「ラーメン瞑想」ってナニ?「こんなに簡単なことで気持ちがここまでラクになるのか」驚きのテクニックとは?

臨済宗建長寺派・林香寺の住職でありながら、同時に精神科医でもある、川野泰周先生をご存じでしょうか。お寺の一人息子として生まれ、医学部に進学、医師免許を取得し6年間臨床に従事してから、30歳で鎌倉の建長寺で修行をしたという異色の経歴の持ち主です。

 

前編に続き、タレント・青木さやかさんと川野先生のトークショウの模様をお送りする後編記事です。なお、このトークショーは好評につき6月29日に愛知でも開催されます。ご案内は記事の最後をご覧ください。

▶▶前編記事『青木さやかさん大プッシュ!「落ち込んだ心が回復しない人に」精神科医・住職の川野泰周先生に教わるマインドフルネス

日常の動作に取り入れられる「呼吸瞑想」は応用もラクラク!

「呼吸瞑想は、習慣にすると注意を一点に向けていられる時間が延びていったという声があります。いつもは気にならない呼吸に意識を向けるもので、いちばん基本ですがいちばん難しい。でも瞑想にはいろんな種類がありますし、呼吸瞑想をマスターしないと次に進めないということもありません。私のおすすめは『歩く瞑想』です」

 

そう語るのは川野先生。手を前か後ろで組んで、ゆっくりと足踏みをします。そして右足がついた、左足がついたという感覚に集中していきます。まず、右床に接地している感覚に注意を向けたらそのままゆっくりと持ち上げて、床から離れてゆくことを感じます。そして再び足をゆっくり下ろし、着地する感覚に集中する。これを左右交互に続けるだけです。足の裏の感覚にだけ意識を向けて何度かやってみてください。右に向ける、左に向ける、注意が左右に切り替わると思います。これだけのことですが、丁寧に観察すると瞑想になっていきます。

 

「『食べる瞑想』もとてもオススメです。ひとくち分の炊き立てごはんを食べるとき、どのような感覚が生じるかに注意を向けながらいただくと、味覚や嗅覚の解像度がどんどん上がっていきます。私もかつては『家系ラーメン』に行くと、いきなりコショウとラー油をどばどば入れて濃くしていましたが、いまは出てきたままでじゅうぶん美味しいことに気がつきました。これを私は『ラーメン瞑想』と呼んでいます。自分の習慣を瞑想に変えてあげるのがいちばんです」

 

川野先生は散歩するときスマホは置いていくそう。スマホを手放してしばらく行動するだけでもマインドフルネスの実践になるそうです。

 

「スマホに支配されていないと自己肯定感が上がります。自己効力感を高めるにはスマホの使い方も自分で主体的に決めることが大事です。相手の都合に動かされないことです」

 

世界中で人気のマインドフルネス。なぜそんなに人気なの?

「マインドフルネスは業績や能力を上げるためのスキルではなく、慈悲の心を持ち幸せになる『ウェルビーイング』、よりよく生きるための練習と思ってほしいのです。大抵は悩んでいる症状を軽くしたい、再発を防止したい、もっと楽しい気持ちで暮らしたい、と何らかの思惑があって瞑想を始められると思います。誰だって能力アップをはかりたいのは必然ですよね。でも、実際に瞑想をやる段になったらあまり効果を気にしないで、ただ瞑想に集中することをお勧めしています。ご利益を求めないほうがご利益が大きいなんてちょっとシニカルですが、大切なのはシンプルに、ただやってみることなんです」

 

たとえば日々の空の表情を観察したり、太陽の光や、肌に当たる風の温度を感じたり。そんなシンプルな心がけも立派な瞑想。瞑想がうまくできる日、できない日を体験をするのもよいものだそう。背筋を伸ばして心地よい風景を思い浮かべ、見えているものをひとつひとつの細部を思い浮かべる。どんな音がしているかその音を聴いてみる。どんな香りがするか、手で触れられるものがあれば触れ、心地よいと思えるものを思い出してみるのもおすすめだそう。

 

「満員電車で大変なとき、おすすめしたいのが『つり革瞑想』です。どんな場でも『マイ・マインドフルネス』、つまり自分だけの瞑想時間を作ってほしいのです。たとえばヘアアイロンをかけるとき、将棋の駒を置くときなど、自分にとって集中できる瞬間を考えます。コマを置く一瞬だけ音に集中すると、心のモードを切り替えられます。いざ不安になってから瞑想に挑戦する、ということではなく、日頃穏やかに過ごせるうちから色々な機会に瞑想を練習しておくと、いざ満員電車だというときもすぐに切り替えられるようになります。『これは瞑想できるチャンスだぞ!』と思えるようになるのです」

 

たとえばお風呂に入るといやなことを思い出すという人は多いもの。入浴中は自動操縦で自動的に体が動くので雑念が浮かびやすいのだそうです。

 

「そこで『お風呂瞑想』、髪を洗うときは愛護的に丁寧に洗います。丁寧に洗顔したら数週間で幸福度が上がったという研究もあります。おふろは自分だけの時間ですから、心を整える、切り替え時間に最適なんです。私の心の中には、どこかで処理しないとならない苦しみが色々ありますから、『また嫌な考えた出てきた、どうしよう!』ではなく、『あぁ、私はこのことで悩んでいるのね』と悩みを受け入れるようにするのが大事です」

 

ちなみに、このとき呼吸の速度はどうすればいいのでしょう?

 

「マインドフルネスではあくまで、自然体の呼吸をします。一方、いざというとき、たとばパニックが起きそうなときなどは、あえて呼吸の秒数を数えるなどしてコントロールすることで心を落ち着ける、『呼吸法』が役立つことがあります。不安が強い時には自然な呼吸を観察しようとしても、かえって不安に意識を持っていかれやすいからです。マインドフルネスは『日頃からの実践』が大切ということを思い出していただくとよいでしょう。パニックや不安が徐々に落ち着いてきた上で、自然な呼吸を観察する呼吸瞑想を実践していただければ幸いです」

 

涙があふれる人も多い「慈悲の瞑想」を実践してみて!

日頃の色々な行為や、心の向け方が瞑想になる中で、上座部仏教のお坊さんたちがずっと大切に実践してきたという、『慈悲の瞑想』を最後に。

 

「この瞑想では涙を流す方が結構多いのですが、実は当たり前の反応なんです。誰にでも持って生まれた優しさがあります。忙しい日常の中で埋もれてしまっている、そんな優しさがぱっと花開くことで、自然と涙が出てくるのでしょう。感激の喜びというよりは、アルカイックスマイル(静かな微笑)を浮かべる方が多いですね」

 

誘導してもらわないとなかなか難しいため、動画を見ながらどうぞ。

 

座っても立っても横になってもOK、リラックスした姿勢で、まず一度深呼吸をしてゆっくり目を閉じます。そして、あなたにとって大切な人を一人思い浮かべます。家族でも友人でも、この世にいない人でも、誰でもOK。その人に向けて次の言葉を心の中で伝えてみてください。

 

・あなたが幸せでありますように。
・あなたが健康でありますように。
・あなたが安全でありますように。
・あなたが心安らかに暮らせますように。

 

次に、自分自身に対しても同じように伝えてみましょう。「あなたが」を「私が」に変えてやってみて下さい。

 

 

つづき>>>青木さやかさん大プッシュ!「落ち込んだ心が回復しない人に」精神科医・住職の川野泰周先生に教わるマインドフルネス

 

1980年横浜市生まれ。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在は檀務とともに、「マインドフルネス坐禅会」を定期的に開催。ビジネスパーソンに向けては日立グループ、花王、ソニーミュージック、日本マイクロソフトなど、国内大手企業でマインドフルネスによるメンタルヘルス向上のための社員研修を担当。さらに医師、看護師、介護職、学校教員、子育て世代、シニア世代などを対象に幅広く講演活動を続けている。著書・共著・監修多数。また、国内初のマインドフルネスのための通信教育講座「マインドフルネス実践講座」(キャリアカレッジ・ジャパン)の監修を務める。NHK・Eテレ「明日も晴れ!人生レシピ」、NHKラジオ「ラジオ深夜便」、TBSラジオなど、メディア出演を通してのマインドフルネス普及活動にも取り組む。

 

川野泰周オフィシャルサイト

このイベントが名古屋でも開催されます!

愛知県名古屋市昭和区小桜町2-4  教西寺

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