最新統計に見る「女性の平均年収」の低さ。なんでこうなるの?
今年も国税庁から平均年収に関する統計が発表されました。今回はこの「平成28年分民間給与実態統計調査」をもとに、気になる「みんなの平均年収」を見ていきましょう。女性は毎年平均年収が低い結果になっていますが、今年はどうなっているのでしょうか。
女性の平均年収が男性に比べて圧倒的に低い!
国税庁の発表によりますと、この統計は平成28年の1年間通して働いた民間企業の人を対象に調査された結果になります。平均年収は、男性が521万1,000円、女性が279万7,000円、全体が421万6,000円になっています。
圧倒的に女性が低い結果に「働く女性ってとっても不利なんじゃないの?」と思ってしまうのはちょっと早とちりかもしれません。なぜなら、これには少々カラクリがあります。詳しく見ていきましょう。
同じ統計で、男性の正規雇用者、要するに正社員ですね、これを見ます。
こちらは全体2862万2,000人に対して2172万3,000人と、約75.9%が正社員です。
これに対して女性の場合は全体が2006万9,000人に対して1009万8,000人で、50.3%。
男性に比べて低い割合になっています。
女性は非正規雇用者の割合が高いため、平均年収が圧倒的に低い結果になってしまっているのです。
正社員で比べてみてもやはり女性の平均年収は低い
次に、正社員で比べてみましょう。正規雇用者の平均年収は男性が539万7,000円、女性が373万3,000円と約166万円の差となっており、全体平均の差よりも少なくなっています。
この状況はどうしてでしょうか?少し分析してみましょう。
業種別の平均年収、気になるアノ職業は?
業種別での平均年収も発表されています。1位が「電気・ガス・熱供給・水道業」の769万4,000円、2位が「金融業・保険業」の625万9,000円、3位が「情報通信業」の574万8,000円になっています。一方、ワースト1位は「宿泊業,飲食サービス業」の234万3,000円です。
何となく見えてきた方もいるのではないでしょうか。
平均年収が高い業種は、大学生の人気企業に名を連ねているところが多いですよね。アノ企業とかコノ企業とか。人気の高い企業がイコール働きやすい企業かどうかはまた別の話ですが、勤続年数が高くなる傾向があること、収益が高いため、年収も自ずと年齢に従って上がっていく年功序列制を採用しています。
そして、こういった企業で長く勤めているのは男性ばかりになってしまいます。
女性はこうした人気企業に入社したとしても、社内結婚して専業主婦になってしまったり、育児や介護のために時短勤務で給料の額が落とされてしまったり。事情はさまざまですが、働き続けることが困難になっているのではないでしょうか。
また、ワースト1位の業種に就いている女性、多くないですか? 育児が大変な時期が終わり、さぁ正社員で働こうとなった場合、中途採用しているのは、この業種が多いですよね。そのため、たとえ正社員となっても、もらえる給料額が低く、男性との開きが出ると言うことができましょう。
女性ばかりの分析になっていますが、3位の「情報通信業」ってIT企業や携帯電話、プロバイダーなどが挙げられる業種ですよね。これは、SEというシステムエンジニアを多く抱える企業です。
SEは「IT土方」と自称するほど体力勝負の激務なところが多く、その分給料の金額が高めに設定されているという特徴があります。そもそも、家事や育児を一手に担う社会情勢の中で、こうしたSEに女性が就くのは難しく、もちろんバリバリ働いている女性もいますが、やはり割合は低い傾向にあると言えるのではないでしょうか。
女性の働き方改革って言うけれど
結局のところ、女性の場合は新卒で入社した企業を何らかの形で離れることも多く、また、正社員として復帰したとしても、時短勤務となったり、あまり平均年収が高くない業種に就いたりと、男性に比べて流動的なため、例え正社員でも平均年収はあまり高くならない、だから男性より約166万円も低い結果となってしまうのではないかと分析できます。
20年くらい前までは、結婚退職から専業主婦が当たり前、育児の手が離れたらパートタイム労働をするのが主流でした。結婚適齢期に結婚して退社するのが当然視され、残っている女性を「お局様」などと酷い扱いになっていました。そんな状態に比べれば、正社員の割合は増え、女性の正社員の年収は男性の正社員の年収に近づいていっているようです。
が、いまだにこの結果でいいのでしょうか? 本来大学までは男女の差は、理系の割合がなどがあっても、成績の差やアルバイト収入の差はほとんどないといっていいでしょう。正社員として入社してもしばらくは男女差はありません。
他方、いわゆる働き盛りの年齢になるにつれて男女とも家庭を持つ割合が高くなっています。この時期、女性は正社員として続けていくことが困難な場合も多いこと、実質的に続けられないような業種も存在するため、徐々に平均年収に差が生まれてしまうのでしょう。
女性の働き改革が叫ばれていますが、まだまだ女性が本意ではなく非正規雇用を選択せざるを得ないケースもあります。正社員として続けてきても、育児のために時短勤務を余儀なくされることもあります。こうした社会情勢ではまだまだ女性は「働く」ことについて不利な状況が続いています。
男性についても激務な労働環境はライフワークバランスとして好ましくありません。社会情勢が改善して、ひとりひとりが意欲的に労働できる、そんな環境が実現する頃には、男女間の平均年収の差はなくなっているのかもしれませんね。
参考:「平成28年分民間給与実態統計調査」https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2016/pdf/001.pdf
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