浮気した夫を許せない。でも、離婚したら生きていけないかも?「だましだまし婚」のまま、老後に突入なんてまっぴら!【体験談】
もしかして二度目の浮気? GPSで夫の行動を追跡
一度目の浮気をされた当時を振り返り、沙織さんは、「夫に惹かれる女性なんかそういないだろう」と高をくくっていたと言います。その後も、「これだけお金を支払わせたし、それに懲りてもう浮気はしないだろう」と考えていましたが、夫は他の女性と二度目の浮気をしていました。しかもそれは、本気の浮気ではないかと思えるくらい長く続いたそうです。
40歳の頃、なんとなく夫の行動が怪しいと思った沙織さんは、探偵事務所のGPSパックを利用しました。夫も女性も車で移動していたので、それぞれの車にGPSを仕込んだのです。
相手の女性は週に一度くらい繁華街で働く人で、結婚していましたが、彼女の夫とは離れて暮らしているようでした。
「多分、飲みに行った先で知り合ったのでしょう。お互い結婚していて相手がいるのも好都合だったのかもしれません。昼日中からラブホで1、2時間一緒にいることもありましたが、昼休みに夫が女性を呼び出して繁華街で食事して別れたり、食事をしてプレゼントを渡して別れたりしていました。ラブホに行かないこともよくありました。女性は、夫が『出てきて』と言えば昼でも夜でも自由に出られるので、気軽に付き合えていたのだと思います。探偵も手慣れていると言っていました。」
変装して尾行するも、夫は逆ギレ
お正月明け、夫が「お客さんと食事に行く」と言って外出。沙織さんはなんとなく胡散臭いと思いました。すぐに女性側のGPSがどこにあるのか探偵に確かめると、夫が向かった繁華街に女性もいることが分かりました。
「会っているんだなと思ったので、変装して尾行しに行きました。尾行はバレなかったのですが、夫は食事だけしてまっすぐ帰ってきたのです。予定よりも早く帰ってきたので心の準備ができていなくて、私の態度がおかしいことを気づかれました。」
夫は、「なんやお前、なんか様子がおかしいけど、俺の行動を探っていたのか?」と責め立てるような口調で問い詰めてきました。そこからは逆ギレ状態。
「クレジットカードの家族カードを取り上げられ、夫はパソコンに弱いので、家に出入りしていた銀行員を呼び出して、クレジットカードの利用明細を確認させていました。私が探偵にお金を支払っていないかチェックしたのです。『こいつ、こんなにもお金を使っていやがる!』と銀行員に愚痴を言っていました。夫は自分に優しく他人には厳しいタイプで、自分は100万円するものでもパッと買います。でも、家族が2、3万円のものを買ったら、『お前は贅沢だ』と言う。『俺が稼いだ金を俺が好きに使って何が悪い』と言うのが口癖です。」
結局、何も自白させられなかった沙織さん。その場は引き下がるしかありませんでした。夫は、その日以来、女性とは会わないと言っていたのですが、沙織さんは信じることができず、GPSを付けたままにしておきました。
俺、嫁にマークされている?
ある日、夫が女性の家に近いスーパー銭湯に行った時のこと。
「女性と付き合っている時も、たびたびそこで落ち合っていたので、これは怪しいと思ってスーパー銭湯に女性の車がないかどうか確認しに行きました。夫が出て行ってから1時間後くらい経っていました。」
スーパー銭湯の駐車場に車を滑り込ませたら、なんと夫も駐車場にいて鉢合わせになりました。
「夫は一人でいましたが、『あれ?俺、嫁にマークされている?』と勘づいたのです。携帯電話のショップに行って、『GPSで追跡されていないか?』と聞いてみたり、ディーラーに行って、『車にGPSを付けられていないか?』と確認したりしていました。GPSは運よく見つけられずに済みました。」
夫はGPSが見つからないので、Googleで追跡されたのではないかと疑って、Googleのアカウントを削除しました。しかし、そのためクレジットカードの明細が見られないなど予期せぬ不都合が次々と起こったそうです。沙織さんに、「どうしたらいいんだろう」と泣きついてきて、そこから自白が始まりました。
「なんでGoogleのアカウントを削除する必要があるの?と問いただしたら一発でした。相当困ったみたいです。」
夫が自白した時、沙織さんは、「このままでは気持ちが収まらないから、相手の女性と話をしたい」と言いました。しかし、夫は、「この不倫はお互い様で、相手にもご主人がいるのでやめてほしい」と言ったそうです。
「私にしたら関係ない話です。『お互い様』というのは、夫と女性の間の話で、周りの人は関係ないでしょう。女性から慰謝料を貰おうとは思わないのですが、夫が不倫していたという確実な証拠を掴みたいんです。ただ、このことを知人に相談しても、夫婦で穏便に過ごしたいと思うなら、行かないほうがいいと言われます。すごく苦しいです。」
家族ではなく、女と濃密な時を過ごしていた夫が許せない
二度目の自白の後、沙織さんは弁護士に相談することにしました。
「GPSで車の場所を追跡しただけなので、ラブホから出てくるところなど決定的瞬間を撮影したこともなく、弁護士には、『裁判になった時に勝てるような証拠がないので通りませんよ。文句も言えないし、慰謝料請求もできません』と言われました。細かいLINEのやり取りのスクショはありましたが、それも役に立ちませんでした。自白も不意打ちされたので思いの丈をぶつけられず、録音もしていなくて後悔しています。」
何より沙織さんの心を動揺させたのは、夫と女性が10年もの長きに渡って交際を続けていたことでした。
「女性とは10年続いていたことが分かりました。ちょっとやそっとの絆ではありません。私より色々なことを話していたと思います。私は3人の年子の子どもを育てるのに必死でしたし、夫は外にいても元気でいてくれたらいいと思っていました。まさか特定の女性と過ごす時間を大事にしていたとは夢にも思いませんでした。その間、家族に向けることもできた時間とお金が、全部そちらに向いていたのかと思うとやりきれません。」
大嫌いだけど、ここを出ていくパワーもない
「夫はATM」と言う沙織さん。もう愛情はないそうでが、別れるかどうか踏ん切りがつかないまま結婚生活を続けています。
「離婚して自由で気を遣わない生活をしたいと思いますが、慣れた生活の気楽さもあります。20年間ここで暮らして、ある程度生活のリズムやルーティンができています。別れたくないというより、今の生活が楽だから、というのが正直なところです。もう我慢することに慣れてしまっているのでしょうね。諦めみたいなものもあります。」
一方で、沙織さんは強い怒りも滲ませます。
「もちろん本当にはしませんが、憎たらしくて殺してやりたいと思うことだってあります。ものすごくムカつくんです。でも、私にここを抜け出すパワーがあるかどうか。出たいけれども、実際に出られるのか分かりません。夫が別れたくないと言っているのにゴリ押しして出て行って、全く後悔しないでやっていけるのか。20年間、外で働いたことがないのに、どう生活していけばいいのか。歳も歳だし。そういう不安と葛藤があります。このまま何もなかったかのように過ごしたらいいのでしょうか。」
夫は、会社を経営しているため世間体を気にして、鼻から別れないと決めているようでした。
「プライドが高くて完璧主義なので、『あそこの社長、離婚したんだって』と言われることに耐えられないのだと思います。子どもも優秀な学校に行っているので、そのことを自慢しています。私から三行半を突きつけられるなんて、絶対に許さないと思います。」
住み慣れた土地を離れることや経済面で不安を感じながらも、沙織さんは弁護士を探して長期戦で別れることも考えています。
「私にバレたら女性とは関係を切ったようです。何事もなかったような顔をして、家の中のこともこまめにしています。でも、私はひと言も謝ってもらっていません。『このまま受け入れざるを得ないのか』と考えるとイライラモヤモヤします。2、3週間前に、『一緒に風呂に入ろうか』なんて言ってきましたが、無理に決まっています。夫は、俺から離れたら経済力がないから生きていけない、どうせ別れられないと、私のことをみくびっているのでしょう。ちょっとご機嫌取りでもしておこうと思っているに違いありません。いつか妻がいなくなった屈辱を味わったらいいと思います。」
いつまで続けるの?「だましだまし婚」
モヤモヤと葛藤しながらも、まずは貯金をしようと思っているという沙織さん。
「子どもが大学を卒業する目処がつくまでに貯金をして、別れて一人になった時に食べていけるスキルを身につけようと思っています。でも、何の資格を取ればいいのか分かりません。自分の気持ちのどろどろの中で停滞している感じです。」
老後や介護のことを考えると気持ちはさらに複雑に。
「私が夫の世話になるかもしれません。でも、それで私は嬉しいでしょうか。長年裏切ってきた人間に死に目を見せたくありません。弱々しくなった夫に優しくするなんてこともできません。例の“お互い様の女性”に面倒をみて貰えばいいでしょう。一緒の墓にも入りたくありません。」
激しい怒りを滲ませながらも、結婚してから20年、住み慣れた町での暮らしを手放したくないという気持ちと、夫から離れて食べていけるのかという不安を抱えている沙織さん。モヤモヤから解き放たれる日は来るのでしょうか。沙織さんのように、だましだまし婚に、「本当にこのままでいいのかしら」という思いを抱えている人は案外多いのかもしれません。
1 2