信州の素朴なグルメ宿。りんご風呂で美肌になる「中棚荘」
絶景やご当地グルメ、温泉など旅の楽しみは様々ですが、やはり宿選びは大きな決め手。ひとりでもカップルでも納得できる“ほんとうに泊まりたい宿”をご案内します。第1回は長野県の一軒宿「中棚荘」です。
文豪も足繁く通った信州の素朴な宿
東京から長野新幹線としなの鉄道で約2時間、長野県小諸市はかつて小諸城があった城下町であり、北国街道の宿場町として栄えた地です。小諸にある一軒宿「中棚荘」は明治31年の創業。文豪・島崎藤村がこの宿で『千曲川旅情の詩(うた)』を執筆したことで知られる老舗旅館です。藤村が滞在した「藤村の間」は、約110年という歴史が感じられる落ち着いた佇まいで、今も宿泊客に親しまれています。この宿にはちょっとした語り草があり、「藤村ゆかりの宿」の名を掲げていることから、若い女性が「ふじむらゆかりさんって、誰ですか?」と言って訪ねてきたというもの。そんなエピソードとともに、何度訪ねても心和む私のお気に入りの宿のひとつです。
館内随所に感じる女将の気配り
着物風ののれんが下がる玄関を入り、ラウンジでウェルカムドリンクをいただき、チェックイン。ラウンジの一角には藤村の書籍などがあるライブラリーがあり、ゆっくり読書も楽しめます。ラウンジから出るテラス。ここが気持ちいい。寛いでいると、人懐っこいアイドルたち(犬のチビ、山羊の親子、合鴨や亀、うさぎ…)が次々と登場します。ここは動物園?いえいえ、でもここで一番人懐っこいのは女将の富岡洋子さん。満面の笑みで出迎えてくれる素敵な女性です。女将はお客様をもてなすことに力を惜しまず、館内随所に野の花が活けられ、土蔵のギャラリーでは陶芸展や俳句展などを行い、さらにコンサートやハイキングなどのイベントを実施。宿の居心地の良さをつくり出すのはもちろん、宿が文化の発信地になることを常に意識しています。ご本人は愛車の大型バイクで気分転換にツーリングを楽しむというアクティブ派でもあります。
オリジナルワインとともに味わう心和む料理
客室は落ち着いた和室と和洋室があり、極めてシンプル。肩の力を抜いて過ごすことができます。夕食は関西出身の料理長が作り出す素材の味が伝わる薄味の料理。自家畑のとれたて野菜や信州牛、鮎、手打ち蕎麦などがいただけ、煌びやかではありませんが、丁寧にしっかりと作っているという印象です。別注文で馬刺しや本場の鯉こくなども味わえます。料理に合わせていただきたいのがオリジナルワイン。5代目宿主の富岡正樹さんが10余年前からワイン用のブドウ栽培を行ない、周辺の醸造所に依頼して中棚ワインを造っています。出汁がきいた料理に合うシャルドネ、和食の繊細さに合うやさしいメルロー。そして、息子さんがお父様の願いをついで、2018年秋の仕込みを目指し、自社ワイナリーを立ち上げたとのこと。中棚ワインの進化も楽しみです!
温泉と登録有形文化財、ふたつのお宝
この宿の大きな魅力が温泉です。内湯と露天風呂に注がれる自家源泉は、アルカリ性単純温泉で、なんとpH値が8.6もあります。ローションのように肌にまとわりつく温泉は、一度入ると病みつきになる、まさに美肌の湯! さらに10月~5月には地元のリンゴを浮かべた「初恋りんご風呂」になり、リンゴの甘い香りに心身ともに癒されます。体にやさしい温泉なので、何度入っても負担が少ないのも嬉しい限り。飲泉所もあり、慢性便秘や慢性胃腸病などに効果があります。さらに客室の蛇口から出るお湯もじつは温泉という、隠れた贅沢も楽しんでください。
もうひとつ特筆すべき宿の自慢が、登録有形文化財の食事処「はりこし亭」。築年140年以上の土壁と欅を中心とする純木造建築の旧家を移築しました。大きな梁と柱、どっしりとした佇まいが、心地よい空間です。おもに昼食の場として利用でき、日帰り入浴と組み合わせることができます。また、こちらで結婚式を挙げることも!きっと素敵な席になることでしょうね。
この宿の良さは、宿主ファミリーやスタッフの元気な姿やあたたかさにふれて、「ただいま」と言葉にしたくなることだなと、改めて感じます。ほんわかとした空気が隅々に流れていて、とてもリラックスできるのです。ひとり旅ももちろんOKなので、都会の生活にちょっと疲れたな、と感じた時に出かけてみてはいかがでしょうか。
中棚荘
長野県小諸市古城中棚
電話 0267-22-1511
チェックイン14時、チェックアウト11時。27室。
1泊2食付き1室2名利用時 ひとり11,556円~(消費税込み・入湯税別)
1泊2食付き1室1名利用時 12,636円~(消費税込み・入湯税別)
スポンサーリンク