
「学校に行きたくない子」をどこまで頑張らせるか?親子の話し合いで、大切にすべきこととは【不登校指導の専門家に聞きました】
この「不登校の答え合わせ」は、登校に困難を抱えた経験がある方に、今だから語れる思いをお聞きするインタビューシリーズ。いまや40万人にものぼるともいわれる不登校児童生徒当事者や、それを見守る大人たちにとってのヒントを探ります。
現在お届けしているのは、「番外編」。入学・進級を迎えた4月~GW明けにかけて急増する「登校渋り」や「不登校」への対応法を専門家にお聞きしています。解説は、不登校・発達障害の児童生徒を中心とした個別学習指導に20年以上携わる、公認心理師の植木希恵さんです。
一生懸命で頑張り屋な親ほど陥りやすい「初期対応の誤解」とは?――今回は、「甘えさせると子どもがダメになる?」という誤解についてアドバイスをいただきます。
【不登校の答え合わせ|親子の話し合い編】
「甘えられる親子関係」はむしろ大切。「甘やかし」と切り離して考えて。
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子どもの「行きたくない」を受け止めようとする親御さんから、「これは甘やかし?逃げ癖がついたり、楽な方へと流れてしまうのでは?」と、しばしば相談されます。
この悩みにお答えするにあたって、最初に確認しておきたいのは、子どもを「甘えさせる」のと「甘やかす」のは違うという点です。
大前提として、子どもを甘えさせても、概ね問題はありません。
登校渋りや不登校への対応に限らず、子育てにおいて「親子の信頼関係構築」が重要なのは、言わずもがなですよね。子どもが「これ、手伝って」とか、「ここを教えてほしい」などと言ってきたときに、ニーズを汲み取って応答するのは、その一環です。本人が困っているのに「自分のことは自分でやりなさい!」と突き放すのはお門違いですし、「これ以上、私の仕事を増やさないで!」 と答えようものなら、その他の場面でも親に頼りにくくなるでしょう。「責められるくらいなら接触を断とう」という発想が生まれ、学校に戻るのも社会につながるのも難しくなる可能性があると、私は考えます。
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「気づいたら隣に寄ってくる」「いつもはできることを急にやらなくなる」「一人でできることをお願いされる」――そんな様子が見えたら「これは甘えたいんだな」とニーズをキャッチして、ちょっと手を貸してあげればいいのです。その一瞬で、我が子はダメにならないから大丈夫。むしろ「思いを受け止めてくれる、甘えられる相手がいる」という安心感が、いざというときに踏ん張る力になります。
一方、「甘やかす」とは、「好き放題にさせる」、あるいは「子どもの責任を奪う」状態です。
- 「あそこへ行きたい」「これが欲しい」という要求に対して、何でも「はい」「いいよ」と答える
- 本人から相談も頼み事もされていないのに、「これはどう?」「こうしてみたら?」と先回りしたり、「親の言うとおりにしていたら大丈夫よ」と親が責任を引き受けたりする
親が勝手に責任を横取りしたり、親のキャパシティ以上のことまで引き受ければ、子どもが責任がとれる範囲を超えてしてしまいます。これは「思いを受け止める」とは全く別物です。
裏を返すと、最終的に本人の言い分を通すことになっても、その子が「自分の言動や選択に責任を取る状態」になっているのであれば、それは「甘やかし」ではないのです。
「子どもの訴えをどこまで受け入れ、どこまで頑張らせるか?」
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必要なのは親の判断ではなく、子どもが人生に責任を取るための情報提供
その上で、「子どもをどこまでがんばらせるか問題」について考えていきましょう。
ある日、「2時間目の算数は休みたいけれど、午後の図工には出席できそう」と我が子に相談されたとします。あなたならどう判断しますか?
――私だったら、親が決めないようにします。というのも、大人がよく考えて判断したとしても、親自らのコンディションや状況によって基準がブレないとは言い切れないから。前回は「いいよ」と言ったのに、次は「ダメ」と言えば、子どもの混乱や疑心暗鬼につながります。そして大人が判断しない理由がもう一つ。「自分の人生の責任は、その本人が取るべき」だからです。
では、具体的にどう対応するかというと、「本人が判断できる選択肢を提供し、決めさせる」ようにします。
たとえば、「算数の授業に・最初から最後まで・全力で参加」以外の方法はないか?あらゆる可能性を考えてみます。
・教室に出席して、発言などはせず「見ているだけ」の参加はどうか?
・別教室で、教科書を読んだり、ドリルに取り組んだりするのはどうか?
このように、考え得る選択肢を整理・提案しながら、「別の方法でなら頑張れそうなのか?どのくらいなら頑張れそうなのか?」を本人と確認します。
「お母さんがお手伝いできることはある?」と聞いてみてもいいでしょう。本人から、「不安な気持ちや、“今日はこんな形で参加したい”という考えを先生に説明しておいてほしい」と要望があれば、それをサポートしてあげます(これは本人からの要望なので、親の勝手な先回り対応ではない=甘やかしではありませんね!)。

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学校に行かないことで「できなくなること」を子ども自身にも伝え、補填を
これらのやりとりを経て、それでも本人が「休む」と判断するのであれば、「教育機会を損失している事実」を、親子の共通認識にしておくと良いでしょう。「今日この時間を休むと、○○の勉強(経験)ができないけれど、それはどうやって埋めようか」と話し合ってみます。もちろん、学校で学ぶ分を家でカバーする際には、お金や手間がかかりがちです。教材を用意してあげるにも、廉価版や無料版など、学校の資源に劣る可能性があるかもしれません。そういった「親が協力できる範囲(経済面や時間的負荷など)」も含めて、子どもに伝えます。子どもが「それでも行かない」「別の○○の方法でやる/今は別の方法でもやらない」と言うなら、それは自分の選択の責任を引き受けての判断です。相手がたとえ小学校低学年の子でも、その意志は尊重すべきものだと考えます。
ちなみに、私が主宰する個別指導の生徒さんでは、こうして整理するうちに「休むとその分、家でやることが増えるからイヤ。 だから頑張って学校に行く」と選択する子がいました。「学ぶチャンス」と「行きたくない・行けない理由」を自分で天秤にかけた結果です。
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