会社を出てすぐホテルへ…「不倫社員」のレッテルを貼られた彼女がとった、驚きの行動とは(後編)
不倫を正当化する彼女に…
「え?」
またとんでもない言葉が出たぞと思わず聞き返すと、
「だって、彼との関係はもう終わっているし、仕事は一生懸命しているのよ。彼とのことを会社に持ち込んだこともないし、誰にも迷惑をかけてないわ」
と、アサミは着信に出たときと同じ怒りを含ませた声で答えた。
「……」
そういうことではないのだ。アサミは自分の有り様を会社をメインに肯定しているが、そもそも不倫は「してはいけないこと」であり、噂になったのも大多数の人間が不倫はネガティブなことだと受け止めているからなのだ。「誰にも迷惑をかけてない」が本当だとしても、だからといって不倫そのものが「いい」とは絶対にならず、自分たちの浅はかな行動でこうなった事実からアサミは目をそらしていた。
「……とにかく、会社の人に相談してみるのがいいかもね」
アサミが求めているのは「そうだね」という同調だとわかっていても、できるはずがなかった。そんなことをすれば、アサミは今の自分に間違った自信を持ってしまう。「私は何も悪くない」と言い切るが、裏切られた夫や家族についてはどう思っているのか、確認する気にもなれなかった。
「そうね」
そっけない声で返すのは、こちらがどうしても自分の期待に応えないからなのだろう。こうやって窮屈な同意を求めてくるのが苦痛で、最近はアサミからの着信に出るのはためらうことが増えた。
事実は隠せても…◯◯からは逃げられない 次ページ