青木さやかさん大プッシュ!「落ち込んだ心が回復しない人に」精神科医・住職の川野泰周先生に教わる「とっておきにラクな」マインドフルネス

臨済宗建長寺派・林香寺の住職でありながら、同時に精神科医でもある、川野泰周先生をご存じでしょうか。お寺の一人息子として生まれ、医学部に進学、医師免許を取得し6年間臨床に従事してから、30歳で鎌倉の建長寺で修行をしたという異色の経歴の持ち主です。

 

「白衣(はくい)を着たり白衣(はくえ)を着たりしています」と川野先生が笑いをとりにきたのは、青木さやかさんとのトークショー、『青木さやかと愉快な仲間たち 「-心を調えるマインドフルネス講座-」』の冒頭。さっそく青木さんがお二人のなれそめを語り始めます。

 

「私は川野先生と『人生レシピ』でご一緒させていただき、賀来千香子さんたちとマインドフルネスの初級編にトライしました。その後、今から3年ほど前に私の恩師が亡くなり、舞台に立てないくらいのショックを受けたときにカウンセリングをしていただきました。体調が悪くなったり親しい人が亡くなったりすると精神的に不安定になりがちですが、できれば薬に頼らず生活していきたい。そういうときの手助けもしてくれるのが、今日教えていただくマインドフルネスです」

 

さっそく川野先生に教えていただきましょう。

 

「難しそう」だけど、やってみると「簡単、しかも役に立つ」のがマインドフルネス

「マインドフルネスはもともとお釈迦様が2500年以上前に菩提樹の木の下で行った瞑想がもとになっています。私も建長寺で約3年間、修行生活の中で坐禅という形で体験させていただきましたが、一般の方も日常の中でおこなうことができるんです」

 

そう川野先生は話します。誰でも身の上に起きたできごとにショックを受け、精神のバランスを崩すことがあります。セロトニンなどの「脳内ホルモン(神経伝達物質)」を調整して治すのが従来の投薬治療でしたが、ものごとへの心の向き合い方を変えることで治療するのがマインドフルネスです。

 

「心理学的な理論にもとづく治療に認知行動療法という手法がありますが、マインドフルネスはより手軽に実践できると思います。とくにうつ状態の再発を防止する上では、抗うつ剤と同等の効果があると結果が出ています。いざというときに落ち着いて集中できるようにと、スポーツ選手もよく活用しています。仮に心に悩みがなくても、ストレスの受け流し方を習得し、さらに自分のポテンシャルを引き出す働きもあります。あのダルビッシュ選手も取り入れています」

 

何かに失敗したりくじけそうになるとスランプにつながることがあります。青木さんですら、テレビの収録で緊張して何をしゃべっているかわからなくなったり、「いま私だけ順番抜かされた!」など他意のないことを気にしたりがあるそう。

 

「ちょっとしたこともきっかけをネガティブに捉えてしまうことを、認知行動療法的な観点で、『ネガティブ眼鏡』と私は呼んでいます。日々起こる出来事の中から、悪い要素だけを抽出してしまうことってありますよね、挨拶してくれなかったことにショックを受けてしまったり。マインドフルネスでは、ショックを受けているという事実は受け入れて、その上で気持ちを切り替える訓練をします。いわゆる『タスク・チェンジ』、つまりタスクを切り替えるスキルが上がるのがマインドフルネスです。テニス選手なら、例えばサーブでミスをしたとに気持ちを立て直すために活用できるわけです」

 

マインドフルネスとは一種の瞑想なのだと思っていましたが、不安を感じた瞬間に即座に行うのでしょうか?

 

「日ごろの暮らしの中で瞑想する時間を作るようにすると、いざ不安な場面がきても瞑想しやすくなります。一日40分ほどの瞑想を8週間続けると顕著に効果が出たとおいう研究結果があります。でも40分って、かなりハードルが高いですよね。そこで私は『分割払い』と提案しています。1日に5分なら、8倍時間をかけて1年~1年半ほどで習得できるのではないかと。いまこの会場でうなずいているのは実感がある人ですね(笑)」

 

禅の僧侶は修行時に1日数時間~10時間ほど(時期による変動あり)、年間にすれば1000時間以上は坐禅をするため、自然と空いた時間にも呼吸に目を向けるようになります。日頃私たちは何でもムダを出さないようにと考えがちですが、空いた時間は瞑想やセルフケアのための大事な時間なんだと考えを変えると毎日が充実するのだそう。

 

「3年半の修行から帰ってきたときはわかりませんでしたが、診察を再開してみたら、おひとりの診察が終わってから、すぐに次の方に注意が切り替わるようになりました。それまでは前の患者さんに『もっと適切な対応をすべきだった』と自問自答して自責の念を残したまま次の方を迎えてしまい、『先生、今日はなんか元気がないですね』と言われることもありました。が、1回ずつ切り替えられるようになり、これがタスク・チェンジなんだなとわかりました」

 

現場から現場を移動する青木さんも、2週間ほど続けてみたところ切り替えが楽になった経験があるそうです。では、どのように行うのでしょうか?

 

マインドフルネスの「ベーシックなやりかた」とは?簡単レクチャー

ここからは「調身・調息・調心」の基礎ステップをレクチャーしてもらいます。

 

「古来から坐禅で重んじられるのは姿勢を作ること。まずは『調身』で瞑想の準備を整えます」。

両手を上にまっすぐ伸ばします。

伸びているか、両手を見上げて確認してから、目線を正面に戻し、すっと両腕を落とします。

身体を軽く左右にゆすって安定するところで止め、両方の手のひらを上にして足の上に乗せます。

日常の場において瞑想する場合は、目を閉じて視覚を遮断します。禅堂などで本格的に坐禅をする場合は、目を開けて数メートル先の床の一点を見るようにします。

 

「続いて『調息』。呼吸が整わなくなっても、ただ吸ったり吐いたりする感覚を観察します」

鼻や口から息が出たり入ったりする感覚を味わいます。マスクをしている状況ならば息を吐く度にマスクの中が温かくなるでしょう。体がふくらんだり、しぼんだりを感じる方法もあります。

 

「そして『調心』。いろいろなことが気になりますが、気になっているという事実を自分で受け入れます。『いまほかのこと考えているな。よし、呼吸に戻ろう』と、何度でも呼吸に戻ってきていただければ結構です。今日は2分間やってみますが、呼吸に注意を向けていることがいかに難しいか感じていただき、その度に呼吸に戻ってくるという感覚を体験いただきたいと思います」

 

いろいろなことに考えが向きます。鳥が鳴いてるな。わずかな空調が耳に入る人も、自然の音が聞こえてくる人も。

 

「瞑想に集中すると音の感性が豊かになります。体の変化に気づく人も多い。こんなに息が出たり入ったりするんだな、雑念がすぐに出てくるな、など色々なことに気づかれたのではないでしょうか。どんな感覚もあるがままに受け入れることが大切です。そして、雑念が出たら呼吸に戻ってくることができます。雑念を打ち消そうとしないことが重要です」

 

たとえば突然「シロクマのことだけは一緒に考えないでください」と言われた場合、逆に脳はシロクマのことを考え続けてしまいます。「シロクマ現象」とか「シロクマ効果」と呼ばれる心理学的現象ですね。

 

「これを自分の悩みや気がかりに置き換えると、消そう消そうと忘れたいものほど強く認識されるのが防衛本能の働きです。それとうまくつきあっていくのがマインドフルネスなのです」

 

つづき>>>「ラーメン瞑想」ってナニ?「こんなに簡単なことで気持ちがここまでラクになるのか」驚きのテクニックとは?

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