寒さを感じ始める「寒露」の頃、意外な「お花」があなたの健康を維持してくれます【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
私は研究開発部に属し、さまざまな商品に携わってきました。その過程で、たとえば漢方原料が土地土地で少しずつ性質を変えること、四季のうちでも変わることを知り、やがて人間の心身そのものが気候風土に大きく影響を受けていることに深い興味を持つようになりました。中医学を学び、国際薬膳調理師の資格も獲得、いまもまた新たな活動を続けています。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
白く輝いていた露が、冷たさを帯び始める。寒露の頃
2024年は10月8日から22日までが寒露でした。秋が深まり、白く輝いていた露がさらに冷たく輝くようになるころです。朝夕の露が一層冷たくなることをあらわして、暦も“白露→寒露”に。野山は秋色に染まり、穏やかに深みを増していきます。空気が澄んで落ち着いてくるので過ごしやすく感じ始めます。「自分の身体と向き合う」のにピッタリな時期ですね。
私が勤務する熊本の「再春館ヒルトップ」は夏までの緑一面から、少しずつ色づき始めました。オレンジ、黄色など暖色が見えていますよね。こうして1年を通じて景色を見つめていると、日々少しずつ季節は移ろっているのだなということを実感します。ヒルトップはこれから美しい紅葉の時期を迎えますのでお楽しみに。
さて、寒露の期間は10月の中旬。長い残暑もようやく終わりにさしかかり、冷たい空気を感じられるようになりました。この「冷たさと乾燥を感じる空気」の季節のことを、中医学では“涼燥(りょうそう)”と呼んでいます。まさに、涼しい秋。秋本番ですね。
夏の暑くて湿度のある空気から、まずは湿度が少し低下して「暑い、でも乾燥し始めた」の秋で“温燥(おんそう)”を紹介しましたが、いよいよ気温も下がってきて「少し冷たい、そして空気も乾燥している」の秋になったので“涼燥”です。つい先日までの夏日に比べると過ごしやすく感じるのですが、気温の低下と空気の乾燥を同時に感じる季節の始まりです。身体を冷やさないように気をつけてくださいね。
いよいよ“秋らしさ”を感じられる涼燥になってきたので、秋に気遣いたい肺の機能をおさらいしますね。肺は呼吸を担当して、宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう)を担当します。肺は温かく潤った状態を好みます。涼燥の時期は気温の低下と乾燥がそろっているので、肺の機能にとっては苦手な季節です。大腸・皮膚・毛穴・体毛も肺に関連する機能なので、涼燥には同じくケアしたいですね。
中国の思想に「天人合一」という考え方があります。私たちは“自然の一員”なので、自然で起きていることは身体の中でも起きています、という考え方です。残暑の暑さと比べると、涼燥の空気のヒンヤリ感は心地よく感じるのですが、気づかないうちに身体の中でもヒンヤリが始まっている、そう考えることができます。自然の移り変わりに気づき、同じことが鏡のように自分の身体の中でも起きていると感じることで、冬を迎える準備ができますね。
涼燥の時期に注目したいのは「この時期ならではの花」
涼燥の季節は“身体にうれしい花”の季節でもあるので、今回は菊の花、そばの花、キンモクセイの花を紹介させていただきます。
TOP画像は、菊の花を湯通しして冷凍の下ごしらえをしている写真です。山形県や新潟県などでは菊の花を食べる文化があるようで、ビニール袋いっぱいに詰めた菊の花が1袋200円程度で売られていたのを見た時は驚きました。今年は10月11日が旧暦9月9日でした。中国の陰陽思想では「奇数は陽の数」と捉えていて、奇数で最大の数である9が2つ重なる9月9日は、パワーがあり過ぎるのでお祓いをすることで長寿を祈る節目の日と考えています。この節目の日を、陽の数字が重なるので「重陽の節句」、または菊の花が咲く時期なので「菊の節句」と呼んでいます。
そばの花は、この時期の阿蘇のあちらこちらで目にする花です。阿蘇は湧水の多い水がきれいな場所です。実りを迎えて新そばが出回るのは12月頃でしょうか。今から楽しみにしています。
10月5日・6日に主婦の友社が開催した「ご自愛市」で、私は薬膳茶セミナーの講師として登壇しました。その席でも菊花とキンモクセイをおすすめしましたが、寒露の時期にもやっぱりこの2つは自分と向き合う時間の伴侶としておすすめです。
菊花は熱を冷ます働きに優れています。菊花は、辛い・甘い・苦い、3つの味を持っていて、ぐつぐつ煮込むと苦みが抽出されて身体の中の熱を冷ます働きをします。一方、お湯を注ぐだけならば辛みが抽出されて、毛穴をゆるやかに開く働きをします。空気が冷えて乾燥する涼燥は毛穴が開きにくくなるので、その毛穴をゆるやかに開いて肌を潤わせる働きをします。
キンモクセイは冷え・気の巡り・食欲不振に働きかけます。キンモクセイも味は辛みに分類されます。身体を温める作用もあるので寒さを散らして、毛穴をゆるやかに開いて皮膚を潤わせる働きをします。このように菊花とキンモクセイは、涼燥の時期の身体表面の乾燥に働きかけます。
菊花、キンモクセイともにお茶の原料とするときは、摘んできた花を、蒸すあるいは熱湯をかけるなどした後、乾燥させてはじめてお茶の原料になります。菊花を湯通しすると、部屋中に菊の香りが満ち溢れます。初夏には梅を漬ける“梅仕事”をしますが、重陽の節句の時期に菊の湯通しをする、これは秋の豊かな風物詩に感じます。
涼しい秋になってきました。肺・大腸・毛穴を全体的にケアして、コンディションの整った“秋を楽しめる身体”で冬に備えましょう。
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