「その男は母の仇」目の前にしながらまひろが取る行動に隠された「平安の闇」【NHK大河『光る君へ』#8】
*TOP画像/為時(岸谷五朗)と道兼(玉置玲央) 大河ドラマ「光る君へ」8回(2月25日放送)より(C)NHK
紫式部を中心に平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第8話が25日に放送されました。
本放送では、道兼(玉置玲央)が為時(岸谷五朗)に急接近するなど不穏な雰囲気がただよっています。また、まひろの家に“招かれざる者”が訪れます。兼家(段田安則)の間者をあっさり辞められたかのようにも見えた為時でしたが、藤原宣孝(佐々木蔵之介)が懸念していたように兼家には企みがあるのでしょうか。
その男は、愛する母の命を奪った男
道兼は書庫で仕事をする為時のもとを訪れ、自身の父について「小さい時から かわいがられた覚えはない」「いつも殴られたり 蹴られたりしておった」と同情を誘うような発言をします。まるで、お人好しで、純朴な為時の懐に入り込もうとするような発言です。
さらに、彼は為時の家に酒を持って、訪れます。いと(信川清順)は道兼の姿を見ると、顔がまっさおになり、慌てふためきます。そうこうしているうちに、乙丸(矢部 太郎)とともに帰宅したまひろ(吉高由里子)は道兼と鉢合わせることに。彼女は一瞬凍りついた後、足早にその場を立ち去ります。
為時と道兼が雑談をしながら酒を交わしていると、琵琶を持ったまひろが姿を現しました。
まひろは「このようなことしかできませぬが」「お耳汚しに」と言葉を添え、道兼に向かって琵琶を演奏しはじめます。母・ちやは(国仲涼子)との思い出や“あの事件”を振り返りながら音を奏でる彼女の目はうるんでいます。演奏終了後、道兼から「琵琶は誰に習ったのだ?」と問われると、「母に習いました」と返します。そして、「母御はいかがされた?」という問いには、「7年前に身まかりました」と答え、病気が理由であることに同意しています。
まひろ&道長、ソウルメイト2人の未来はどうなる
まひろは母を失ったとき、なぜ真実を追求できないのかと父を咎め、泣きじゃくりました。この事件以降、まひろは父を長らく信じられなくなりました。彼女は「亡き母上は大人になれば 父の気持ちも母の気持ちも分かると言ったが 父の気持ちはわからない」と、過去にはもらすことも。しかし、まひろは歳を重ねる中で、父の思いを汲み取れるようになったのです。
まひろは道兼と家の前で顔を合わせたとき、彼を問い詰め、心の底に秘めている思いを泣き叫びたかったはずです。しかし、彼女はそうすることで自分だけでなく、父、弟・惟規(高杉真宙)がどのような立場に追い込まれるのか分かっていました。事なきを得るようにしなければならない自分たち家族の境遇に悔しさや悲しみを抱きながらも、貴族社会で生き抜くにはそれに従うしかないということを理解しています。
道兼が訪ねてくる前のシーンでは、まひろは父と弟と団らんしています。このシーンでは、為時が「あの時 右大臣様に 東宮様の漢学指南役を頂かなければ お前たちだって飢え死にしていたやもしれぬのだぞ」と語っています。また、まひろは「惟規は まだ幼すぎて 母上のご苦労も 父上のご苦労も知らなかったのよ」と、惟規に話しています。さらに、このシーンでは、彼女は父が政での争いが似合わないことも、父の学問で身を立てたいという思いも理解していることが分かる発言もしています。
道兼が帰ったあと、まひろは「私は道兼を許すことはありません」「されど あの男に 自分の気持ちを 振り回されるのは もう嫌なのです」と、父に心中を伝えます。とはいえ、まひろは個人的な思いだけでなく、父、そして弟の将来を思うゆえに道兼に対してあのような対応をとったと解釈できます。幼い頃とは違い、属している社会で強いられている振る舞い、個人の力では変えられない権力に基づく人間関係を理解しているからこそ、道兼を咎めることも、責任を追及することもできなかったのです。
しかし、彼女の情熱的で、まっすぐな性格を考えると、母に手を掛けられた事実を葬ることも、自分が社会に呑み込まれることも容認したとは思えません。また、「まひろ」という名前には「心に燃えるものを秘めた個性的な主人公」(※)という意味が込められています。今後、まひろはソウルメイト・道長(柄本佑)とともに、自分が属する社会に対して新しい風を吹き込むのではないかと期待できるのです。
※NHK「《大河ドラマ第63作》制作決定! 主演・吉高由里子 作・大石 静」
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