
心が崩壊していくのを感じ、ついに「逃げる」ことを選択。そのとき夫が送ってきたLINEの内容は
夫婦であっても、相手の意思を無視した行為の強要は許されるものではありません。それは、場合によっては「性的DV」とされることもあります。今回は、そうした苦しみから勇気を振り絞って抜け出したTさんの体験をご紹介します。
前編「『夫婦の営みは妻の務め』と強要し、拒むと暴れる夫。『いつまで我慢すればいいの』無理がたたってやつれ果てた私は」に続く後編です。私の体なのに私のものじゃないと感じた日々
「嫌だ」と言えば、夫は不機嫌になる。
「疲れてる」と言えば、ため息をつかれる。
「もう無理」と言えば、「俺のことが嫌いなのか」と責められる。
「何を言っても無駄でした。拒むたびに夫の機嫌は悪くなり、怒りを抑えた低い声で『夫婦なんだから当然だろ』と脅かされるのです。
夜が近づくにつれ、心臓が強く脈打ち、全身の筋肉がこわばります。でも、それを悟られないように、ただ黙って従うしかなかったのです」
私の体なのに、私のものじゃない……。そう思ったとき、何かが崩れていく音がしたそうです。
「最初のうちは、嫌悪感や恐怖がありました。でも、毎日そんなことが繰り返されるうちに、そんな感情すら麻痺していました。夫の言う通りにして、自分の意思もなく、ただ夫を怒らせないようにすることだけを考えていました。そんな日々のなか、『私はなんのために生きているんだろう』と、思って悲しくなるときもありました」
自分の意思を無視していると、「学習性無力感」 という心理状態に陥ります。
人は、どれだけ抵抗しても状況が変わらない経験を繰り返すと、「何をしても無駄だ」 と思い込むようになります。これは、虐待や支配的な関係の中でよく見られる現象です。
拒否すると怒られる から、従ったほうが楽。逃げたいけど方法がないから、どうしようもない。このような経験を繰り返すうちに、「私は何も変えられない」「抵抗しても無意味だ」 という思考が染みつき、感情が麻痺していきます。やがて、「生きる目的」さえ見失い、自分の存在価値を感じられなくなる」 のです。
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