バレエに挫折した少女がポールダンスで「世界をとる」意気込みを取り戻すまでの紆余曲折

2022.10.28 WORK

しなやかでスキニーなスタイルは一目瞭然。ダンスで鍛えられた筋肉が美しく芸術品のようなAikoさん、42歳。バレエとポールダンスのインストラクターとして、スタジオで教えるいっぽう、アパレル商社でPRとしても勤務する大人の女性。そして家へ帰れば小学生のママという3つの顔を持つ。

ポールダンスに魅せられたきっかけ、ママとなってもダンスを続け、ファッションの仕事と両立させているライフスタイルについて語ってもらった。

【新しすぎる働き方図鑑#3】前編

 

幼少の頃からバレエを続け、プロのダンサーを目指す。しかし世界の壁は高かった

中学、高校と一貫校の女子校で過ごしたAikoさん。毎日学校の勉強とバレエ教室を往復するような生活を送っていた。

 

「そのころはギャル時代のはしりで、周りの女子高生は、ルーズソックスでポケベル持って、放課後はカラオケ行ったり、プリクラ撮って遊んだり。みんなが楽しそうに学生生活を謳歌しているなか、私の場合は、学校の授業のあとは、夜までダンスのレッスンで終わる1日でした」

 

プロを目指していたAikoさんはみんなの様子を横目で見ながらも頑張るが、海外のダンス専門学校の入学試験に合格できず、プロダンサーになるのは難しいと挫折。親に慰められながら大学を受験し、無事入学後はこれまでの人生とは全く違う自由なキャンパスライフがはじまったという。

 

「何しろはじめての共学ですから、男の子と一緒にキャンパスを歩くのが初体験で新鮮でしたね。アルバイトをはじめて、自分で稼いだお金で海外旅行に行ったり、テニスサークルに入ったり。ダンス一色だった生活から、自分の時間を好きに使えるようになって、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。絵に描いたように“女子大生”をエンジョイしていました(笑)」

 

大学3年生で就職活動を始めるが、当時はちょうど就職氷河期時代の真っ只中。契約社員、派遣社員の雇用が法律で認められたタイミングだったため、なかなか内定が決まらなかった。就職先が決まらないためにAikoさんは一度就職活動をストップして、いまの自分と向き合い、これまでの人生について考えはじめた。

 

「自分が何をしたいかと本気で考えたんです。自分が今まで何をやってきたのか、自分の人生を振り返って、正直な気持ちになって自分の強みを整理してみたんです。大学に入るまではずっとバレエに人生を捧げてきたので、自分にとっての4年間の大学生活は “自分のための時間”と決めたことを思い出したんですね。その後は、包み隠さず、大学時代は遊びまくってきたと就職試験で正直に言うことにしました(笑)。それでようやく受かった会社が、アパレル、ファッション関係だったんです」

 

就職、充実のアフター5をエンジョイするいっぽうで「虚無感」にも襲われ始めた

 

入社した会社は、ライセンスブランドのバッグを製造・販売するメーカー。そこでAikoさんは営業職に配属される。社内にはデザイナーも在籍していた。大学で美術を学んできたデザイナーたちとの交流は、Aikoさんにとって異色の世界で新鮮に感じていた。

 

「同期の社員が全員女性だったので、毎週末のアフター5は、自分たちで合コンを開催して遊んでました(笑)。社内のデザイナーたちが独特で、これまでの赤文字系のいわゆる女子大生風の友人たちとは感性が全然違ったので、私にとって新鮮で斬新に感じて楽しかったんです。そのうち仕事以外でも関わるようになって」

新しく遊ぶ仲間が増えて、仕事にもやりがいを感じ、充実した日々が過ぎて行った。ところがAikoさんはこれまで感じたことのない“虚無感”のようなものを感じるようになる。

 

「体がなまっている感じがしたんです。どうしようもなく体を動かしたいって思ったんですよね。就職してからは、ヨガをやったり、バレエのレッスンを再開したり、ときどき気分転換の運動をしていたんですが、なんだか物足りないというか……」

 

そんなある日の週末、クラブに遊びにいくとポールダンスをやっているカッコいい女性を見て経験したことのない衝撃を受ける。感動のあまりすぐに「これだ。これをやってみよう」と強く心がうなずいた。

 

ポールダンスをスタートするが「身体が動かない」現実に直面する

「さっそく調べてポールスタジオを見つけてすぐに行ってみました。体験レッスンを受けてみてびっくりしたのは、まったくできないんです。幼少からのバレエの経験から、ダンスの体の動かし方には慣れていたはずなのに、思うように体が動かない」

 

ちょうど同じころ、Aikoさんは彼氏と同棲するようになっていたのだが、生活のリズムが合わないことやすれ違いが多く、ケンカが絶えずにギクシャクしていた。プライベートがそんな状況のなかでポールダンスに出会い、Aikoさんは火がついたようにポールダンスに夢中になっていった。

 

「ダンスの技ができないことがくやしくて仕方ありませんでした。ただレッスンに通い続けることだけを考えて、家から一番近いスタジオを選んで夢中になりました。26歳ぐらいのときです」

 

ポールダンスの技がひとつできるようになると嬉しくて、どんどん楽しくなっていく。もっとうまくなりたいと練習に熱中する。そのうち、バレエの経験を活かせば、自分だけのポールダンスができると考えるようになり、ますます熱が入った。こうしてポールダンスに魅せられて、スタジオ通いが続く。いつの間にかポールダンスの練習がライフワークのひとつになっていった。

 

仕事をしながらポールダンスに夢中になっているAikoさんの姿をみていた彼氏も、いつの間にAikoさんを応援するようになったという。そして1年が過ぎたころ、ダンスをお披露目する発表会が行われることに。

 

「ダンスの曲も衣装も全部、自分で決めて披露する初めての機会だったので、友達もたくさん見に来てくれました。そのなかの友人の男性2人が、私のポールダンスを見て、楽しそうだから自分たちもはじめたいって言い出して。その後2人もレッスンスタジオに通うようになったんです」

 

転機は「イベント」にあった。一段階先へ進むきっかけは

 

当時は、ポールダンスのスタジオは女性専用が多かった。そのため男子は別のスタジオでレッスンを受けるようにそして半年後にはチームを組んで、イベントをやろうと目標と決めたのである。

 

「仲間でよく通っていたバーのクリスマスパーティーで、はじめて男女混合チームのポールダンスを披露したんです。それが予想以上に盛り上がって好評でした。たまたまその場にいたイベントのプロデューサーからイベントで踊ってみないかとオファーをいただいて」

そのイベントは『アメリカズ・ゴット・タレント』というアメリカTVの公開オーディション番組を模倣したもので、素人がダンスの技を披露して、来場者投票で優勝すると賞金がもらえるというものだった。

 

「ポールダンスはトップレスとか、露出の多い衣装で踊るセクシーなイメージですが、私たちはファッション業界出身のメンバーが多かったので、あえておしゃれで露出の少ない衣装を着て、まだ珍しかったメンズとのペア技やチームみんなで踊るテクニックを披露したんです」

 

Aikoさんたちのダンスは圧倒的に注目度が高く、イベントの来場者投票で優勝した。その後はイベントに毎月レギュラー出演するようになり、ポールダンスのチームとして噂が広がりますます評判になっていった。デザイナーの友人にイベントで着る衣装を担当してもらうことになり、ショーのクオリティも本格的に磨かれていった。

 

▶【この記事の後編】ムダになる挫折なんてこの世にひとつもない。何歳からだって人生は好転する

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この記事を書いたのは
フリーライター うらがみゆう

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