酔って寝ていたら、上司が覆いかぶさってきて…。「信頼していた人に襲われた」事実が私に残した大きな傷は(前編)
結婚後に浮き彫りになったすれ違い
「夫とは、新卒時代から同じ会社に勤めていたとはいえ、別の事業部で働いていたため仕事上の接点はありませんでした。ただ、二人とも遠距離通勤で同じグリーン車を利用していたことで話すようになりました。夫はIT系のクリエイターで、坊主頭に個性的なファッションでしたが、内面は物静かで優しい人でした。関西弁でボソッと面白いことを言うユーモアのセンスが私のツボで、私からランチに誘ったのがきっかけです」
その後、自然な形で交際に発展し、30代前半で第一子を授かり結婚した悦子さん。
「いわゆる“授かり婚”でしたが、元々タイミングさえ合えばいつでも籍を入れるつもりだったので、良いきっかけでした。両家や同僚にも祝福されて、明るい未来が待っていると信じていました」
しかし結婚後、同棲経験がなかった二人の生活リズムの違いが顕著になり、大きな衝突が初めて起こったと言います。
「交際している間は、仕事ができるのに、プライベートでは天然という彼のギャップが好きでした。でも、一緒に住んでみると天然を超えていて、仕事が終わった後は何時間も魂が抜けたようにぼんやりする人だったのです。私は、早起きしてランニングするような健康志向のタイプ。一方で夫は夜型で、規則正しい生活に慣れさせようとすると逆に体調を崩してしまうんです」
つわりで苦しんでいる間も、勇さんの不器用さはケンカの種に。レトルトスープを温めるだけでも失敗する夫に頼ることを諦め、悦子さんは実家で出産することを決意しました。
「夫は、仕事以外の用事は3歩歩くと忘れてしまうので、区の父親教室、水道やガスの点検、マンション自治体の集まりなど、あらゆる用事をドタキャンしてしまって…。普段は私がスケジュール管理をすればいいんですけどつわりで苦しんでいる間はイライラが募り、怒鳴り合いのケンカになってしまいました。こんな環境で体にいいはずがないと、早めに産休をとって逃げるように実家に帰りました」
ワンオペ育児でストレスマックスに
里帰り出産準備中、月に2度は様子を見に来てくれた勇さん。
「性格は優しいんです。ただ、ワーキングメモリのすべてを仕事で消費しているのでプライベートは抜け殻で…。元気な女の子が生まれて一応は仲直りもしたんですけど、お互いの実家が関西地方と中国地方と遠いこともあり、子育て中も慣れるまでは波乱続きでした」
長女出産後は育児休暇を1年取得して、1歳で保育園に入れて仕事復帰をした悦子さん。
「夫は娘をかわいがってはいましたが、不器用さや不注意さが目立つ彼はほぼ戦力外で。わたしは時短勤務とはいえ、仕事をしながらの『ほぼワンオペ育児』となり、過酷な日々でした」
悦子さんが夜泣きで徹夜状態のまま出勤して会議をしている最中に、保育園から電話があり、在宅勤務なのでお迎えを頼んだ夫が「来ない」と呼び出されたことも一度や二度ではありません。
「彼は、集中してしまうと時間を忘れる人なので…さらに悪いことに、娘が2歳になるタイミングで夫が外資系の会社からスカウトを受けて、転職。1年間渡米することになりました。期間限定とはいえ『転職? 単身海外赴任? なんで今なの?』と白目を剥くくらい動揺してしまいました」
育休経験のある男性上司に心酔し…
そんな時、頻繁に相談にのってくれたのが、社内でも珍しく父親として長い産休をとった経験を持つ、10歳年上の上司の藤原さん(仮名)。
「藤原さんは、奥さんが育児ノイローゼで、公的支援も受けてシッターや一時保育なんかも頻繁に使用していたようで経験豊富でした。私の愚痴を聞いて、良いアドバイスをくれるのですっかり頼ってしまって。おすすめシッターも、夜間に預けられる一時保育も、信用できるいい会社を紹介してもらいました」
当初は、「頼りになる上司」として藤原さんを信頼していたという悦子さん。
「藤原さんは夫とは真逆で、山登りやトレイルランが好きで男らしく、仕事もちゃんとこなしますがプライベートもエネルギッシュ。奥さんは体が弱いようですが、藤原さん自身は率先して家事もこなして、PTA会長も経験したというパワフルな人でした」
そんな藤原さんと、うっかり「過ち」を犯してしまった悦子さんは、自己嫌悪とトラウマの沼に沈むことになります。
次のページへ▶▶飲み会で、いつの間にか二人きりに。でも信頼していたからお気楽な気分でいたのだけれど…
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