夫の問題点は、不倫や借金だけではなかった。「これからは一生一人で生きていきたい」と妻が決別を選んだ理由

2024.09.25 LIFE

この人とは未来を築けない

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あっさり離婚に向けて動き出した葵さんですが、一度は身体が不自由になった彼を支えていこうと覚悟していたこほど。急には嫌いになれませんでした。長年の結婚生活で情が移っていたこともあります。

 

「10年近く一緒に暮らしてきたので、頭では別れると決めていても、気持ちはそんな簡単に整理することができませんでした。もともとめちゃくちゃ仲良しで、友人からは『理想の夫婦だね』と言われていたんです。

でも、彼と話してみて分かったのですが、優しさと甘えがないまぜになっていて、自分の本心さえ分からなくなっている感じがしました。
これから先の人生、どう生きていきたいのか分からない人と一緒に未来を築いていけるのかと考えた時、やっぱ無理だよね、もう前を向こう……と、決断しました。」

 

 

葵さんが離婚を決めたのには、他にも理由があったと言います。

「不倫相手の女性の“レベル”に落胆したんです。
これは不倫関係になる前に貴文さんが話していたことですが、仕事が全然できなくて、職場で泣くこともある幼稚な女性だったようなんです。そんな内面の“浅さ”は見た目にもあらわれていて、『え、この子と不倫? 本当に?』という感じでした。
こんなタイプと不倫できるのなら、この人は誰とでも簡単にそういう関係になってしまう、そう思うと怖くなりました。」

 

 

あなたにも原因があったんじゃないの?

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離婚する前に義両親に呼び出され、話をしに行きました。義両親は貴文さんに激怒し、「女と関係を続けるなら縁を切る」と言いました。貴文さんは両親の前で号泣して謝罪。

その席で、葵さんは義父から思いがけないことを聞きました。

 

「義父は私に、『あんた、貴文にいくら借金があるか知ってるんか?』と言ったのです。今まで借金があるなんて聞いたことがなかったので驚きました。」

 

多額の借金だったので返済の目処も立たず、このまま一緒にいても苦しいことは目に見えてました。これも離婚を決断する理由の一つになりました。
なぜ両親には言えて、葵さんには言わなかったのかということも不信感を増幅させました。

 

 

「彼は給与明細を見せてくれなかったので全貌は分かりませんが、不倫のために使って、足りなくなったので借りたみたいです。
家計は、彼が家賃等の光熱費を担当して、私はパートの給与を貯金に回したり、食費で使ったりしていました。
収支をきちんと把握できてなかったのは反省点ですが、いくらちゃんとしたところで、嘘をつかれていたらどうしようもなかったと思います。」

 

不倫、借金、健康面での不安、3拍子揃ったところで再構築は全く考えられなくなりました。
驚いたことに義両親は、「貴文も悪いけど、葵さんにも原因があったんじゃないの?」とも言いました。

 

 

葵さんは、上の子が小学校2年生の時に離婚。
子どもたちには当初、入院期間の延長で別々に住んでいると説明していました。ずっと黙っているわけにもいかないので、アパートに引っ越してから、「実は離婚した」と話したそうです。
子どもたちは、「えー・・・」と悲しんでいましたが、下の子はまだ3歳だったので何が何やら分かっていないようでした。

 

二人の子どものことを考えて踏みとどまるという選択肢はなかったという葵さん。

「子どものためにって離婚しないという選択は 、ほぼなかったですね(笑) 。
お母さんが我慢していると我慢する子になるだろうし、お母さんが息苦しいと 生きるのが息苦しい子になるだろうと思うからです。
それより、 逆境に負けず 努力したり 勉強したり、 新しいことにチャレンジする姿を 見せていったほうがいいなと思っています。
嫌な事が何も起きない人生はないですからね。

パパにはいつでも連絡していいし、会ってもいいという感じにはしています。ひとつ決めていることがあって、子どもには父親の悪口は絶対言わないようにしています。不倫のことも黙っています。」

 

 

心の支えになった公的支援、新しい仕事にもチャレンジ

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離婚すると決めた時、葵さんは、二人の子どもを育てる不安は全くなかったと言います。

「お金の稼ぎ方さえ知っていたら、たとえ無一文になっても再スタートできるでしょ?
離婚して母子家庭という社会的弱者になって、まずは市役所に行ったのですが、意外とセーフティネットが色々あることを知って安心しました。いざとなったらお金も貸してもらえます。」

 

 

いろいろ頑張ろうという気持ちになった葵さん。地元に帰って仕事も変え、全く違う業種の仕事にチャレンジしました。

「40歳近かったので不安もありましたが、今のところがんばれています。
ただ、子どもがいるとどうしても休みを貰いたいことがあるので、フルタイムで働くのは諦めて、パートで勤務しています。それだけでは足りないので、家でできる副業もしています。」

 

決して経済的に楽ではありませんでしたが、タイミングも良くて、コロナ禍で一人10万円の給付金をもらえたので葵さんは30万円を手にしました。それを元手に、ハンドメイドの作品を売るサイトに出品してみました。

「人生で初めて自分が作ったものが売れました。評価が返ってくるのが嬉しくて、すごくやりがいを感じて、やがてそれが生きがいになりました。

今までは日々の暮らしに追われて、自己実現するなんていうことはすっかり忘れていました。

離婚したことで、夢というと大袈裟かも知れませんが、あれもこれもしたい、どんどんチャレンジしようと前向きな気持ちになれました。」

 

今は、副業でアフィリエイトをしている葵さん。フォロワーが増えてきたら、商品をPRしてほしいという仕事も来るようになりました。

「その繋がりで異業種交流会にも参加しました。シンママを支援している人に出会って、『外で働くことは難しいでしょう。ぜひうちの商品をPRしてください』と言われて、そういうことをいくつもしています。もちろん、メインの仕事があるからできることですが。」

 

 

慰謝料は取れるだけ取る

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離婚できたというものの、全てを忘れて水に流したわけではありません。
葵さんは、貴文さんでも相手の女性からでもいいので慰謝料をマックスもらうと決めていました。

 

「シングルになるとお金が必要ですし、お金でしか償えるものがありませんから、とにかく取れるだけ取ろうと思いました。ただ、夫は借金まみれで取れるものがないことが分かっていたので請求しませんでした。

慰謝料請求のため弁護士に相談したのですが、ただでさえストレスを抱えていたので、こちらの気持ちに寄り添ってくれる人を選びました。
私の弁護士は、慰謝料のことを電話で相談すると、『アイツ(相手の女性)、制裁しないとマジで繰り返しますよ。やってやりましょう』と言いました。それが本心かどうかは分かりませんが、当時は孤独だったので救われました。弁護士選びは大切だと思います。」

 

葵さんは双方に不倫を認めさせ、証拠となる動画を撮影したので、慰謝料の請求はできました。しかし、実際には思うほど順調には行きませんでした。

弁護士は、「相手の女性や貴文さんの給料を差し押さえようとしても、会社にバレたら二人とも解雇されてしまう。そうなると給料が出ないので、慰謝料を取れない。ないところからは取れないんです」、と言いました。

 

解雇ではありませんが、事実、二人は会社に不倫がバレて退職しました。

「私からしたら向こうの経済状況なんて全く関係ないことですが、かなり左右されました。
弁護士を入れても無理なものは無理なんです。

相手の女性は慰謝料の一括払いはできないと言いました。30万円でも50万円でも一括払いは無理だと言うので、月々1万円の分割払いで払ってもらっています。
この慰謝料は手をつけずにいたのですが、つい先日、必要な家電があったのでそのお金で買いました。」

 

 

元夫と交流を続ける理由

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貴文さんは全くお金を持っていないことが分かっていたので、慰謝料は請求しませんでした。

「子どもの養育費はきちんと支払ってもらっています。
もちろん、将来的には慰謝料も払って欲しいので、そのために完全に離れないでやり取りを続けています。養育費は子ども成人したら終わってしまうので、その後、慰謝料の話をするつもりです。」

 

しかし、離婚の慰謝料は、「不倫の事実と不倫相手を知った時から3年」が時効です(民法724条1号)。

「子どもたちが独立した時に、『あなた、慰謝料払っていないよね』と言おうと思っていますが、とうに時効が来ています。

でも、慰謝料と言われて貴文さんがどうするか、どう思うか試してみたいと思っています。今のところ彼から慰謝料の話は出ていませんが、私は忘れたわけではありません。」

 

そんなことは露知らず、貴文さんは、子どもとの面会の時に葵さんに会うこともあります。

「一緒に食事をすることもあるのですが、彼はいまだに『復縁したい』と言います。
家族に戻りたいとか、子どもも可愛いしとか言いますけど、のらりくらり交わしています。戻る気は全くありません。本当は“子どもにも触るな!”と思います。

仕事を頑張っているとアピールするような自撮りの写真を私に送ってくることもありますが、『うっ』となります。復縁どころか心はすっかり離れていますね。」

 

 

一生一人でいたい

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現在、葵さんは、一人の時間が楽しくて仕方ないと言います。

「特定の男性とデートもしますが、一人の時間を邪魔されたくありません。ZOOMで色んな人と話をすることがあるのですが、相手が男性の場合、彼にどこの誰でどんな関係かを説明しないといけません。やきもちを妬かれるのも面倒だし、絶対に入籍したくありません。もう結婚はこりごりです。」

 

離婚した時、葵さんのお母さんは泣いて悲しんでいました。
でも、「葵が幸せになるならそれでいい」と応援してくれました。もうそんなお母さんも亡くなりました。

「母には本当に悲しい思いをさせて申し訳なく思っています。
亡くなったことは寂しいけれど、親の介護もありませんし、本当に自由です。
引っ越しもしたいし、子どもと一緒にこれからどうするか考えていきます。」

 

 

葵さんは、「何があっても子どもを守る」と強く思っていますが、プライドは全て捨てたと言います。

 

「この地域の人は大きな家に住んだり、いい車に乗ったりして見栄を張ります。でも、うちは車も古いし、アパート暮らしだし、そんなことはどうでもいいんです。

離婚してから積立NISAや投資もしています。実際に利益が出るので、それが自信に繋がっています。たいしたことができるわけではありませんが、日々できることを少しずつしています。

人から喜んでもらえることも嬉しいし、こんな生活、離婚していなければできませんでした。今は、目一杯毎日を楽しんでいます。

もしかしたらあの時、全て忘れて夫婦関係を再構築していたら、と考えることもあります。主婦業と子育てに追われる生活も楽しかったのかもしれません。
でも、ここまで来た以上、自分で選んだ方を正解にしないといけません。」

 

そう答える葵さんの表情は自信に満ちていました。

 

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