【離婚とお金】夫婦合算の年収が750万円の場合、「養育費」はいくらもらえる?「住宅ローン」の残金はどうなる⁉【行政書士が解説】
養育費の金額を決めてからの交渉に
そこで筆者は「まず住宅ローンより先に養育費を決めましょう」と提案。未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、どちらが子どもを引き取るのか……親権の所在を決めなければなりません(民法819条)。
真央さんは「夫は何も言っていないのですが、娘や息子のことは私が全部やっているし、親権を主張することはないと思います」と言い切ります。
仮に真央さんが子どもの親権を持つとして、非親権者は親権者に対して養育費を払わなければなりません(民法766条)。
具体的な金額ですが、家庭裁判所が公表している養育費算定表にお互いの年収を当てはめて計算します。今回の場合、夫の年収は500万円、妻は250万円なので養育費の相場は子2人で毎月7万円です。
筆者は「これは旦那さんがどこに住んでいても基本的には変わりませんよ」とアドバイス。
このことを踏まえた上で真央さんは再度、夫に投げかけたのです。
「理央(長女)と勇也(長男)の養育費も払ってもらわないと! ローンと合わせると毎月14万円を超えるけれど、本当に大丈夫なの?」と。
夫の手取りは毎月24万円。マンションの維持費(固定資産税、修繕積立金、駐車場代)で毎月3万円、マイカーローンで毎月3万円を差し引くと夫の生活費は毎月4万円しか残りません。これで食費、水道光熱費、携帯代などを捻出するのは不可能です。
もし、夫がマンションを退去し、実家に戻ったらどうでしょうか? 毎月7万円の住宅ローンの分だけ負担が軽くなります。両親に多少の生活費を入れたとしても生活は成り立つでしょう。
そこで真央さんは「離婚したら住宅ローンだけ返済してくれれば結構です。養育費を払ってくれなくても」と提案したのです。
今回の場合、養育費の相場と住宅ローンの返済額はほぼ同じです。真央さんの手取りは毎月18万円です。真央さんの方で維持費を負担しても、まだ15万円も残るので、二人の子どもを育てていくことは可能でしょう。真央さんは養育費の代わりとして住宅ローンを返済して欲しいと頼んだのです。
離婚するのは夫婦の都合
とはいえ、このマンションに並々ならぬ愛着を持つ夫です。「(マンションの)権利を持っているのは僕だ!」「リフォームの計画を立てたのは誰だと思っているんだ!」「いっそのこと、離婚しなけりゃいいだろ?!」と3ヵ月間にわたってダダをこね続けたのですが、最後に真央さんは「理央と勇也のことを第一に考えてください」と頭を下げたのです。
もし、真央さんがマンションから出て行った場合、同じ学区内に賃貸が見つかる保証はありません。二人は小学校、中学校を転校しなければなりません。5年間、住み慣れた家、使い慣れた部屋、通い慣れた道を失うのです。
離婚は両親の都合です。子どもに何の影響も与えずに別れるのは無理ですが、その影響を最小限にとどめなければならないのが親の努めです。「子どものため」という言葉が心に響いたのか。
夫はここに至って「そこまで言うなら。でも9年後には出て行けよ!」と涙声で話し、真央さんの提案を受け入れ、マンションを立ち去ることを約束したのです。
こうして長男が成人するまでの9年間、真央さんはマンションに住み続けることが保証されたのです。不動産の所有者は夫のままなので「妻子が住むこと」を一筆、交わしました。また夫は養育費を払わない代わりに住宅ローンを返済するので、ローンの債務者は夫のままです。
ここまでは真央さんが離婚するにあたり、赤字で手放せないマンションを子どものために残すまでの奮闘を見てきました。
築年数が経過している、駅から離れている、頭金を入れない、そして35年の住宅ローンを組んでいる。このような物件は高い確率で不良債権になり、好きなときに売却できないので、本来はそのことを承知で購入しなければなりません。
とはいえ何も知らずに購入してしまったら仕方がありません。今回のように住宅ローンの月額(76,000円)を低く抑えたので、とりあえず、現状維持(不動産の所有権や住宅ローンの債務者を変更せず)をする選択肢がありました。せっかくのマイホームが夫婦にとって手かせ、足かせになるのは残念ですが、売れないなら売れないなりに何とかしなければなりません。
【編集部より】
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