならって思うじゃないですか。

結婚している人って、やっぱり落ち着いているというか話をすごい聞いてくれて頼りになるし、独身の男みたいにすぐ会おうとか言わないから、信用しちゃって」

 

と、こちらの質問に早口で返す様子は、「出会い系で知り合った既婚者と不倫している自分」への恥をさっさとやり過ごしたい焦りが感じられた。

 

「……」

 

「話を聞いたらあっちは単身赴任だから奥さんは近くにいないし、バレないなら寝てもいいかな、なんて。

よくあることじゃないですか」

 

ふふ、と無理やり笑顔を作るJさんを見つめながら、

 

「今日は、どんなご相談ですか?」

 

とだけ返した。

 

一瞬白けたように頬を引きつらせたJさんは、

 

「えーと、その、不倫している男の人の気持ちを知りたくて……」

 

と小さな声で言い、視線を下げた。

 

不倫相手がお茶すらせずホテルへ直行するようになった。お金を惜しまれている?

「何かあったのですか?」

 

運ばれてきたアイスカフェオレに手を伸ばしながら言うと、同じようにアイスコーヒーのグラスを引き寄せて

 

「何ていうか、デートなんですけど、前はレストランで食事してからホテルに行っていたのに、最近はホテルへ直行するんですよね。

『どこかでお茶しない?』って言っても時間がないからって断られるばかりで。そんなに忙しいのにやることはやるんだって返したら、この間喧嘩になっちゃって……」

 

と、Jさんはせつなそうに眉根を寄せた。

 

「ああ、お金をかけなくなったってことですね」

「そ、そうです」

 

勢いをつけて袋を破き、ストローをグラスに突き立てるように入れた。

コーヒーの黒い飛沫がテーブルに飛んだ。

 

「私、きっとまずいことを言ったんですよね?」

 

そう言ってからストローを口に含み、上目遣いでこちらを見るJさんの視線を避けながら、

 

「うーん、でもそう思うようなことを向こうはしていますもんね」

 

と、彼女が言われたいだろう言葉を選んだ。

 

「そう、そうなんですよ。

何か、やるためだけに呼び出されることが虚しくなっちゃって」

 

Jさんは声を落とす。

 

「別れたらどうですか?

そんな男と付き合う価値はないでしょう」

 

不倫だし、とあえて結論を口にすると、Jさんの顔色が変わった。

 

 

つづき▶▶私にも「救える女」と「救えない女」がいる。独身女性の未来、どっちだと思う?【不倫の精算#53】後編

 

◆不倫の清算が電子書籍になりました! Kindle Unlimited会員なら無料で読めます!◆

 

 

『不倫の清算』ひろたかおり・著 1200円(10%税込)/主婦の友社 こちらから

*キンドルアンリミテッド会員なら無料でご覧いただけます こちらから

このシリーズの一覧

続きを読む

【編集部からアンケート】 よりよいページづくりのために、
「あなたのこと」をお聞かせください!

▶ご協力くださる方はコチラから

 

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク