「母親ではない私だから…」焦らず、見守り、理解しながら。「3世代ステップファミリー」の心地よいカタチを探し続ける【体験談】
母になろうとしない。程よい距離感を大切にしたステップファミリーとの関係構築
ひろみさんが夫となるAさんとの結婚を決めたのは、婚活開始からちょうど1年を迎えた頃。Aさんと出会ってからは3ヶ月というスピードでした。スムーズに事が進んだのは、互いに婚活中の熟年カップルだったという点も大きいですが、それに加えて家族からの祝福があってこそだったといいます。
「結婚を決めた当時、彼は離婚して3年。義母にしてみれば“まだ3年”という感覚だったのでしょう、『少し早すぎるのでは?』と言われました。けれども、お互いにいい大人ですからね。きちんと思いを伝えることで理解してもらえました。
かたや私の両親も、一度は出来上がった家族の中に結婚歴のない私が飛び込むことを心配はしていましたが、むしろ私に支えてくれる存在ができたことの喜びのほうが勝って祝福してくれました」。
Aさんの3人の息子さんからも、大きな反対はなかったのだそう。
「息子たちは全員独立した大人でしたし、そのうち2人は既に結婚もしていました。
ステップファミリーといってもそれぞれに家庭があって同居するわけでもなく、適度な距離感と年齢でしたからね。何より、自分の父親が一人で老後を過ごしている心配のほうが大きかったようで、パートナーを迎えることを歓迎してくれました。
長年連れ添ってきた彼の家族がいて、そして私には彼がいて。
だから、彼に任せておけば悪いようにはならないだろう、というのが私の基本スタンス。あまり大きな心配はありませんでした」
と、謙虚さと穏やかさを胸に新生活をスタートしたというひろみさん。
「二人の間にやってくるハードルは、巡り会えた信頼できる相手と一つずつ乗り越えていけばいい」――婚活中に胸に抱いた自らの考え方を体現するかのように、ひろみさんは、息子3人とそのお嫁さん、さらには義母に孫からなる大きなステップファミリーの一員となりました。
同時に、Aさんの元の奥様とのお付き合いも――。
「私と夫が結婚して間もなく、いくつかの家族行事がありました。孫のお宮参りには元の奥様と私が一緒に出席したものの、息子の結婚式には私は遠慮して元の奥様のみが参列しました。それはまったく気になりませんでしたね。だって、息子たちにとって唯一の大切な母親ですから。私が前に出る必要はないんです。
息子たちのことは、人と人として仲良くしながら見守ればいいかな、と思っていました」。
一方で、元奥様との関係には少々葛藤もあったのだとか。
「今の住まいは広いので、息子たち一家が揃って泊まりに来ることも多かったんです。時には、元の奥さんも一緒にね。
同じ空間にいれば、元奥さんからの夫の評価が私の耳にも入ってきます。お別れした元妻から見た夫は、必ずしもプラス評価ではない。当然ですよね。でも、これから家族としてやっていこうという立場の私にしてみれば、複雑な思いを抱いてしまうこともありました」。
それでも最初は「子どものためにも、元の奥様ともっと仲良くしたほうがいいのでは」と考えていたというひろみさん。ところが、徐々に思いに変化が生まれてきたといいます。
「夫のネガティブな話を耳にする私は、幸せではない。だったら、変に『子どものため』と自分を犠牲にせず、ほどよい距離でお付き合いしていけばいいのかな、と思えるようになりました。私はもともと人と距離を詰めるのが苦手で、それは悩みの種でもあったのですが、このときだけは別。自然に心地よい距離感をキープできているのは、自分の資質のおかげです」と笑います。
周囲との関係は「現実」を受け入れる。夫婦の関係は妥協なく話し合う
そんな程よい距離の取り方は、他の家族に対しても発揮されたようで――。
「基本的に、私たちにとって最も大切なのは、私たち夫婦が仲良く過ごしていること。
だからこそ、私たち二人以外の外の世界には口出ししない、というのが一貫したルールです。子どもたちがしたいことは全力で応援しますが、人生の先輩ぶってアドバイスや意見はしません。だって、私たちは彼らより30年も考え方が古いんですから」とひろみさん。
「息子たちは父親思いで、頻繁に自宅に寄ってくれますが、そういうときも私がその場に無理に入っていくことはありません。
一方で、元奥様と息子たちもよく会っているようですが、それも私がつべこべ言うことではない。
息子たちとの距離を詰めようとしたり、お母さん的ポジションを目指したりすることなく、夫と息子たちの様子を一歩引いたところから見守るのが基本的なスタンスですね」。
さらに2年前に亡くなった義母との関係構築についても。こんな風に振り返ります。
「義理の母の介護では私も泊まり込んでお手伝いしたことも多かったのですが、いざ看取りを迎えたときには、夫の姉と元の奥様が介護の中心でした。元の奥様は息子たちを育てる時期に、義母を頼っていたことも多かったと聞いているし、何より義母と過ごしてきた時間の長さが私とは圧倒的に違う。関係の深さの差を感じるようで、辛かった瞬間もありました。
それでも、義母との関係は私なりに丁寧に構築できていたとも思います。
もちろん、嫁と姑ですから、巷によくあるような悩みや揉め事はありました。でも、私たち以上に年を重ねた義母ですから、在り方や考え方をこちらに合わせてもらうのは非現実的ですよね。だから、義母のスタイルは受け入れて、気持ちの折り合いがつかない時は夫に聞いてもらう――そんな風にバランスをとりながら関係を積み上げていきました」。
それぞれの家庭の環境や文化を受け入れ、自分好みに無理に変えようとしない。現実を受け入れ、それを前提に自分たち夫婦の在り方を考えるのがひろみさん夫婦のひとつのカタチだったようです。
ところが、「夫との関係構築となると話は別!」とひろみさんはいいます。
「夫婦の間の違和感は妥協なく話し合い、結果として互いに変化していますね。
たとえば、私は亭主関白な両親の関係に疑問も抱いていたし、男女がフラットな仕事場で過ごしてきたから、夫とも対等な関係で過ごしたかった。けれど、夫は食事中に何かが必要になると、母親や奥さんに持ってきてもらうのが普通だったようなんです。最初は男尊女卑!?と思ったのですが、よくよく聞いてみると、実は『女がやれ』ということではなく、自分のために心配りをして手間を割いてくれることがうれしい、という意味合いだったんですね。
そういう話し合いを何度も重ねました。長距離ドライブの途中でケンカになって、途中で車を停めて路肩で話し合い、なんてこともしばしば(笑)。でも、『お互い大人なんだから』と物分かりのいいふりをせず、すり合わせを重ねて作用しあっていくこの工程が、夫婦関係においてとても大事だったんだな、と今は思います」。
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