
9人に1人が「乳がん」になる日本人女性。まだ聞きなれない「ブレスト・アウェアネス」って知っている?【医師監修】
乳がんというと、乳がん検診だけ受けておけば安心という方もいるでしょう。しかし、外科専門医、乳腺専門医の寺田満雄先生は、乳がん検診に加えてブレスト・アウェアネスについても知っておいてほしいと言います。
ブレスト・アウェアネスって何?
乳がん検診のマンモグラフィや超音波検査。乳がんの早期発見には有効な手段ですが、限界もあります。こうした検査は、乳がんが疑わしい部分を探し出す検査であって、残念ながら、「乳がんがないことを証明する」検査ではありません。検診で異常が見つからなかった場合、乳がんがない可能性は高いと言えます。しかし、画像検査上、正常と区別がつきにくいのです。
また、中間期乳がんといって、検診と検診の間に大きくなって見つかるタイプの乳がんもあります。「前回の検査での見逃しでは?」と思われるかもしれません。確かにそのような場合もありますが、この中間期乳がんは検診で見つかるがんよりも進行が早く、単なる見逃しとは言えない特徴を持っていて、気をつける必要があります。
検診と検診の間にがんが見つかる可能性があることは、すべてのがん検診に共通していることです。
乳がんの場合、検診が大切なことは間違いないのですが、他のがんとは違う特徴があります。乳房は、自分で触れてチェックをすることができる数少ない臓器だからです。自分でがんを発見することは難しくても、「ブレスト・アウェアネス」を心がけることで、乳房の変化に気づいた時に医療機関を受診することができます。検診の限界を補う、それが「ブレスト・アウェアネス」の考え方です。つまり、自分の乳房の状態を普段から意識して生活する習慣のことを指します。乳がんの早期発見・早期治療につながる、女性にとって大切な習慣づけといえます。
ブレスト・アウェアネス、4つの方法
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ブレスト・アウェアネスは、4つのアクションから成り立っています。一つ一つがとても大切です。ぜひ習慣にしましょう。
1.定期的にセルフチェックする
普段の自分の乳房の状態を知っておくことが大切です。自分の乳房に触れ、左右の違いやしこりの有無を意識しましょう。
セルフチェックというと、「しこりを探す」というイメージを持っている方も多いでしょう。実際、乳腺は表面がゴツゴツしているので、どれもしこりのように感じてしまいます。それよりも、「先月の自分と違いはないか」どうか確認しましょう。
「いつもの自分の状態」が分かっていると、変化が起こった時に気づきやすいです。そのために定期的なセルフチェックを行います。
初めのうちは、分かりにくいかもしれませんが、続けていくことが大切です。セルフチェックは、自分が続けやすい時に行います。月に一度、生理が終わった後の時期にするのがおすすめです。閉経後の方は、毎月決まった日にチェックする習慣をつけるといいでしょう。
2.乳房の変化を知る
乳房のどのような変化を知ることも大切です。注意するポイントは以下の通りです。
乳房
・左右サイズの差や形の変化
・突出したしこり、乳房内・腋の下のしこり
・皮膚のくぼみやひきつれ
・むくみやか赤み
乳頭
・変形、へこみ、ひきつれ
・赤み、腫れ、ただれ
・分泌物
生理周期、妊娠、授乳中など、乳房がどのように変化していくのか、正常な乳房の状態を知っておくことも大切です。何か変化に気がついたら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
3.検診の機会を待つことなく医療機関を受診する
あまり検診と診察の違いを意識することはないかもしれませんが、何かいつもとは違うと気づいたら、検診の機会を待たずに医療機関を受診することが大事です。
検診はやることが決まっていて、それ以上のことは症状があってもなくてもしません。しかし、診察では、状況に応じて臨機応変に対応します。それが検診と診察の違いです。
何もない時に受けるのは検診、何か変化に気づいた時に医療機関を受診するのが診察です。ぜひ覚えておいてください。
4.乳がん検診を受ける
乳がん検診を受けましょう。日本の検診受診率は現在、40%くらいです。これは先進諸国の中でも低い方です。
ブレスト・アウェアネスを続けるために
ブレスト・アウェアネスを習慣化するためにはどうしたらいいでしょうか。以下の4つのアクションを実行してみてください。あとは、ご自身が続けやすい方法を探してみてください。
スマホのカレンダーやアプリを活用する。
毎月セルフチェックの日をスマホのカレンダーに登録し、リマインダーを設定します。
お風呂や着替えの際にチェック
入浴時や着替えの際に、鏡の前で乳房の形を確認する習慣をつけます。
家族やパートナーと情報を共有
ブレスト・アウェアネスの重要性を周囲の人と共有し、お互いに意識を高めます。
医師に相談しながら進める
乳房に違和感がある場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。
乳がんは自分でも見つけられることがあるがんです。自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、意識して生活をしましょう。これを機に、ぜひブレスト・アウェアネスを生活習慣にしてみてください。
>>>次のページでは、ご存じの方も多い「ピンクリボン」と乳がんのつながりについて寺田先生に伺います。
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