「役職意識」は捨て「役割意識」を持つ。この働き方の違いが説明できますか?

2022.08.11 WORK

私たちは、ものごとを処理したり、仕事を遂行したりするときに、効率的で便利な思考姿勢を選択してしまうことがよくあります。つまり、無自覚に“前提(枠)”を置いたまま、その前提のもとに「どうやるか」でさばき始めるという思考姿勢がそれです。

 

働く現場では、この無自覚に置かれた“前提(枠)”は、あらゆる場面で見られます。自分の立場や役職、上司の意向や先輩が言っ「役職意識」は捨てろ、「役割意識」を持て。この働き方の違いが説明できますか?たこと、さまざまな取り決め、前例などが“枠”になっているからです。

 

日本の会社の「役職」という枠はあなたの限界を設定してしまう

自分の立場や役職は、日本の会社では、当たり前のように“枠”になって思考に制限をもたらしています。しかも、多くの人は、自分の役職が“枠”になって思考を狭くしていることに無自覚です。その狭められた思考が、新たな価値を生み出すことを阻害し、どれほど大きなダメージを日本企業にもたらしているのか、役員を例にとって考えてみましょう。

 

日本の会社の役員はほとんどの場合、担当部署を持っています。「常務取締役」「〇〇事業部 の事業部長」などといった具合です。「この会社におけるあなたの“役割”は何ですか」という問いに対しては、「私は〇〇事業に責任を持っています」という「役職に準拠した答え」が返ってきます。

 

多くの場合、役員の頭の中を占めているのは「○○事業部の責任を持つ」という「役職意識」です。“枠”の範囲で目の前にある従来型の業務をさばくことが、自分の任務のすべてになっているわけです。

 

役員も社員も、各々が役職をまっとうすることで会社は回っていくわけですから、当たり前と言えば当たり前です。と同時に与えられている任務の守備範囲がそれなりにはっきりしている役職は、無自覚な“枠”としても機能しやすいことを忘れてはならないのです。

 

「役職意識」と「役割意識」の違いとは?たった1文字でここまで違う

 

「役職意識」で仕事をしている人には、与えられたタスク(作業課題)に向けての限定的なアンテナしか立っていません。問題なのは、そういう社員の多くが指示待ちになっているので、誰の守備範囲かわかりにくい “三遊間のゴロ”のような仕事を拾う人間が少ないことです。

 

もともと「役割意識」というのは、必ずしも決まった守備範囲(“枠”になりやすいもの)があるわけではありません。「そもそも自分はこの会社で、この部門でどういう役割を果たせばいいのだろう」といった自分がもたらす価値”を考え続ける姿勢を求められるのが「役割意識」です。

 

自分の役割としっかり向き合おうとする「役割意識」を持っている社員は、経営にとってはまさに宝のような人材です。そういう社員が増えることは経営にとっては望むところなのです。当然のことながら、この「役割意識」は、経営を担う役員にこそもっとも強く求められるものだということです。

 

「役割意識を持って働く」。自分が「ロールモデルとして示す」こと

 

役員の“役割”とはそもそも何か。役員という存在を“役割”として捉えるなら、最初に来るのは「全社の経営の責任を負う」という“役割”のはずです。社員が「自分も将来はあんな役員になってみたい」と思えるような役員は、どんな役割を果たしているのか。

 

役員自らが「仕事を通してどのような自己実現をめざしているのか」という原点に戻る姿勢を持ち、「問い直し」を重ねることで、役員が持つ役割の範囲や深みも違ってきます。

 

つまり、「役員自らも自己実現に向けて努力をしている」という意味で、役員がモデルであることが求められているのです。したがって、役員であり続けることのハードルは間違いなく上がっていきます。「役割意識を持って働く」というのは、そういうことでもあるのです。

 

役割を意識し、役員としてのミッションをしっかり考え抜いた上で、その役割の一部を明確にした「〇〇事業部長」などの責務を果たすことになれば、単なる「役職意識」とは本質的に違う「役割意識」を持って仕事をする、ということです。

 

北海道にあるトヨタ系の自動車販売会社では、今までのオーナー経営から、役員・社員持株会中心の自主経営へと経営の在り方の大転換を果たしました。自主経営に込められた意味は、「役割意識」が役員全体に浸透することを大前提に、大変革を本気で遂げようということです。単なる「役職意識」での経営だとサラリーマン経営になって間違いなく失敗するからです。

 

役員が持つ強い「役職意識」にゆさぶりをかけるための議論を開始し、その半年後、積み重ねた議論から見えてきたのが、「『志を持つ人がその志を実現できうるようなプラットフォームを創る』のが会社の使命」という会社の姿勢の必要性でした。

 

「志を持つ人がその志を実現できうるようなプラットフォームを創る」という明確なミッションが掲げられているため、「役員が役員でなければ果たせない役割」という“役割”が見えてきたのです。新たなビジネスモデルの構築が必須となっているからこそ、広い視野に基づいた「役割意識」が必要だということです。

 

■文/柴田昌治

株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。1979年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。大学院在学中にドイツ語学院を起業した後、ビジネス教育の会社を設立。80年代後半から組織風土・体質改革の支援に本格的に取り組む。社員が主体的に協力し合っていきいきと働ける会社にしたい、という社長の思いがスピーディに組織の隅々まで伝わる会社づくりをめざしサポートを続ける。2009年にシンガポールに会社を設立、対話によるチームづくりを通じて日本企業のグローバル化を支援している。

著書に『なぜ会社は変われないのか』『なんとか会社を変えてやろう』『トヨタ式最強の経営(共著)』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか』(以上、日本済新聞出版社)など多数。

 

 

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