
デートなんて何年ぶり?年下男子と2人きりで歩く私に彼は【年下小説・あなわた#7】
【小説・あなたのはじめては、わたしのひさしぶり vol.7】
長い間ひとりで過ごしていた私の部署に、年下の男性が配属されてきた。歓迎会に誘っても「そういうの迷惑なんですよね」と言い放つ、協調性のない若い男の子。
まちあわせ
土曜日。いつも利用している駅の改札に私は向かう。
でも、いつもとは違う。今日は会社は休みだし、私は通勤用の格好ではない。
それに、すぐに改札を通らない。
ここで、高坂くんと、待ち合わせをしているから。
犬カフェがあると知って、一緒に行こうという話に自然となリ、週末の昼過ぎに、こんな風に約束をしている。
男の人と出かけるなんて、本当に、何年ぶりだろう。
なぜだか、足が震えて、うまく歩けなくて、もう、5分遅れていた。
彼は、いた。
改札の脇で、壁に寄りかかって、うつむいてスマートフォンをいじっている。
普段とは違う、ジーンズと紺色のTシャツという、ラフな彼。
私も紺色のスカートに白いトップスを合わせているから、似ている感じなのが気恥ずかしい。
彼の真ん前に、立ち止まる。
でも、どうやらゲームに集中しているらしい彼は、私に気づいてくれない。
なんて、声をかけたらいいんだろう。
しばらく躊躇していると、彼は気配に気づいたのか、顔を上げてくれた。
そして、
「遅いですよ!」
と、笑いかけてきた。
ならんであるく
高坂くんと並んで歩きながら、私はしばらく黙っていた。
こんな時、何を話したらいいのかも、記憶の彼方に行ってしまっていて、わからなかった。
「なんかおとなしいですね」
やがて、高坂くんのほうから、話しかけてきてくれた。
「ちょっと、緊張しちゃって」
「何で緊張してるんですか」
彼はまた笑った。
会社にいる時は笑顔なんてほとんど見せないのに。
休みの日は、こんなにリラックスしたいい顔を見せる人だったんだ。
外は晴れていて、だからなのか、彼の笑顔もすごくまぶしくて、私はまっすぐ彼を見ることができず、少し目線をそらしてしまう。
「だって、ひさしぶりなんだもん、男の人と2人で出かけるなんて」
「え、どのくらいぶりなんですか?」
「何年かぶりだよ」
「そんなに」
彼は驚いている。
「高坂くんは、ひさしぶり?」
「ひさしぶりも何も、初めてですよ」
「えっ……!?」
「彼女いたことないって、言ったじゃないですか」
ふれた手のひら
「女の人と一緒に出かけたこともないの?」
「ないですよ。ずっと男子校だったし、大学も理系だったから女いなかったし」
彼は何でも話してくれる。
私には相当打ち解けてくれているようだ。
とても不思議な気持ちだった。
ひさしぶりに男の人と歩く私と、はじめて女の人と歩く高坂くん。
だけど私たちはデートをしているわけではない。
ただ、犬が好きだから、一緒に犬カフェに向かっているだけ。
「あっ、あれじゃないですか?」
駅から10分ほど歩いたところで、彼が真っ白い建物を指差した。
犬をかたどった看板が下がっている。
「たぶん、そうだね」
そう答えながら、私はどぎまぎしていた。
一瞬だけ、彼と手のひらが触れ合ってしまった。
会社で、書類の受け渡しをする際に、いろいろな人の手に触れてきた。
でも、その時の感触とはまるで違う。
ほんのすこしだけ私よりも体温が低い、男の人の、肌。
それに、反射的に、ときめいてしまっていた。
高坂くんは、私のこんな気持ちにまるで気づかないらしく、
「早く行ってみましょうよ」
と、私をせかしてきた。
そして、
でも、犬カフェでも、私にとってのひさしぶりは、たくさん待ち受けていた。
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