40代から難聴は始まる?「最近、聞こえづらくなってきた…」更年期にひそむ難聴リスク【医師が解説】
難聴とは?
まず初めに難聴の定義を確認しておきましょう。
難聴とは、耳が聞こえにくい状態のこと。耳の機能の様々な状態によって起き得るものです。
特に加齢以外に原因がない場合に起きる難聴を「加齢性難聴」と呼びます。日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会の公式ページ(※1)によれば、40歳代から聴覚の衰えが始まり、75歳以上になると約半数の人が難聴に悩んでいるそうです。
聴力のレベルが下がってくるのは、高音域からといわれています。つまり、高い音から聞こえにくくなるのです。60歳代になると、聞こえが悪くなったことを感じる人が急激に増えてくるといいます。70歳をこえるとほとんどの音域の聴力が低下し、65~74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいるそうです。
この事実を知ると、もはや他人事ではないと感じませんか?
※1一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ホームページ 「難聴について」
更年期障害と難聴の関係
私たちは、誰もが加齢性難聴のリスクがあるといえます。40~50代の女性は更年期障害として、耳の不調が現れることもあるようです。実際に更年期になると、耳の聞こえが悪くなることはあるのでしょうか。森先生にうかがいました。
「更年期障害で、耳鳴りなどの症状が出てくることはあるかと思います。それは難聴の症状ではなく、どちらかというと、めまいの症状として気付かれるかもしれません。
40代になると、BPPV(良性発作性頭位めまい症)や難聴を伴うメニエール病などの耳の病気にかかりやすくなりますので、これらの病気であるケースもあります」
更年期に起こり得る難聴と加齢性難聴は異なるのでしょうか?
「ケースバイケースですが、異なると言っても良いかもしれません。加齢性難聴は、もう少し後の60代から70代などに起きてきます。また仕事上、騒音環境の中にずっといた人などは50代くらいで難聴になる人が多いです」
難聴がもたらすリスク
更年期障害による耳鳴りや難聴、加齢性難聴によって“聞こえ”が悪くなることは、私たちの年齢でもいつ起きてもおかしくないようです。
では、これらの難聴はどんなリスクがあるのでしょうか。
「難聴になってからの疾患リスクとして、内耳の病気になる可能性がありますので、気にする必要があります。ただ、命に関わるようなリスクのある病気は多くありません。まれに起きる聴神経腫瘍はリスクが大きいですが、それほど起きるものではありません。どちらかというと、生活の質を落とすリスクが多いでしょう。
更年期になると、テレビの音量を大きくする、相手の言っていることを頻繁に聞き返す、旦那さんに声が大きくなったと指摘されるなど、そういったレベルのことは起きてしまうかもしれませんね」
“聞こえ”がよくない状態になれば、生活や人とのコミュニケーションに支障が出ることは間違いなさそうです。やはり難聴には注意したいものです。
本記事では更年期障害と難聴の関係やリスクについて伺いました。
では、自身が難聴かどうかはどうすればわかるのでしょうか?
▶「更年期なのか難聴なのか、見分け方は?」の記事▶聞こえづらさを感じた時に、難聴かどうかのセルフチェック方法と、早めに補聴器を利用すべきかどうか、について医師に解説していただきます。
【取材協力】
森 勇磨 先生
東海高校・神戸大学医学部医学科卒業。研修後、藤田医科大学病院の救急総合内科にて救命救急・病棟で勤務。救急現場で数えきれないほど「病状が悪化し、後悔の念に苦しむ患者や家族」と接する中で、「病院の外」での正しい医療情報発信に対する社会課題を痛感。その後今や子どもから高齢者まで幅広く親しまれるようになったYouTubeでの情報発信を決意。 2020 年2月より「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもと、「予防医学 ch/ 医師監修」をスタート。株式会社リコーの専属産業医として、「会社の健康プログラムの構成」「労災防止を目的とした作業環境の改善」など、 社員という『個人』へのアプローチ、そして会社システムという『集団』へのアプローチから予防医学の実践を経験後、独立。「MEDU株式会社 (旧:Preventive Room株式会社)」を立ち上げるほか、オンライン診療に完全対応した新時代のクリニック「ウチカラクリニック」を開設。
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