世界情勢不安の中「多様性のありかたをわが子にどう教える?」私たちの手で日本をよくするには

2024.01.05 WORK

「どうして戦争が起きるの?どうすれば止められるの?」

もしも誰かに、特に子どもにこう聞かれたとき、あなたならはどう答えますか?

たくさん考え得るその答えのうちの1つは、きっとこんな感じなのではないでしょうか。「お互いの多様性を認め合うことができる社会を作ることで、きっと止められるようになるよ」。

ですが、その「多様性(ダイバーシティ)」のある社会を作り、維持するために、私たちはいまこの瞬間何を始めればいいのでしょう?

経済の第一線から専門の異なる女性3名をお招きし、ご自身のフィールドから見えている「ダイバーシティのつくりかた」を伺いました。

 

【お話しいただいたのは】

経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長

相馬知子さん

 

三菱UFJフィナンシャル・グループ グループ・チーフ・サスティナビリティ・オフィサー(CSuO)

銭谷美幸さん

 

三菱UFJフィナンシャル・グループ 人事部部長 兼 ダイバーシティ推進室室長

上場庸江さん

 

最初の一歩は、「自分の中にもバイアスがあること」を認めること

――銭谷さんと上場さんは三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)で、相馬さんは経済産業省で、女性活躍推進を含む領域でそれぞれ活躍されています。女性管理職として第一線で働く一方で、皆さん育児もご経験されています。お子さんと接するときに「多様性(ダイバーシティ)」をどう教えてきましたか?

 

銭谷さん 私の子どもはもう成人を過ぎているので、過去のことを思い出してお話ししますね。

 

まず私は「自分の中にもバイアスが存在する」ことを認めるところから始めました。偏見や差別をするのはよくないと頭では理解しているつもりでも、無意識にしてしまっているかもしれない。まずはそれを認めました。

 

それを踏まえて、子どもに何か私の意見を伝えるときには「お母さんはこう思うけど、考え方はひとつじゃない。他にもいろいろな考え方がある、あなたはどう思う?」と話すことを注意して心がけました。

 

あとは、百聞は一見にしかずの言葉通り、実際に経験することを大事にしたかったので、様々な場に実際に連れて行くことや、旅行に出かけました。海外旅行の場合は先進国以外にも行きました。

 

――すでに成人なさっているというと、小学生は15年ほど前でしょうか。当時からすでに、子どもを親の所有物として扱うことなく、一人の人格として尊重してきたということですよね。

 

銭谷さん はい。たとえば子どもが大きくなった時に「これまで知っている様な場所とは異なる地域で働きたい」と言ってきたとします。親としてはもちろん心配ですが、あくまで子どもは別人格。子どもの考えを尊重するように心がけました。そして「あなたが選ぶことに反対はしない。けれどあなたのことを大切に思っている」ということは必ず伝えてきました。

 

とはいえ、これはなかなか実践が難しいことで、親の側は強い自制心を問われます。想定外のことが起これば、もっと親として強く言うべきだったのでは?と悩んだことも多くあります。 「個性の尊重」はわかっていても、そう簡単に割り切れる話ではありません。

 

いっぽうで、実際に子どもが大きくなると、子どもから学ぶことも多くあります。特にデジタル系のアプリや若い世代の行動や思考方法など、さまざまなことを子どもから学び、気づかされることが多くあります。

 

多様性は「個人の内側」にも広がっていることを知ってほしい

――MUFGでダイバーシティ推進に取り組んでいる上場さんはいかがですか。

 

上場さん 私には16歳と10歳になる子どもがいます。「ダイバーシティ」と聞くと、性別、国籍、年齢といった属性の違いによる多様性を想起する人が多いと思いますが、「見えるダイバーシティ」だけでなく「見えないダイバーシティ」もありますし、さらには「ひとりの中に多様性を備える」ことも大事だと言われています。

 

ものの見方や考え方、理解の仕方、判断・決断の仕方などは「見えないダイバーシティ」ですが、認知が多様であるという意味の「コグニティブダイバーシティ」と言われその多様性も組織において重要ですし、また、一人ひとりの中に多様な視点を持っていること「イントラパーソナルダイバーシティ」も大事な観点だと思います。

 

自分の中に多様性を備えていないと、他者の多様性は理解できない、ということ。

 

逆に、同じ年代の同じ性別、一見多様ではないチームでも、それぞれがもつ経験やスキル、認識の仕方など、内面の多様性があれば、そこから「化学反応」を起こして生まれる発見や知恵などもイノベーションがあるということです。

 

子どもは言葉の理解はできないかもしれませんが、「立場違えば見方が違う、人の見方を理解できるようになるようにいろいろな経験をしよう。」と伝えています。ただ、学童期は、まずは自分自身がどのように感じるか、考えるかを持って欲しいとは思っています。

 

――内外どちらへも広がる、本来の意味での多様性を、そのままお子さんにも教えているんですね。育児方針は何を大事にしていますか?

 

上場さん はい。意識しないとなかなかできないことですが、子どもに向き合う時にまずは「そうだね」と受け入れ、その後で、何か伝えたいことがあれば「でもお母さんはこう思う」と付け足すように気を付けています。”YES, but”の考え方ですね。そうするつもりはないのですが、相手が聞いた時に否定と取られるような伝え方をして失敗したことは何度もあります。

 

あとは、自分の経験からですが、得意なことや夢中になれることに関連して、そこから成長とともに自分にフィットする領域を見つけてくれれば、と思っています。やはり得意や夢中がベースにあると、努力が楽しみになります。

 

――夢中になれることを探す、となると、さまざまな習いごとにトライしたり?

 

上場さん 多様な経験を積ませたいと、習いごとに限らずいろいろな場に意識して連れていきました。習い事に関しては、本人が辞めたいと言いこれ以上続けても嫌々だなと思ったら辞めさせましたし、逆に、辞めたいと言っているけれども、私からみたら得意に思えるものを続けさせた結果、違うステージに達すことができたこともあります。

 

そんな時に「あの時辞めていたらこれはできなかったね。こんなこともできるようになったね」と成長を伝えています。一時の感情にとらわれすぎないことに気付いてくれたらと思っています、伝わっているかは分かりませんが。また、子ども自身は自分の成長には気付きませんので、気付いた都度その違いを言葉にするようにはしています。

 

相馬さん 上場さんの話を聞いて思ったんですが、子どもだけでなく自分もリスペクトすることって大事ですよね。一般的に女性は男性と比べて自己評価が低いと言われています。男性と比べて「私なんて」と思いがちで。

 

昔は一つの会社に入れば同じ会社で働き続けるケースが多かったと思いますが、今は多様なキャリアの積み方があり、いろいろな経験をすることができます。「私はこんな経験をしてきたからこんなことができる」と自分自身をリスペクトすることが大切だと思っています。

 

「性差を強調せずに育てる」ことで自分自身の思わぬバイアスにも気づく

――相馬さんはみなさんの中では一番小さい、未就学児のお子さんをお持ちですね。

 

相馬さん はい。男女二人の保育園児を抱えるワーママです。男児と女児なので、性差なく公平に育てることを意識しています。

 

自分自身の発言にはかなり気をつけているつもりですが、それでも子どもたちは「男の子だから青だよね、女の子だからピンクだよね」といったことを、どこかから覚えてきます。

 

――気づかないうちに自分でも「そんなものだ」と思っていることもありますよね。

 

相馬さん 先日、息子が同世代の子どもを見て「外国人」と言っていました。昔ならば聞き流していた発言かもしれませんが、ここでハタと、「その子どもは生まれも育ちも日本かもしれないし、戸籍は日本かもしれない」と気づきます。子ども本人の気持ちを否定せずに、外からでは分からない多様性をどう伝えよう?と考える瞬間ですよね。

 

私はそんな時はまず否定せずに「なぜそう思ったのか」を聞くようにしています。もちろん、まだ幼いですし、この声がけで何かがすぐ変わることはないと思います。それでも、少しでも心の中に「なぜ?」が残ってくれればいいなと思って接しています。

 

「辞めないでいる」ことも意外に大事。現在のキャリアの源流は?

――お三方とも出産、育児と仕事を並行し、変わらず第一線で活躍されています。最初から現在のような責任のあるポジションへ進んでいくキャリアを意識していましたか?

 

相馬さん どうなりたい、とは具体的には考えていませんでしたが、唯一、働き続けるということは自分の中で決めていました。あとは自分が面白いと思う仕事をしていけば、その先に責任ある仕事があるんだろうなというイメージはありましたね。

 

上場さん 私も相馬さんと一緒で、「辞めたら成長はなくおもしろくない」と思って続けていました。「辞めるのはいつでもできるから、ギリギリまで頑張って。」とアドバイスされたこともあります。悩むことに時間を使ってしまう前にやってみることが大事で、そうすることで展開が変わってくると(笑)。

 

振り返ってみると、今まで続けてこられたのは、お客さまや上司などが時々かけてくれた言葉のおかげだと思っています。人は言葉でできていると思っていますし、大事な場面では言葉にして伝えることは大事ですね。

 

Facebookの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグの著書’Lean-in’を読んだときには、彼女ですら仕事と家庭とどう折り合いをつけるか悩み、幼い子どもの多くの時間を他者に任せることの罪悪感をもつこともあったのだから、自分が悩んで当たり前と、どこかふっきれたことも思い出します(笑)。

 

銭谷さん 私の場合、所属している会社を成長させたいと考えた時に、自分が決定できる部署や立場にいることが大事であると考えていました。未経験のことに挑戦することはもちろん大変でしたが、その立場にいるからこそ見える景色もあるし、また高い満足度と達成感を得る経験もたくさんできました。

 

先ほど相馬さんもおっしゃっていましたが、インポスター症候群といって、女性は男性に比べて自己評価が低い傾向にあります。

 

たとえば男性なら自信が半分しかなくても「やってみよう!」と思うことに対して、女性は8割の自信がないと手を上げない。それが女性のバイアスだとすると、とてももったいないことだし、今のような不確実な世の中で確実なことしかやらないのは残念なことでもあります。

 

チャンスは平等にはきません。だからこそチャンスが来た時にトライしてみよう、と行動に移せる社会であればいいな、と思っています。

 

――今日はお話をありがとうございます。皆さんのご自身の経験に基づくこれらのアドバイスを取り入れて、さっそく多様性を豊かに構築できるようマインドセットの切り替えに努力してみたいと思います!

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