平安時代の「トイレ」「お風呂」事情とは? 平安貴族が香りを愛した、納得の理由

2024.05.06 LIFE

平安時代の貴族はおまるのようなもので用を足していた

ふと考えてみると、トイレの進化はすさまじいですよね。少し前までは和式トイレ(しゃがみこみ式便器)が商業施設などでメジャーであったように思いますが、現在は洋式トイレの方がよく見かける気がします。

さらに最近では、センサー式トイレが公共施設やオフィスなどでよく使われています。水が自動で流れるので流し忘れもなく、便利ですよね。

 

ところで、私たちの祖先はどのようなトイレを使っていたのでしょうか。

 

縄文時代は川や湖にさん橋をつくり、そこで用を足していました。川や湖に排泄物をそのまま落としていたのです。

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イメージ図。このような橋で排泄をしていました。

 

奈良時代になると、屋敷の中に小屋のようなトイレが併設されます。便器のようなものはなく、溝をまたぐような姿勢で用を足していました。排泄物は溝に落ち、そのまま川に流れる水洗式です。

 

平安時代においては、貴族たちは樋箱(ひばこ)と呼ばれる箱に用を足していました。この箱はおまるのようなしゃがみ式で、持ち運べます。排泄物は受け皿に落ち、女房や女童が受け皿を持って捨てに行っていました。

 

また、高貴な女性は樋殿(ひどの)に行って用を足していました。この部屋には美しく装飾された清筥(しのはこ)が置かれており、この箱にまたいで排泄をしていたそう。十二単の裾を清筥にかぶせることで、お尻や足元などは周囲から見えなくなります。

 

庶民については道端で用を足していました。女性と子どもが道で排泄する姿を描いた絵も残っています。

 

ちなみに、和式トイレができたのは江戸時代以降です。当時は各家庭にトイレがなかったので、共同トイレを利用していました。

 

 

浴衣の原型は平安時代に誕生。平安時代の人たちの入浴事情とは?

平安時代は湯につかる習慣はなく、湯浴みが一般的でした。湯浴みとは薄い着物を着て、体にお湯をかけたり、汗を流して垢をこすり落としたりすることです。

 

貴族だけでなく、庶民にも湯浴みの機会がありました。お寺が湯浴みを提供していたため身分に関係なく利用できたのです。

 

現代においても温泉や夏祭りなどで浴衣を着る人は多いですよね。

 

浴衣が誕生したのは平安時代です。貴族たちが着用していた湯帷子が起源といわれています。彼らは湯帷子をやけどを防いだり、はだかを隠したりするために入浴時に着用していました。

 

貴族の女性たちは髪をあまり洗わず、洗髪は1日がかり

平安時代の女性といえば、ロングヘアが特徴ですよね。当時の人たちが長い髪をどのように洗っていたのか気になる方も多いはず。

 

結論を先に述べると、貴族の女性たちは髪をほとんど洗っていませんでした。外出の機会はあまりなかったため、髪が汚れるようなことはなかったそう。

 

とはいえ、髪をまったく洗わなかったわけではなく、1年に1回程度は洗っていました

身分の高い女性は自分で髪を洗いませんので、洗髪は女房の仕事でした。

洗髪に使用していたのが、米のとぎ汁・泔(ゆする)です。現代においても米のとぎ汁(ライスウォーター)を使って髪のお手入れをしている方もいますよね。

 

また、ドライヤーがなかった当時、髪を乾かすのも一苦労。女房がお仕えする女性の髪の水分を一日がかりで拭き取っていました。

 

貴族の女性は年に約1回の洗髪以外は髪を放置していたわけではなく、ケアは日常的に行っていました。泔をつけた櫛で髪をとかしたり、泔がしみこんだ布で髪を拭いたりしてお手入れしていたそうですよ。

 

 

平安貴族の間で香りが流行った理由はヴェルサイユ宮殿で香水が流行った理由と同じ

平安貴族が香りを好んでいた背景にはにおいが関係します。前述のように入浴は週1回程度で、髪を洗う機会はほとんどありませんでした。さらに、便器を部屋に置いていたので、室内のにおい対策も必要でした。

 

そこで、役立ったのが香りです。平安貴族は部屋のにおいや自身のにおいを香りでごまかしていました。

 

フランスにおいて香水が流行ったのも、トイレ・入浴事情と関係しています。ルイ16世の時代においてもヴェルサイユ宮殿に現代のようなトイレはなく、貴族も含めて入浴頻度が少なかったためにおいが問題視されていました。こうした問題を解決する上で、香水が役立ったのです。

 

香りの流行の背景には深刻な問題が潜んでいるのですね。

 

 

参考文献

・鈴木亨『日本史瓦版』 三修社 2006年

・竹内正彦 (監修)『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 源氏物語』 西東社 2023年

・中村姿乃『歴史や物語から楽しむ あたらしい植物療法の教科書』    翔泳社 2024年

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