義母の家で付着する「白い粉」の謎。「まさかお風呂入ってないんじゃない?ちょっと臭う」。入浴拒否は認知症の初期症状かも
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
【アラフィフライターの介護体験記】#3
▶前回の記事を読む▶▶『義母宅の冷蔵庫から漂う「異臭」の正体。「そうだったの!?」認知症の初期に感じた「5つの違和感」』
新生活は好調なスタート! 初のマンション1人暮らしを楽しむ義母
前回は、田舎で1人暮らしをしている義母の家を訪ねた際、リアルに感じた「認知症」の初期症状についてお話ししました。その後「このまま離れて暮らすのは心配だよね」となり、早急に今後の住まいについて考えることになったのですが、義母を説得する段階でかなり難航することに……。こちらは、また別の機会にお伝えするとして~。
今回は、我が家の近所へ2年前に越してきた義母。その当時から、今もなお進行中の“ある悩み”についてお話しします。
新しい住まいは、築10年の「高齢者専用住宅」です。近くには大きなスーパーやコンビニ、ドラッグストアがあり、買い物はとても便利。共用廊下のほか、トイレや浴室もバリアフリー設計で、足腰が弱ってきたお義母さんも気に入った様子でした。部屋の中には「通報装置」が設置されており、24時間コールセンターにつながる仕様となっています。
引っ越してすぐに要介護認定を受けたところ、結果は「要介護1」(立ち上がりや歩行が不安定で、日常生活において部分的に介護が必要な状態)。認知症は、「軽度~中等度」(お義母さんの場合は、着替えやトイレ、洗顔など身の回りのことは一人でもできますが、物忘れや集中力の低下があり、料理や細かい計算などが難しいという状況)でした。
そこで夫と私がサポートするほか、訪問介護での「生活援助」(調理、洗濯、掃除)も取り入れることとし、「初のマンション1人暮らし」は比較的好調なスタートを切ります。
「お隣さんが親切で何でも教えてくれるのよ~。今度、一緒に買い物に行くの」とうれしそうに話す姿を目にし、「もしや認知症の症状、少し軽くなったのでは?」という気にさえなっていました。
義母の家で付着する「白い粉」の謎
そんなある日、義母宅から帰ってきた夫が、玄関先で何やらズボンをパタパタしています。
私:「どうしたの?」
夫:「なんか、白い粉みたいなのがいっぱい付いてるんだよね」
私:「ホントだ。ズボンが黒いから目立つね。洗うから貸して!」
よく見ると、細かい白い粉状のモノがズボンにたくさん付いています。しかし、その日は特に気に留めることもなく……。数日後、玄関先に再びズボンをパタパタする夫がいました。(デジャブ!!)
さらに数日後、私の服にも「白い粉」が付着したことで、ようやくその“出どころ”が判明します。
夫&私:「お義母さんの家だ!」
翌日、夫と2人で義母宅を訪問し、改めてカーペットに手を触れてみると……。確かにあります、「白い粉」! そして、さり気なくお義母さんに近づき頭皮を見て納得。「白い粉」の正体は、髪の毛から落ちた“フケ”だったのです。
近づいたことにより「あっ、チョット臭うかも……」と、体臭も感じることになりました。当時はコロナ禍で、ちょうど「ソーシャルディスタンス」が定着し始めた頃。部屋の中でもマスクをし、一定の距離を保っていたことで気付けなかったのですが、さすがにこの日は「お義母さんがしばらくお風呂に入っていないこと」を確信せざるを得ませんでした。
(綺麗好きでお風呂好きなのに、お風呂に入ってない? なんで?)
私が理解に苦しんでいると、「もしかして、最近お風呂に入ってないんじゃない? 臭うんだよね」と直球で勝負する夫(汗)。
「なに言ってるの! 入ってるわよ!」といらつきながら答えるお義母さん。しかし、(前回の記事でもお話ししましたが)お義母さんは認知症の初期症状で嗅覚障害があり、臭いがほとんど分からなくなっています。夫も次の瞬間それを思い出したのか、急に申し訳なさそうに「今からお風呂沸かすから、ゆっくり入りなよ……」と浴室へ向かいました。
「1ミリも減っていないシャンプー」が語る事実
夫が浴槽を洗っている間も、お義母さんのイライラが収まる様子はありません。確かに実の息子から(嫁もいる前で)「臭い!」などと言われたら、相当傷つくハズ。少しするとキッチンへ行き、ものすごい勢いで排水溝の掃除を始めていました。(めちゃ、怒ってる!)
その間、私もカーペットや床の「白い粉」を掃除しながら、それぞれに時間を過ごしていましたが……。結局、「お風呂はあとで入るから大丈夫よ」と、半ば追い返される形で家を出ることになりました。
私:「あんなにお風呂好きだったのに、どうしたんだろう。体調でも悪いのかな?」
夫:「しっかりご飯も食べてるようだし、血圧手帳も見たけど正常だったよ」
私:「確かに、顔色は良さそうだった。とにかく、何とかしないとねぇ……」
翌日、夕飯のおかずを届けるためにお義母さんを訪ねると、「あら、いらっしゃい~!」とご機嫌な様子。ひとまず安堵し、お手洗いに行きながら浴室をそっと覗いてみると……。
「お湯が張ったまま! 昨日と景色が同じなんですけど……」
洗い桶や椅子、ボディタオルの乱れは一切なく、お義母さんがお風呂に入っていないことは、一目瞭然でした。
私:「お、お義母さ~ん、昨夜、あれからお風呂に入らなかったんですね~?」
義母:「ううん、入ったわよ」(キリッ)
昨日のイライラモードが復活しそうな気配がしたので、それ以上は触れず、あとは夫に任せようと早めに帰路に就きました。
それから数日後、さすがに浴槽のお湯はなくなっていましたが、新しく購入したボディソープやシャンプーが1ミリも減る様子はなく……。困り果てた私は、介護ヘルパーの資格を持つ叔母に相談することにしました。
叔母曰く、どうやらお義母さんが入浴を拒否するのは、認知症の症状が影響しているようなのです。しかしその理由は個人によって異なるため、憶測で判断したり、無理やり入らせようとしたりするのは逆効果とのこと。まずは「なぜお風呂に入らないのか?」の理由を確かめる必要がある、でも焦りは禁物! というアドバイスでした。
▶▶次のページ 「認知症」の影響か? 義母がお風呂に入らなかった3つの理由。ゆっくりと話を聞き、数日後ようやくたどりついたその答えとは?
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