「教えて」って敬語でどう言うの?40代でも意外と知らない敬語表現
「なにとぞご教授ください」と言われ、「うわー『ご教授』だって。たかがパソコンソフトの使い方なのに、おおげさねぇ。でも、そうね、他に言葉がないのだから仕方がないわ。さらっと受け流してお返事しよう」
そんなふうに思ったことはありませんか?
または逆に「教えてください」の適切な敬語表現が分からず、適当に「ご教授ください」なんて言っていませんか?
「教える」には3つの段階があります。そして、それぞれ敬語表現が違います。このような観点で分けている人はあまりいないと思いますが、便利なので紹介しますね。
【教える】
1.相手の知らない知識、技術を分かりやすく説明し、それが身につくようにしてやる。
2.相手の知らない情報を提供する。
3.相手が十分に認識していない事について、本当はこう考えるべきものだ、こういうことを言ったものだ、こういう事情などだと説明し、知覚・認識を高めてやる。(新明解国語辞典より)
辞書にはこのように3つの意味があると書かれていますが、この3つを2→1→3と並べ替えて考察すると、教えてもらうことの段階によって、敬語が分かれていることが分かります。簡単にお話ししますね。
段階1 「教えてくださいませんか」
→ 相手の知らない情報を提供する
これは、道を教える、スケジュールの空いている日を教えるなどの「教える」の場合です。この場合の敬語表現は「教えてください」です。「ください」が付くことで立派な敬語となります。しかし、相手が目上の人の場合や、立場が上の取引先の人などに対しては、敬語として弱い感じがしますよね。その場合には、どう言いかえたら良いでしょうか?
「お教えください」が基本形ですが、今度は固すぎる印象があります。そこで、敬語の常套手段「疑問形」で解決。
- お教えくださいませんか。
- お教えいただけませんか。
- お教え願えませんか。
また「お教え」を「教えて」に直すのもOK
- 教えてくださいませんか。
- 教えていただけませんか。
段階2 「ご教示ください」
→ 相手の知らない知識、技術を分かりやすく説明し、それが身につくようにしてやる
実は、ビジネスの世界では、このレベルの話が一番多いと思います。後輩の面倒をみる、新しい機器の使い方を教える、それこそ「敬語の使い方を指導する」なんていうのもこのレベルです。
このレベルの場合、「教えてください」の敬語は「ご教示下さい」です。
【教示】
具体的にどうしたらいいかを教えること。
・ご教示下さい(願いたい)などの形で、相手に教えを乞うときの言葉として用いられる。
(新明解国語辞典より)
具体的な使い方としては
- ご教示ください。
- ご教示いただきたいと存じます。
- ご教示お願い申し上げます。
などですね。
それぞれの疑問形で
- ご教示くださいませんか。
- ご教示いただけませんか。
- ご教示願えませんか。
もOK。
具体的な場面での使い方としては
- この企画の予算について、提案をご教示くださいませんか。
- 新しいプロジェクトのメンバーに、〇〇さんを加えることについて、考えをご教示下さい。
- このソフトは全く使ったことがありません。お手すきの時にご教示願えませんか?
などがあります。
「ご教授」と「ご教示」は音も似ているので、聞いた限りでは区別が付きません。そのせいでしょうか、私が文章で目にするのは「ご教授」が多い気がします。「ご教授」はもう少しレベルが違います。
段階3 「ご教授ください」
→ 相手が十分に認識していない事について、本当はこう考えるべきものだ、こういうことを言ったものだ、こういう事情などだと説明し、知覚・認識を高めてやる
これは、もう少し深いことがらについて指導をあおぐ、という場合に使うと良いでしょう。講演や講話を聞いて、非常に感銘を受けた、そんな方と知り合い、これからもお付き合いをお願いする、そういう場合にも使います。
「教示」が「伝えて終わり」の短いスパンであるのに対し、「教授」はもう少し長い期間お世話になることをイメージすると良いでしょう。
よく、結婚式や成人式などの挨拶で「これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。」と言いますよね? その「ご指導」「ご鞭撻」に近い長さです。
ただし、「ご指導」「ご鞭撻」そしてもう一つ似た言葉の「ご指南」にはそれぞれまた細かい意味の違いがあります。
- 指導……直接指示を下し、説明を加えたり、質問に答えたりしながら教えること
- 鞭撻……しっかりやれと励ますこと
- 指南……その道の基礎・基本からの手ほどきをすること
特に、40代以降は、場面によって言葉に厳しい人と同席する場合もあるでしょうから、頭の中で整理しておくとよいでしょう。
このように「教えてください」と言っても様々な言い方があります。教えてもらう内容のレベルや、期間によって、3つの段階があり、ビジネスシーンで一番無難なのが「ご教示」だということを覚えておくと便利です。
そして最も大切なことは「教えを乞う姿勢」です。謙虚さは言葉の端々に出ます。「ご教授ください」などと最上級の敬語を書いておきながら、こちらの話に耳を傾けないような人も多いのが現状です。小学生の「先生、ここを教えてください」の言葉の方がよっぽど素敵だと感じる時もあるくらいですから。
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