「母親ではない私だから…」焦らず、見守り、理解しながら。「3世代ステップファミリー」の心地よいカタチを探し続ける【体験談】
育児未経験のままおばあちゃんに。その知識と経験を補うためにとった行動とは……
新たな家族との関係構築ではこれまでの経験を活かせたひろみさんでしたが、絶対的な自らの経験不足を実感せざるを得ないシーンがあったといいます。それが、育児。
結婚と同時に3歳の孫のおばあちゃんにもなったひろみさんは、出産・育児は未経験でした。さらに、孫のママ世代であるお嫁さんたちの悩みや感情も想像しきれなかったといいます。その経験不足を補うためにひろみさんは2つの行動をとりました。
「1つめは、学習塾でのアルバイトです。幼児から小中学生まで通う場で学習サポートをしました。泣きながら勉強する子もいれば、遊んでばかりで全然勉強しない子もいますからね。日常の育児に比べたらもちろんほんの一部に過ぎませんが、それでも子どもの実態に触れることができる貴重な機会でした。
そしてもう1つの行動が、30~40代のワーキングマザーが中心をなすオンラインコミュニティへの参加です。お嫁さん世代の頭の中や悩みに触れながら、どう付き合えばいいかのヒントを得られれば、と」。
家族のことを理解したい――すべてはその思いが原動力だったといいます。
「日常生活では、自分とは違う世代と触れ合う機会もなく、入ってくる情報も限られますよね。コミュニティでは、その壁を越えてお嫁さん世代の一生懸命な姿勢に触れられる……それがとてもうれしいんです。ステップファミリーとの人間関係にはもちろんのこと、自分の暮らしや生き方まで豊かになったと感じます」。
自分に足りないところを素直に見つけて、確かな行動で課題を一つずつクリアしていくひろみさん。その行動力の秘訣を聞いてみると――。
「すべては、結婚して、家族を得たことに集約されると思います。
実は昨年から日本語教師を目指して勉強をしていて、つい先日就職が決まりました。以前の私なら『人に教えるだなんておこがましい』と思って、選択肢にすらのぼらなかったはず。ところが結婚して家族ができたことをきっかけに、先ほどお話したような新たな場への扉を開く機会に恵まれました。
すると、『人の上に立つのは向いていないけれど、後ろや横から応援したり伴走したりするのは好きだ』という自己理解まで深まったんです。
家族が与えてくれるきっかけが、私の興味と行動力を生み出してくれています」。
互いに無理をしない。サステナブルな関係づくりのためにできること
50代での結婚とステップファミリーの存在によって、世界を広げ、豊かな日々を過ごしているひろみさん。時を経て、家族との関係はますます良好になっているようです。
「夫は情熱的でストレートな人ですから、私へのものの言い方が強くなる時も。そんなとき、長男が私の味方になってくれます。
また、お嫁さんたちには仕事がありますから、体調を崩した孫の預け先に困ったときには私が呼ばれて、泊まりがけで育児のサポートをすることも。
自然に頼られたり、支えてもらったり……そんな瞬間に出くわすたびに、ステップファミリーがいてよかったなぁ、と思うんです」
相手を尊重しながら、時間を味方にじんわりとステップファミリーとの関係をあたためてきたひろみさん。
前にしゃしゃり出てアピールしなくても、その気持ちがきちんと伝わっていたことがわかる日常は、家族のカタチに迷う人に対しての『焦らなくても大丈夫』というメッセージにも思えます。
「結婚当初は、息子たち家族がみんな揃って自宅に泊まりにくることがうれしい一方で、『お料理やおもてなしを、がんばらなくちゃ』という力みもありました。でもね、最近は近くの大きなお宿に頼っているんです。昼間は自宅で、みんなでにぎやかに過ごして、夜になったらお宿に移動。食事や布団の上げ下ろしは私以外の方にお任せするというハイブリッド型にしたら、ものすごく楽になりました」。
結婚10年目を迎える今も貪欲に、互いに楽でいられる方法をブラッシュアップし続ける様子がうかがえます。
「そういう情報や選択肢は、オンラインサロンの若い世代の仲間から教えてもらうことが多いんです。自分だけの価値観に頼ると『自分の手を動かさなかったら手抜きに思われるんじゃないか』なんてことも、嫁世代にしてみると実はむしろ合理的だと感じていたりするものなんですよね。だから、今はお料理も全自動調理鍋に頼ることも多いんですよ。
時代にフィットしたアイデアやインスピレーションを取り入れるのは、良好な関係維持の大きなポイントかもしれません」。
できないことが増えていく老後も、自分に責任を持ち続けるために
50代で結婚したひろみさんも、今は60代。今後迎える老いに対しても、ステップファミリーへの思いやりを忘れません。
「いよいよ私たちも『どう歳をとって、どう暮らしていくか』を考える必要が出てきました。もちろん、これからできないことが増えていくけれど、それでもいつでも楽しみながら生きていきたいと思っています。
大前提は『何かあったら私たちは施設に入る』というスタンス。これは以前から息子たちに伝えてあるんです。
その上で、できるだけ長く自分の身の回りのことができるよう、惜しみなく環境を整えるようにしています。自宅はもともとバリアフリーの一戸建てを中古で購入しましたが、さらに床暖房を導入したり手すりを追加したり……。
でもね、だからといって自宅に執着しているわけでもないんです。街自体が過疎化すれば、都心のマンションに移ることもあるかもしれない。あらゆる変化や家族の考え方に対応できるよう、最大限選択肢を広げておくこと。それが自立した老いであり、家族の生活を守ることでもあると思っています」。
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