もう、一生セックスしないのかも…。【40代、50代の性のリアル】#1(前編)
恋愛は、遠い世界の出来事
当時の写真を見せてもらった。細い身体はこんがりと焼け、無邪気な笑顔は思春期の屈託とは無縁に見える。思春期にさしかかると、友だち同士で少女漫画を貸し借りすることも増えてきた。主人公の恋愛にドキドキはしても、自分とは違う世界のことしか受け止められなかった。恋愛なんて自分とは関係ない。
中学に上がれば現実に男女交際するクラスメイトが出てくるが、ミナエさんはこれまでどおりスポーツに励み、男子生徒ともよく遊んでいた。彼らから“女の子”として扱われることはなかったという。
「私の恋愛観やセックスについての考え方って、思春期のころで止まっているのかな。好きな人ができたら、手をつなぎたいとは思います。男性と女性とのあいだで起きる接触で、それが一番キュンとするから。それ以上を求められても拒否はしないし経験もあるけど……私にとっては手をぎゅっとされるのが恋愛のクライマックスで、キスもそんなにしなくていい。すごく少女漫画的ですよね。いまどきの中高生のほうがもっとオトナかも」
自分の「キャラ」を裏切れない
それでも、大学生になって初めての彼氏ができた。初体験の相手も、その男性。したいわけではなかったが、「そういうものだ」という思いもあった。いざその場になると、日ごろの“快活なサバサバキャラ”を崩すことができず戸惑いを覚えた。
「こういうキャラを期待されているんだろうと感じると、そう振る舞ってしまうんです。これは、いまでも変わりません。20代のときつき合った彼も、風俗店に行ったことを平気で私に話してくるんですよ。彼氏彼女になる前からそういう話を聞いていて、私がそれに対して好奇心からアレコレ訊いたからだと思うんですが……でも、それも“ミナエはこういう話を面白がるキャラだ”と思われているのを感じたからなんですね。本音ではイヤだったけど、いえなかった。結局彼は『僕のことそんなに好きじゃないでしょ』といって去っていきました。そりゃそうですよね、彼の気持ちもわかります」
その後も性的な物事とは距離を置いてきたミナエさんだが、お話を聞いていても「セックスから逃げている」とは感じない。むしろ、その距離感を主体的に選んできたように見える。
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