更年期の51歳、20㎏太ってしまった。更年期の不調を訴える友人にはアドバイスをせず、ただ共感してあげてください

オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)

前編『「毎朝、大しけの船底で目覚めるようなめまい」コロナ禍だからこそ失業をまぬがれた52歳の「壮絶な更年期」』に続く後編です。

【100人の更年期#87】後編

リカコさん

52歳、高校生の長男、保護ねこと都内で暮らしている。ベンチャー企業を経て30代前半から大手金融関連企業に勤務、データ分析業務に就いてる。趣味はお料理、自転車、旅行。

 

更年期もう一つの悩み「容姿が変わってしまう」辛さは筆舌に尽くしがたい

「在宅勤務にも慣れていき、夏を過ぎると人と話さないのが寂しいなと強く感じるようになりました。最初のころは息子が家にいて、一緒にラジオ体操をしたり、暮らしを楽しむ工夫をしていましたが、通勤がなくなって運動量が減ったせいでしょうね、徐々に太り始めてしまって。私は橋本病も持っているようで、太る方向に働くんです。人と話せないストレスは食べる方向にも向いて、半年ちょっとの間で20㎏太り、あっという間に洋服が入らなくなってしまいました」

 

コロナ禍で同じ経験をした人も多いと思います。急激な体重増に見舞われると、誰しも気が滅入るもの。よけいに外出がおっくうになり、いっそう運動量が減るという悪循環にいとも簡単に突入してしまいます。

 

「これは最近の話なんですが、小料理屋さんで大将に『自転車に乗るのが好きで』って話したら『あの細い自転車に乗るんですか?』っていじられました。そのあともしつこく容姿のことでからまれて、ショックで『コロナで太っちゃったんですよ』って返すのが精いっぱいで。でも、元気なころの私なら平気で言い返していましたから、一緒にいた人たちも私が涙目になっているのを見て急に慌てちゃって。いたたまれなくなってすっと立って帰ってきちゃいました」

 

これだけ太ったのは人生ではじめて、これまで容姿をこんなふうにいじられたこともなかったリカコさん。たまたまプラスサイズで暮らしている人ならば日常的にこんな目に合うのだという事実を体験して、いたたまれない気持ちになったそうです。

 

「更年期に限らず、気持ちが弱っている人は何を言われても全く言い返せず、ただ泣いて帰るしかない。こういう気持ちを私はこれまでぜんぜん理解していませんでした。それどころか下手をすれば『泣いて帰らないで言い返せばいいじゃん』なんて配慮のないことを言ったかもしれません。更年期障害がここまで悪化したからこそこういうことに気づけたんだ、そう思えば人生は万事塞翁が馬なのかもしれません」

 

30代に入ったら「自分が倒れてもつきあってくれる会社か」は一つの職選びボーダーなのかも

こんな状況でも寄り添ってくれた勤務先の会社には感謝しかないとリカコさんは言います。

 

「不調があるなら休めばいい、健康になって戻ってきてと言ってくれる環境です。私は30代前半でベンチャーからここに転職してきましたが、本当に運がよかったとしか言いようがない。若いうちは激務であろうとチャンスがいっぱい掴めるベンチャーの環境が楽しかったけれど、やっぱり女性は思わぬ身体の変化に見舞われることもあるから、ずっと無理をする仕事は難しいのかもって感じました」

 

しかし、よい組織に恵まれたとしても、最後は自分の周囲の人たちとのコミュニケーションがものを言います。日頃から自分の健康面のトラブルを上司に丁寧に話し、理解を得ておくことも大切だとリカコさん。更年期障害で3週間のお休みをとったときもよく相談に乗ってもらった上で、部署のメンバーには心配をかけないよう「体調のことでお休みに入ります」というマイルドなアナウンスにとどめてもらったそうです。

 

「あとから気づきましたが、私たちの部署はみんな生理休暇をよく取ります。これは休みやすさにつながっているのかも。ですから、生理休暇をみんなが取れているかどうかは会社の方針を知る大きなポイントかもしれません。不調が続く日々、有休残日数を気にせず休める日が月に1日あるだけでも精神的な余裕はかなり違いますし」

 

お友達の更年期の不調にはアドバイスをせず「ただ傾聴すること」で寄り添ってあげてください

最近のリカコさんは「自分はすごく大変だったんだなと自分自身で思ってあげるだけでもかなり体調が違うのではないか」と感じるそうです。

 

「倒れ伏している間は本人もリカバーしようとじたばたするけれど、船にどかんと大穴が空いている状態ですから、そのまま漕いでいても船は沈んでいってしまいます。周囲から見てみっともない自分になりたくないという気持ちはやっぱりあるので『大変なことなんてなかったポーズ』をとりがちですが、それではなかなか復活しないことを実感しました。客観的に自分を見て、辛かった自分を認め、いたわってあげるのが回復の第一歩だと感じます。私、自分だけはこういう症状にならないと思ってたけど、なってしまいましたし、そこをまずは認めようと」

 

現在は1年前からスタートした漢方薬の補中益気湯のほか、特に週に2回のプラセンタ注射がよく効き、ゆっくりと健康を回復しつつあるというリカコさん。

 

「更年期に慣れてきたなと思うのは、不調のリズムがわかるようになってきた点。私の場合、雨の日は具合が悪くなるから無理をしないようにします。休めるならば仕事も休んで寝てしまう。最近はめまいの出る予兆もわかるようになったので、これはちょっとまずいと予感がしたらすぐ横になります。早く横になれば10分20分で復活するので、ちょっと早めのお昼休憩みたいな感じです」

 

気持ちはじょうずに吐き出して、このストレスと付き合っていく

リカコさんがよく使うサービスに、SNS上の「叫びの壺」のような場所があります。誰もが匿名でそこへやってきては、辛い気持ちをただ吐き出していくそうです。誰かの気持ちを否定しない、攻撃しない、また発言する側も死を連想することは書かないなどのルールがあるそう。

 

「気持ちを吐き出すことは結構重要だなって思います。更年期障害って、症状がそこまでひどくない人ならばよく自分の体験を話してくれるのですが、私みたいに重い人はもう口にしたくないんです。どうせ理解してもらえないし、自分自身も辛い辛いって口にすることで余計に辛くなってしまう。気のせいでしょとか、運動すればとか、うっすいアドバイスをされると長年の友人でも縁を切りたいくらいガッカリしてしまうし。吐き出したい気持ちと、もう話したくない気持ちが両方あるんです」

 

だからこそ、周囲に更年期で倒れている人がいたら、アドバイスをしようとせず、ただ辛いね、大変だねと共感して聞いてあげてくださいとリカコさん。

 

ところで、更年期がこんなに大変になるって予期していましたか?

 

「まさか! みんな、まさか自分が更年期障害になるなんて?と思ってますよね。私もそう思ってました。私は3人姉妹ですが、母含めて4人の女性の中で酷いのは私だけ。妹なんて47歳で何のトラブルもなくすっと閉経しましたし、私も生理痛やPMSはまったくないまま規則正しく生理がきていたので、こんなことになるなんて予想もしなかった。メンタルだってむしろ強い人だったので、誰にでもこのような可能性はあるということです。まだプレ更年期の皆さん、他人事だと思わず備えてください!」

 

▶【前編】『「毎朝、大しけの船底で目覚めるようなめまい」コロナ禍だからこそ失業をまぬがれた52歳の「壮絶な更年期」

 

 

 

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