実は今、「熱中症になりやすい体」になっている! 水分補給しているつもりでも、盲点になっていることとは?【医師が解説】

今年は5月から暑さが増すと報じられ、熱中症リスクが早期から高まっています。まだ完全に暑さに対して準備が整っていない今の身体。今年は早くから調整しておく必要がありそうです。そこで今回は、早期から熱中症予防対策として、特に盲点になりがちなことをご紹介。熱中症対策に詳しい医師やエアコンメーカーに伺いました。

 

 

盲点1. 冬の間に熱中症になりやすい身体になっているかも⁉

「冬の間、活動量が低下すると、身体の暑さに耐えうる能力も低下しがちなのをご存知でしたか? 特に体温調節能力や汗をかく機能が低下している恐れがあります。このような状態のままだと、熱中症発症のリスクが高まってしまいます。」

 

そう話すのは、医師の谷口英喜先生。今年の夏に向けても、新刊『熱中症からいのちを守る』を出版し、熱中症や脱水症リスクに毎年警笛を鳴らしています。

 

谷口先生によれば、熱中症になりづらい身体づくりのために、一年を通じて長期的な対策を講じるのを勧めます。

 

ポイントとなるのは、「脱水になりにくい身体づくり」と、「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」という暑熱環境への順応力を高めることの2点です。

 

●脱水になりにくい身体を作るポイント

「体内の水分は、半分弱が筋肉に貯蔵されるため、脱水になりにくい身体を作るには筋肉量を増やすことが重要です。栄養としてたんぱく質を積極的に摂取した上で身体を動かすこと。長期的に筋肉が維持できるようにしましょう」

 

●暑熱順化のポイント

「暑熱馴化には、タウリンやビタミンCが有効です。タウリンは魚介類や栄養ドリンクから摂取できます。筋肉疲労を回復する効果や身体のさまざまな機能を調節する働きがあることが知られていますが、近年、深部体温を下げる働きがあることも研究結果からわかっています。

ビタミンCには抗酸化作用があることで知られていますが、体内の活性酸素を減らすことで細胞を守り、炎症を軽減して暑熱順化をサポートする役割を果たします。

タウリンは牡蠣やあさり、しじみ、ほたて、はまぐり、たこ、いかなどの魚介類に多く含まれ、栄養ドリンクでも気軽に摂れますよね。ビタミンCはブロッコリーやじゃがいもなどの野菜や、レモンやキウイフルーツなどの果実に多く含まれます。タウリンもビタミンCも水溶性、つまり水に溶けやすいので、魚介類や野菜を煮てスープのようにしたお料理を汁ごといただきましょう。食事からも水分補給ができるので熱中症対策にもつながります」

 

また大前提として、規則正しい食生活と偏りのない食事、十分な休息を心がけることがポイントだそうですよ。

 

盲点2. 暑くなってきたらカフェインやアルコール摂取は熱中症のリスクあり!

ところで、熱中症リスクが高まる時期になると、水分補給が欠かせません。けれど、「普段からコーヒーをよく飲むから大丈夫」と考えていませんか? 実はカフェインは利尿作用があるため、水分補給にはおすすめできない飲料だと谷口先生は述べています。ただし、カフェインは慣れやすく、普段からコーヒーや紅茶を飲み慣れている方なら気にしなくても良いとのことでした。

できれば、水分補給の際の水分は、白湯かカフェインの含まれていない麦茶などが最適なのだそう。

 

またアルコールも同様に利尿作用があるので要注意。

特に夏に野外でバーベキューを行う際などは、ビールなどのアルコールがつきものですよね。実は真夏のバーベキューは熱中症になりやすいのだとか。谷口先生は次のように話します。

 

「真夏のバーベキューはお酒を飲むことが多く、利尿作用から脱水症になりやすくなります。さらに日光を直接浴びる時間が長いことで、熱中症リスクも上がります。予防するには、お酒を飲む前に少しお腹を満たしておくこと、お酒だけでなく食事もきちんと食べること、お通しや酒の肴も大事なのです、お酒以外の飲み物で水分補給をすること、日陰や室内など、涼しい環境で休憩できる場所を確保することを心がけましょう。
むずかしいかもしれませんが、熱中症指数が高い日はお酒を控えるのがベストです。お酒を飲むのであれば涼しい環境に移動してからにするなどするのもよいでしょう」

 

ここまでの前編記事では2つの盲点について伺いました。後編では残りの1つの盲点を引き続き、谷口先生に伺い、もう一つはエアコンメーカーの方に伺って解説します。

 

 

つづき>>>【医師が解説】熱中症予防、正しい水の飲み方とは? この時期に、自宅のエアコンで確認しておきたいこと

 

 

【取材協力】

谷口 英喜先生

谷口 英喜先生
医師。済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長
麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024年5月に新刊『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など。

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