戦慄しかない…これがモラハラ夫が繰り出す「追い詰め」キーワードの現実。どうすればいいのか?

2023.04.12 WORK

夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。働く女性を視野に入れた「モラハラの現実」の連載をお届けします。

 

経済的自由度のある働く女性たちでも、やっぱり「この程度のことで離婚なんて」と対策を打てない傾向があります。愛はなくても情はある、というケースもあります。「自分も同じ体験をしているかも」と気づいた方が次にアクションを起こす手助けになれるようにと願っています。

 

前編『「あんたはもう生きる価値がないから死んで」新婚26歳女性が意味のわからないまま襲われたモラハラ夫の凶行』に続く後編です。

 

あり得ないレベルの無視が続いたのち、ころっと元の「素敵な旦那さま」に戻った

夫が帰宅し、「お帰りなさい」と声をかけても無視。「夕食あなたの好きなものばかり作ったの」とテーブルを指さしても無視。そればかりか、夫は「何にも食べるのものない家だ」と言い、一人でカップヌードルにお湯を注ぎ始めます。

 

もしかしてテーブルの上の食事に気づいてないのかな?と、「今日の夕食は本当に時間かけて作ったの。一口でいいから食べてみて」と懇願してみますが、それでも夫は無視を続けます。やがてカップヌードルを食べ終わり、さっさと自分の部屋に戻っていきました。

 

生まれてから今までこんな対応を人にされた経験は一度たりともない。何故こんな仕打ちをされないといけないのか。Aさんは悲しさと恐怖と悔しさの入り混じった気持ちに襲われ、泣き崩れました。

 

「でも、夫を恨んだり、夫を責める気持ちは不思議と起きませんでした。むしろ、ここまで夫を怒らせた自分が悪いと思い込んでしまって。だって、結婚前は本当に優しい人でした。それなのに結婚してから夫が変わったのは、きっと私が夫の理想の妻でいられなかったせいだなって。夫を怒らせてしまった私が全ていけない、そんな考えができあがっていたからです」

 

翌朝、夫は何もなかったように「おはよう」と明るく声をかけてきました。驚きよりも喜びの気持ちの方が強く、Aさんも「おはよう」と元気に返事をしました。

 

前日までのことは、何もなかったように優しい夫。一体何が夫の中に起きたのか見当もつきません。でもまた余計なことを言って怒らせることが怖いので、そこには触れずに普通に朝食を一緒に食べ、夫を送り出しました。

 

自分の休暇も終わり、仕事に戻ったこともあり、新婚旅行の事もあの無視をされた時のことを改めて考える事もなく、ごく普通に幸せな新婚生活を送っていました。

 

モラ男は不思議と「音」で怒りを伝える。A家の場合は、ドアの開閉音と足音でした

そしてある時、また突如として夫の豹変が起きました。

 

「その日は、帰宅した時にドアを閉める音がバタンという大きく響いて、その音にとっても驚きました。『お帰りなさい』と声をかけても返答がなく、ドカドカと大きな足音からイライラが伝わる歩き方で夫は自分の部屋に入って行きます。私は、夫がまた怒っている、どうしよう、と不安でいっぱいになり鼓動が早くなっていきましたが、平静を保ったふりをして『ご飯食べる?』と声をかけました」

 

リビングに向かってくる足音から怒りが伝わってきます。そしていきなり「だからお前はバカなんだ!」と怒鳴る夫。Aさんはどうしていいのか分からずに「ごめんなさい」としか言えません。

 

「謝ればいいと思っているのか! いつも適当な家事しかしないくせに、夕食なんて偉そうに言うな!」

「私も仕事しているからそこまで時間がないの。でも頑張っているの。」

「は? 頑張っている? そう言えばいいと思っているのか? 俺より稼いでから仕事しているって言え、たいした仕事じゃないくせに偉そうに。あんたの親はよくあんたみたいなのを育てたよね」

 

ここまで言われてしまい、Aさんは泣きながら言い返しました。

「私のことはいいけど、両親の悪口は言わないで」。

しかし、夫はAさんの涙を見たことで余計に饒舌になりました。

 

「娘もろくに育てられない親なんて親って言えないね」

 

もう言い返す気力もありません。言い返すと百倍になって返ってくるのはなんとなくわかりました。それからも月に1、2回ペースで夫の態度は豹変し、Aさんに対して罵声、暴言、人格否定を浴びせます。そして翌日、または数日後には何事もなかったかのように普通に接してくるのです。

 

「ある時は『あんたはもう生きる価値がないから死んで』と言われました。そして、追い討ちをかけるように『でもあんたが死んでも悲しむ人はこの世にいないから』とまで言われました。本当に死んでしまいたいと思いましたが、その翌日はまた優しい夫に戻るのです。そのたびに、夫はわかってくれた、やっと優しい人になってくれたと信じてホッとするのですが、すぐにまたあの豹変が起こるのです。天国から地獄へ突き落とされる繰り返しで、やがて夜も眠れなくなって、食欲も落ちて痩せ始めて。自分でも心が壊れていくのがわかりました」

 

この段階で、さすがにAさんも気づきます。この人はおかしい。この態度はいったい何なんだろう? ネットで調べたところ、どうやらこれは「モラルハラスメント」だということがわかりました。

 

「夫の機嫌が突然豹変すること、怒り出したら手がつけられなくなること、何を言っても無駄なこと、これらは全てモラルハラスメントだと納得できました。そもそも夫の機嫌は夫自身がコントロールすべきものであり、妻の責任ではない。でも、こうしてモラハラだとわかっても、対応法を考えることもできず、離婚する勇気も持てずにいます。というのも、一度『離婚したい』と夫に言ったとき、夫はとても優しい夫に戻り、『もう絶対に君を悲しませないから』と約束してくれたのです。すぐにまたモラハラは起きましたが、優しい夫にいつか戻ってくれると、まだ心のどこかで信じているのです」

 

夫の機嫌は夫が自分でとるべきもの。妻は絶対悪くない、そんな男からは逃げていい

このAさんは、モラハラ夫の言葉と態度で心が壊れかけているにもかかわらず、「夫が優しい人に戻ってくれる」という気持ちを捨てきれずに離婚を選べません。現在まだカウンセリングを続けていますが、次の決断チャンスは子どもを産むか産まないかを考える瞬間に訪れるでしょう。

 

この夫が改心する可能性はほぼゼロです。先々、身体へのDVや、生活費を渡さない経済DVなどが起きるのであれば、残念ながら逃げるが勝ちです。ですが、暴言にとどまる場合で、もし耐えられる範囲にパターン化が起きて、そのこと自体をAさんが割り切れる場合に限っては、「こういう夫だから」と自分の心に折り合いをつけて共存していくことも、お勧めはしないものの不可能ではありません。

 

私は、そうした「関係維持を望む女性たち」に対して自分の経験を元にした「モラ夫操縦法」の伝授も行っており、実際に私のカウンセリングとの二人三脚で20年近く夫婦関係を維持しているお客様もいらっしゃいます。ただし、それはとても特別な例。また、Aさんのような極端な話でなくとも、あなたが日頃傷ついたり、悩んだりしている夫の言動はモラハラかもしれません。

 

あなたの人生はあなたのもの、あなたが選択していいのです。理不尽なモラハラで悩んでいる方、あなたは絶対に悪くありません。どうぞ声を上げて、専門カウンセラーに相談してみてください。私のようなフリーのカウンセラーも皆、お力添えになるようにがんばる人たちですし、また自治体の女性相談窓口にも専門家がいます。自治体名+モラハラ+相談で検索してみてください。

 

▶【前編】『「あんたはもう生きる価値がないから死んで」新婚26歳女性が意味のわからないまま襲われたモラハラ夫の凶行

 

■取材・文/麻野祐香

モラハラ/HSP専門カウンセラー。モラハラで悩む方の心を守ることを使命とし、カウンセリングとTikTokライブでモラハラとHSPで悩む方のサポートを続けている。モラハラと夫は別れるべきと勧められることが多い中、離婚をしたくても事情があって別れられない人々の為に、モラハラ夫からの自分の心の守り方を発信。https://www.be-nect.com/general-8

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